仲間
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ウルフをの中身を埋め終え、再出発するも半刻後には野営地にたどり着いてしまった。
「2回戦闘ありましたけど、思ったより早く着きましたね」
「そうだね。戦闘の時間が短いからか?」
「戦闘自体はそんなに長く戦ってることが無いので、旅慣れたのでしょうか?」
「そうかもね」
ナイアと他愛のない話をしつつ、練習刀によるカタナの訓練をする。お互いに向かい合い実践形式で斬り合っているのだが、会話が会話だ。戦闘訓練とは思えない感じとなっている。
リーアとノンナが珍しく組んだ練習をしていた。ノンナはシザーリオに乗りながら、リーアの盾に当てる訓練、リーアはいかにその衝撃をいなせるかという訓練だそうだ。一人で防がなければならない事を考えると、突進力等を抑えこまなければならない事もあるだろうが、無理して衝撃を受け、致命傷になる方が問題でもある。色々と考えているのだろう。
レンティは動かない的ではあるが、阻害魔法の距離を確かめていた。どれだけ離れることができるかを実体験で試しているのだろう。
夕食は正直代わり映えの無いスープと硬いパン、そして干し肉だ。新鮮な野菜があるのでまだいいのだが、壊血病になるのではないかと少し不安になったりもする。実際これより酷い状況でもならなかったので、不安になっていてもしかたがないのだが。
夕食後、昼時の懸念材料をみんなに話し始める。
「さて、今みんなが持っている武器の事について、不安になる点が一つある。それについて話し合いたいと思う」
御者の面々もうなずく。話を聞いてくれるようだ。
「皆も体験や、見てわかったと思うが、今俺達が持っている武器がかなり良い物になっている。これをこのまま運用するのは良いのだが、いずれ噂とともに広がる可能性がある。噂が広がると良からぬことを考える者が増えてくるだろう。そうなると各々が厄介事に巻き込まれるかもしれない。ここまではわかってもらえるかな?」
全員が頷く。
「そこで、その噂のから各々を守るために、このメンバーでパーティーを作りたいと思うのだが、賛成してもらえるだろうか?」
今までは、冒険者仲間として育成していただけという間柄だ。正直パーティーは各々良い仲間が見つかればそこで切磋琢磨して欲しいと思っていた。だが、この武器の問題はそうも行かなくなりそうだ。
「私はその意見に賛成します。私はフミトさんと一緒にいくことにします」
すぐ口を開くナイア。昼に話していた時も気づいていたのだろう。この武器の怖い点を。
「ナイアちゃんが行くなら私もいくー」
お調子娘だが、判断は間違えることが少ない。ノンナが加わることは少し安心できる。
「二人はどうする?」
リーアとレンティに話しかける。
「私達新人がが加わってもよろしいのでしょうか?」
「ああ、それについては全く問題ないよ」
「フミトさんのパーティーを断り、他のパーティーに参加するということは可能なのでしょうか?」
レンティが意見を投げかける。
「それについては構わないよ。武器も持って行ってもらって問題ない。ただ、その武器を使っていると、多分嫉妬や厄介見事を抱えることになりそうでね。最悪争いにまで発展するのではないかと思ってる」
特に最前線の一攫千金を狙っていて、荒れている冒険者等にはより見せたくない代物だ。ある程度流通してしまえば良いのだが、現状あの武器を作れるのはアピの爺さんだけだ。名誉欲、金銭欲に塗れた人達にこの武器の性能を見せることは正直まだ怖い。
「そこまで考えてましたか。でも、そこまでならない可能性もありますよね?」
「そうだね、あるかもしれない。でも、最前線に居る欲深い人をレンティは会ったことあるかい?」
「いえ、会ったことは無いです」
「すべてがそのような人だとは言わないけど、かなり欲深くて嫉妬深い人も居るんだ。盗賊落ちしないけど、それに近い人というような人がね」
「そうなんですね……」
「脅すわけじゃないけど、他の人を無条件で信頼することが出来ないって言うだけなんだ。だから、レンティ達が自分たちでパーティーを見つけると言っても全然構わないし、入ると言っても良い。それに、不安がなくなるまでパーティーに入るというのでも構わないよ。ノンナやナイアは正直問題無いと思っている。少なくとも冒険者ランクも街級まで上がっているから、階級での差別は少なくなるだろうしね。それと、街級でも名の知られた冒険者ならこれに近い武器を持ってる事もあるのも理由の一つだ。実力があっても機会が与えられない冒険者は山ほどいるから最低限街級が必要になると思う。そこで、白級のリーアやレンティがその武器を持っていることが、嫉妬しやすい人達の差別対象になるのではないかと思ってね。この武器の運用による嫉妬等の脅威を出来るだけ軽減するというのが本来の目的だからね」
レンティが考えこんでしまった。そこにリーアがレンティに質問をする。
「ねえ、レンティ。何がそこまで気になってるの?」
「色々と聞いているのは、リーアに選んでもらうためよ。ここから先はリーア、貴方が選びなさい。私はそれについていくから」
「ええ?!レンティが決めてよ!なんで私が?」
「その理由は今は話せないの。でも、間違ってないと思う」
「うーん?わかった。後で文句言わないでよね?と言っても、もう決まってるんだけどね」
リーアは姿勢を正して、俺達にこう伝える。
「フミトさん、ノンナさん、ナイアさん、まだまだ未熟な所が多い二人ですが、よろしくお願いします!」
二人揃ってお辞儀をする。ここまでリスクを伝えたのだ、答えはレンティも一緒だったのだろう。
「ああ、改めてよろしく」
「よろしくねー!」
「よろしくお願いします」
「私達二人はリーアさん達と比べて少し軽く決めてしまったように見えますね」
「そうかい?即答してもらえたから、そういう意味では重い言葉だと思うけど?」
「フミトさんから説得して頂いてないので、やはり撤回します」
「なにそれ!」
今日はフミトがいじられ役のようで、過去の恥ずかしい体験をジルフ爺さんから暴露され、赤面し、あたふたしたのは割愛しておこう。もちろん、ナイアの撤回は冗談だった。
その夜は、夜襲が一回あった。魔獣まで俺をいじるのか、3交代制の3番目にウルフが4匹仕掛けてきた。ちなみにまだ休息の順は変えていない。結果、あまり眠ることが出来なかった。
2日目、3日目は魔獣こそ少し多かったが、基本問題なく進行できた。
「今までに襲ってきた魔獣ってどのくらいだっけ?」
「ワーウルフ3、ボア3、アグリーバック7、ウルフ18ですね」
「少し多いな。でも、ウルフ系が多いからそんなに馬車の荷物にはならないか」
「このペースでも荷は満載にはならないですし、問題ないと思いますよ」
4日目の昼食中、今までの魔獣を振り返りながら会話をする。
「ボアは基本1体だから、ほとんどノンナにやってもらうことになってるね」
「そーだねー。でも、楽だし」
「まあ、突進して一突きじゃ、楽以外の言葉は無いか……」
グラスボアの行動が単純なため、今のところ3匹は同じパターンで倒してしまっている。シザーリオで突進して、槍を頭に直撃し絶命。楽なのは良いが、気が抜けすぎないようにしないと。
「他の魔獣に対しても、武器の扱いにも慣れてきたので、相手への手数が増え、結果楽になっているのはあると思います。私もカタナが使えるようになり、楽になったと思います」
「そうですね、私も前の長剣とあまり変わらない武器ですが、魔獣相手に武器が入りやすいので、ダメージを与えやすくなっていると思います。おかげで相手が痛みのため、行動が限られてくるので、殲滅速度が上がってるような気がします」
「レンティは、魔法の発動等に不都合とかは無い?」
「特に問題ありません。ただ、魔法を使うべきか、武器で攻撃するべきか、まだ判断が甘いと感じることはあります」
「それはもう慣れしか無いだろうね。ただ、基本は傷つかないための武器だから、ノンナみたいに勝手に突貫しないようにね?」
上手く鳴ってない口笛が聞こえる。どうも突貫グセが再発してしまったようなのだ。新人の時、盾職なのに突貫していたのを無理やり修正し、7年経ってまともになったと思ったのだが、自由に動けるようになり、癖が再発したようだ。調教師のナイアになんとかしてもらうしか無いかな?
昼食を終え、暖かくなってきた草原を進む。雲も殆ど無く、太陽がしっかりと浴びることが出来、マントも風通しの良い物にするべきか考え始める気候になってきた。夜はまだ寒くなることもあるので、薄手のものにするか悩むのは結局昼間だけではあるのだが。今は馬車があるから持ってもらうことができるが、ない場合は一人でテントまで持たなくてはならない。そのことを考えると正直マントは1枚のみになるだろう。実際、薄手のマントにしても、守りの面を考えるとそうそ薄くすることは無いのだが。
もう少しで野営地という所で、のどかな光景から現実に戻される一言がナイアから発せられる。
「敵襲!進行方向やや右!グラスクーガー4!内変異種1!色は黒!接敵10分!」
「グラスクーガー?複数でか?」
「はい!間違いありません!」
グラスクーガーとは、ケイトウからレーニアまでの草原地帯に住む猫型の大型魔獣である。大きさは南アメリカ大陸に居たクーガー(ピューマ)よりかなり大きく、体長2.5mから最大では3mほどになる。体重で言えば、軽くて100kg、重いと200kgを超える個体もいるそうだ。肉食獣ではあるが、この草原地帯に生えている香草が好みらしく、食事の後等に食されていると考えられている。その為か、肉は多少固くて筋があるのだが、臭みが少なく、逆にいい香りがしてくるので、意外と人気のある食材ではある。更に、毛皮が若草色をしており、綺麗に切り揃えるとベルベットのような手触りになる。王侯貴族に人気のある上に、輸出しても人気の高い商品となる。だが、そのような事を考えている場合ではない。本来なら群れで行動するような魔獣ではなく、常に1体で遭遇することが多い。極稀に2体で行動する事を目撃されているが、今回のように4体と言うのは冒険者ギルド初の事だろう。攻撃的行動は、噛みつく他に、両前足の爪があるが、下手な鍛冶屋が作ったガントレットを裂くほどの威力がある。正直かなり厳しい戦いになる事が予想される。
「リーア!先頭頼む!」
「はい!」
「ナイア!リーアの右に。それと、接敵前に1匹でも仕留められるか?」
「わかりません!できるだけやってみます!」
「わかった、やってみてくれ!レンティ!『スパイダーアンカー』を!」
「はい!広範囲ですか?」
「いや、1匹だけでも良い、できるだけ長い時間繋ぎ止められるように!」
「はい!わかりました!」
「それと、リーアに『レッサーストレングス(筋力強化)』『レッサーアボイド(回避強化)』『レッサーアタックレイト(命中強化)』『エンチャントシャープナー(武器強化)』『エンチャントシールドフォース(盾強化)』『モーションアップ(速度強化)』をかけてくれ。近接戦闘には加わらず、他の阻害魔法を試してみてくれ!」
「はい!やってみます!他の阻害魔法はまだうまく使えませんが、なんとかしてみます!」「そうか、重ねて言うが、グラスクーガーは今のレンティに近接は無理だ阻害系の魔法を重視してくれ!ノンナ!1匹釣ってもらえるか?」
「うん!やってみる!」
「頼む!できたらその1匹を引き受けてくれ。念の為に盾も持ってな。釣れなかったら任意行動で」
「はーい!」
「ギルン!ジルフ爺さん!馬車とその守りよろしく!こっちは全力で行かなきゃならん!」
「わかった!こっちは気にしないで全力で行って来い!」
「ありがとう!」
「行動開始!4体と数が多いが倒すぞ!」
「はい!」
少し馬車から離れ、ナイアが先制で攻撃を仕掛ける。
だが、数発打つも躱される。猪突猛進系では無く、考えながら行動する魔獣の為、単純な長距離攻撃では躱されてしまうのだ。
レンティも魔法有効範囲に入ったため、『スパイダーアンカー』を放つ。放物線で飛んで行くため、同じように避けられてしまうかと思ったのだが、黒いグラスクーガーは避けることをしなかった。やった!と、小さな声がレンティから聞こえる。が、その魔法が黒いグラスクーガーに触れた途端消えてしまった。
「嘘?レジスト(魔法抵抗成功)した?!」
レンティから驚愕の声が発せられる。一般的な魔獣は魔法抵抗率が低いため、当たれば大抵魔法にかかってしまう。特に物理系の魔法は、発生した事象が消えることはほぼ無い。そんな魔法がかき消されてしまったのだ。圧倒的な抵抗力を持っている突然変異種だということが判明し、レンティの魔法はほぼ無意味になってしまった。
レンティの魔法を確認した後、ノンナが行動に移り、わざと隊列から離れる。
だが、離れて行っても一向にノンナの方向に動く気配がない。軽く見た程度でしか無かった。
「誘導は失敗か……。4匹来るぞ!」
言葉を発すると同時にグラスクーガー3匹が突撃してきた。
上手く3人に別れ、レンティには行くことは無かった。その点は一安心だが、1匹だけ来ないのが気になる。だが、それより目先の1匹をどうにかしないと他のメンバーへの手助けも出来ない。早めに倒してリーアやノンナを助けに行かなくてはならない。
グラスクーガーは噛み付いてくるかと思ったが、爪で攻撃を仕掛けてきた。大きく飛び込み爪での攻撃。すれ違う形で攻撃ができるかと思いきや、別パターンでの攻撃な為、バックステップで躱す。躱した直後、突きを放つが、敏捷性の高い身体の為、右側に避けられてしまう。刃先を左側に向けてしまったので、慌てて構え直す。
「頭の良い個体だな……」
思わず口から出てしまった。武器の切れる方向がわかっていると言うのはやりづらい事だ。
再度爪の攻撃が来るが、その腕をめがけて攻撃を仕掛け傷を追わせることに成功した。
「少しづつ削っていくしか無いのか……」
多少の傷では怯むことをしてくれない魔獣だ。決定的な一撃を入れるには敏捷性が高い上に賢い。やりづらい相手だ。
鼻先をかすめる位の横からのなぎ払いを放ち、眼前で止め、そのまま突きへと移行する。
グラスクーガーはバックステップして躱したので、追い打ちをかけるようになった。右胸に少しだけ剣先が入る。このまま押し込もうとするが爪で剣先を弾かれてしまった。
「これで少しは動きが鈍くなってくれることを祈るが……」
少しだけリーアの方を確認する。
盾を使い上手く攻撃を躱しているが、当てることが出来てはいない。今一歩踏み込めていない所があると思った瞬間。リーアに対しているグラスクーガーが攻撃後、大きくバックステップした。だが、そこで姿勢を崩す。その瞬間、リーアが飛び込んでしまった。
嫌な予感があり、俺は飛び込んだリーアの行動を止めに行く為に、目の前のグラスクーガーにカタナを投げつける。虚を突けたようで、目から深く突き刺さる。絶命を確認しないままリーアへと振り向くと、裏で低く構えていた黒い突然変異種がリーアに向かって走り飛び込もうとしていた。
個体差を出すのはそんなにしないようにするつもりです。突然変異種との差が無くなってしまうので。
2016/01/04 三点リーダ修正




