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30の魔法使い  作者: 圧縮
本編
48/83

英傑

英傑


「それにしても大きいですね……」

 リーアがジャイアントベアの近くでそうつぶやく。これから大型魔獣との遭遇も増える地域へと向かう事になる。大抵の冒険初心者はこのジャイアントベアか、ジャイアントボア辺りで大型魔獣との初邂逅を経験する事が多い。そこで大きさに慣れるのだ。だが、大きくなればなるほど手強くなる魔獣も居るので、この魔獣たちの役割とすれば、大きい相手に出会ったとしても慌てないという経験を積むためだろう。

「でっかいけど弱いのがここにいるのはホント助かるよな」

 本当は決して弱くはない。ワーウルフ4匹相手にしていても余裕で勝ってしまう程の強さは持ち合わせている。だが、体が大きすぎて、更には体型だけに頼ってきた戦闘方法の為、しっかりと戦闘訓練を培ってきた冒険者にとっては、萎縮しないかぎり強い敵とは認識されない。

 今回はリーアが吹き飛ばされてしまったが、次回はもう問題無いだろう。

「リーア、ロック鳥の時は平気だったのになんでこいつで萎縮しちゃったの?」

 ふと疑問が湧いてくる。体重で言えばこちらのほうが遥かに重いかもしれないが、大きさだけならロック鳥のほうが3倍近く大きいはずだ。

「あの時は無我夢中だったので何とかなったのかと……」

 恥ずかしそうにしてリーアがうつむきながら答える。その回答を聞いた直後、生前の記憶から3歩進んで2歩……という歌が頭の中で流れ出す。まあ、少しでも前進しているのだ、後退するよりは良いと思うことにしよう。

「ジャイアントベアはどうやって持っていくのですか?」

 確かにその疑問のとおりだ。3mほどある魔獣をそのまま馬車に乗せるとほとんどスペースを取ってしまう。なので、必要な部位と必要でない部位に分けなければならない。

「内蔵はもちろん捨てていくよ。後は頭部もね。骨も取り外して殆ど肉と皮だけにするんだ。脂肪は持って行きたいけど、明日街につくとかのタイミングじゃなきゃ捨てていくのが一般的かな」

 幸いなことに首を落としていたので血抜きの時間は体型より少し早く終わった。そこから解体へと進むのだが、まずは皮を綺麗に剥がす。腹側から切り、綺麗に1枚になるように剥いで行く。もっと部位に分けても問題ないのだが、1枚であるほうが多少高く買い取ってもらえる。皮の内側に灰をかけ洗い、洗い終わったら馬車に起きに行く。

 続いては内蔵と骨と肉の解体になるのだが、これが時間が掛かる。かなり大きいので全員で取り掛かり、結局四半刻は費やしてしまう。血抜きも含めれば半刻以上は経ってしまう。

「かなり時間がかかるのですね……、次の野営地まで大丈夫なのですか?」

 レンティから当たり前の質問が来る。だが、そこまで慌ててはいない。

「大丈夫だよ。アピまでの行程5日だけど、実はこういう剥ぐのに時間が掛かる魔獣が多い地域だから、それを見越して距離が短くなっているんだ。アピ~レーニア間の進み方だと、本来ならアピ~ケイトウは4日でたどり着いてしまうんだ。だけど、そのペースだと魔獣を解体する時間が足りないのと、3日目あたりかな?そこで森の真ん中で野営することになるんだ。だから、そこを避けるために短くなっているんだよ」

「そうだったんですね、まだまだ知らないことが多いです」

「新米冒険者が殆ど知ってたら色んな意味で疑われちゃうでしょ」

「あ、他国のスパイとかでしょうか?」

「それもあるだろうね。後は貴族同士の利権争いで雇われた人とかね」

「まあ、俺なんかはスパイが演る人なんかがそう簡単に知識をひけらかすことなんてしないとは思うんだけど」

「確かにそうかもしれないですね。目立つわけにはいかないでしょうし」

「まあ、たまに魔法学院出で、知識だけすごくて他はからっきしという冒険者もいたから、絶対とはいえないんだけどね」

「そんな人がいたんですか」

 懐かしがるような、思い出したくないような気持ちが湧き上がりながら答える。

「一人だけいたなー。魔法も少ししか使えないのに、やたらと知識だけあって、本来の俺はすごいんだ!とか口癖のように言ってたよ。アピまでの片道ももたないで途中でたまたま合流した他の商会の乗合馬車で逃げ帰っちゃったけど」

「それは迷惑ですね……」

「その時は育成させる人数が多かったからあんまり気にしなかったなー」

「それはそれで酷いです」

「二人で完全初心者11人相手にしてたら嫌になるよ……」

「それは……お疲れ様でした……。もう一人一緒に育成された方はどんな人だったんですか?」

 その言葉に少し懐かしい感情が沸いてくる。泣きたいと言う気持ちではないが、少し哀しい気持ちが沸き上がってきた。

「もう一人は前の仲間だよ。クールビューティと言えばそいつを指すと言うくらいクールで綺麗なヤツだったよ」

「ドラゴンスレイヤーの人ですね?」

 そのレンティの言葉に近くで解体していたメンバーも全員こちらに近寄ってきた。解体

 対象ごと……。

「まあ、そうだよ」

「フミトさんがそんなに誉めてるって事はすごい人だったんでしょうか?」

「すごいと言えばすごいかな?」

「どんな風にすごかったんですか?」

「リーアみたいに回避の盾職の上に、水系の魔法と水の精霊魔法が得意だったおかしいやつだったよ」

 ここで4人から驚きと疑問の声が上がる。

「精霊魔法と水魔法は苦手属性の様な関係で、生活魔法以外はほとんど使えなくなるはずですよね?」

 この世界では、水に相反して火があり、土に反して水がある。これが魔術の基本概念で、一部の研究者や学生の間や、生活に密接している冒険者の間ではそこそこ知られているのがその裏属性である。

 裏属性にも、精霊と治癒が相反する関係となり、効果がある魔法を使える者が殆どいないが、光と闇が相反する関係になる。表の属性と裏の属性とは完全な表裏一体という位置ではないが、火の属性と精霊魔法が相性がよく、治癒魔法と水魔法が相性が良い。風と光が相性がよく、土と闇が相性が良い。この知識を持っていると先ほどのことがおかしいことが分かる。

 そう、精霊魔法と相反するはずの水魔法が得意ということだ。まず、精霊魔法も使えて魔法も使えるということ自体がすごいことでもある。ティアモ生活魔法以外は普通の魔法は使えない。レンティも魔法以外は精霊魔法は使うことが出来ない。俺が使えるのは精霊に魔法を介してお願いしているだけにすぎない。

 魔法では相対する関係である火や水が、精霊の中でも表裏となり、相対するのかと思うのだが、精霊は精霊であり、火の精霊も水の精霊も対立することせず、仲は良いそうだ。ただ、天秤のように力の強弱となる場合があるらしいが、結構特殊な状況下でないとそのようなことは起き得ないと聞いている。

 精霊魔法では1属性でも使えるだけですごいと言われる事が多い。それだけ契約できるものが少ないと言うこともあるが、一般的な魔法でも全属性を満遍なく使えるものも多くはない。使えはするが、苦手なものもあり、やはりどこかに特化していく。レンティは土系をよく使用しているので土系に相性が良いのかもしれない。ただ、今回の戦闘でもぶっつけ本番で魔法を成功させているので、ただ単に使い勝手が良いだけかもしれないが。

「そのはずなんだけど、どうやらずっと水と親しい所で生まれ、生活したおかげなのかどうやら親和性が高いようで、お互いに影響を与えないって事らしい。治癒魔法も少し使えたけど、土や風、光と闇魔法に関しては生活魔法さえほとんど使えなかったよ。それ以上は俺にもよくわかんないんだ」

「すごい人が居たものですね」

 ナイアとティアから声がかかった。

「なんでそんなすごい人がフミトの知り合いなの?」

「最初は4人だったって話したよね?その次に合流したのがそいつを含めた2人なんだ。合流した理由も、全員一致で放っておけないって事だったんだよ」

 全員から驚きの声が上がる。

「何でですか?」

「戦闘に関しては集団だろうが、大集団だろうが、少数精鋭だろうが関係なく、指揮するにも先頭で戦うにもすごかったんだ」

 一呼吸置いた瞬間にレンティから質問が飛んできた。

「ひょっとして、フミトさんのパーティーメンバーだった人ってメルトヒルデさんですか?」

「よくわかったね?」

「集団も少人数も関係なくすごい人ってその人しか知らないので。でも、魔獣の森防衛将軍にまで知り合いとは……」

 魔獣の森とは、王都アルプフーベル北部、監視の街トリグラウの西部にある広大な森で、数年から数十年に一度、魔獣の大量発生が起こる。その時前線で指揮し、戦線の瓦解を防ぎ勝利に貢献し、将軍となったのがそのメルトヒルデだ。俺たちのパーティーが解散した後、少しの間行動を共にしていたが、突然旅に出てしまった後、そんな事になっていたのだ。

「そうなんですね……。所でどうしてそんなすごい人なのに心配だったんですか?」

「あいつは名誉なんて気にしないから言うけど、普段はすっごいドジなんだよ……。何もないところで転ぶわ、人とぶつかるわ、ドアを開けそこなってぶつかるわ、階段から落ちるわ、ベッドからも落ちて寝るわ、物は無くすわ、ノンナはを酷くした様なやつなんだよ」

 一斉にノンナを見るが、これで良かったと言う気持ちと、これ以上?と言う気持ちが入り混ざっているのだろう。

「ちょっと!みんな失礼じゃない??」

「……」

「お願いだから何か言って!」

 ノンナの懇願する叫びが響くが誰も言葉を発しないので、取り敢えず話をすすめる事にする。

「まあ、そんなのと一緒に一人減って10人を育成してたんだよ」

 今でも少し心配している。あのドジっぷりは天然記念物級だが、生死に関しては心配してない。周りに迷惑かけてないかが心配だったりする。

 少し郷愁の様な気持ちになっていた所で毎度のことながら浸れる様なパーティーメンバーではなかった。

「フミト!その女性と同じ部屋で寝てたの!?」

「そうです!なんでベッドから落ちて寝続けるって知ってるんですか?!」

 なんでこうも騒がしく懐かしい気持ちに浸ることを許してくれないのか、軽く頭を抱えたい気持ちになる。だが、その騒がしいのもいずれ心地よくなっていくのだろうか。

「あのなあ、冒険者始めた頃は普通かなり貧乏だろう!部屋2つなんて借りる余裕は無かったんだよ!」

「私はちゃんと宿に泊まれたわよ!」

「それは俺達が苦労して色々な商会の手伝いをして信用してもらえるようになって、安定的に仕事をもらえるようになったからだよ!今までは冒険者ギルドからの依頼も討伐ばかりで往復する時の移動時間は報酬になってなかったんだ。その移動時間も報酬になるように頑張って信用して貰えるようになったから貧乏な冒険者が少なくなったんだよ」

 新人冒険者の頃は本当に苦労した。冒険者ギルドに助けられ、仕事自体はあったのだが、3~4日かかって数匹討伐して帰って報酬を得る。魔獣の革とか肉はギルドを通すと確実に買ってもらえるがそんなに高くは買ってもらえない。討伐報酬も日割りで考えるとそう大したことない。そうなると自然と大物を討伐して一攫千金を狙うことが増えてしまう。そこで、商会が輸送を苦労していた処に目をつけ、護衛を買って出ることにした。それまではジルフ爺さんみたいな人達が何とか頑張って維持していた。戦力になる強い冒険者を大量にのせた乗合馬車を御者2~4人で守るという能力の無駄という状況が普通だった。冒険者側もさほど稼げていない状況で一攫千金の夢を見てなけなしのお金で乗合馬車に乗る。非情に悪循環な慣習的状況を6人から崩し始め、3~4年であっという間に国中に広がり、冒険者を雇わない商会がほぼ無いという状況になっていた。冒険者側の意識改革は初心者ほど早く進んだが、しばらくは熟練冒険者から商会の護衛をしている者たちを下に見る傾向が続いた。しばらくその上下関係が続いた後、俺達商隊護衛推奨派が、グランドドラゴンを狩った為、熟練冒険者達の意識改革が大きく進んだ。その波に乗れず冒険者をやめてしまった熟練冒険者達の一部から俺達は恨まれているらしいが、そこまでは気にしていられない。

「ティアは親父さんやエイル姉さんから冒険者の厳しい状況のことを聞いてないのか?」

「そういえば聞いてないわね」

「全くあの二人は娘が心配じゃないのか?」

「フミトさん、私もその時期のこと知りません」

「え?ナイアも?」

 俺達が広げた冒険者の信用は、辛い所を知らずに済む冒険者を増やした様だが、逆に知らない人も増やしてしまった様だ。討伐以外にも冒険者の生きる道を作ったことはいいことなのかもしれない。流通も活性化し、人の行き来も以前より増えた。ただ、その恩恵を仇で返す様な盗賊やインサニティ商会等も居る。良い改革の中にも悪い虫は居続けるのはわかっているが、感情的にはわかりたくないのもある。

 そんなことを考えつつ、彼女らには何処まで教えたものかと考えつつ、ベアの解体作業を進めるように促した。



結局話が全然進んでいないです。この1話は実質熊をさばいていただけに…。

魔法の関係や、王都の位置、昔の仲間を出すことが出来たので個人的には良かったと思っています。

さっさと先進ませろ!とお思いの方がいらっしゃるかもしれませんが、構想2日目に考えた所がようやく出すことが出来たので、出来る様でしたらお許し頂けると幸いです。

今回は通勤電車の中、スマホでメモじゃなく実際に書き進めてみましたが、同じ時間かけて進む量が圧倒的に少なく、文字変換もイライラしながら書きました。日曜日に書き上げるのが多少楽にはなりましたが、文章がおかしかったり、変な所で勝手に改行があったり、誤字脱字がかなり多く、更には話の連続性がめちゃくちゃになっていたのでどっちが良いのかさっぱりわかりませんでした。

スマホで長文書ける人を尊敬します。

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