プロローグ
初投稿になります。
豆腐メンタルな為、お手柔らかにお願い致します。
プロローグ
夜22時半を回った辺、深夜と呼べるような時間帯にやたらと浮かれた男性が一人駅に向かい歩いていた。その男性はアルコールに酔っているようには思えなかったが、何か別のものに酔っているのかと思わせるほど上機嫌で帰宅している人々に怪しく思われ、時には逃げ出されていた。
「フフフフフ……気持よかったなー……」
中々気持ち悪いニヤケ顔で約30分前の出来事を思い出しつつ呟く男性は日吉文人20歳大学生。1週間前に彼女が出来たばかりで大学内でも浮かれ過ぎと、友人の間では迷惑をかけてしまっていた人物だ。
「夢にまで見た初体験!経験出来ました!」
数人の友人に浮かれたメールを送り、何故返信が来ないのかにも気づかないくらい浮かれていた。
かなり興奮しており、今夜は眠れそうになさそうな状況だ。
「何か映画でも借りるかな?それとも運動したから何か食べるかな?」
その様な次の行動の予定を立てようと考えるが、先程の経験が頭を過ぎり、思考がまとまらず、別の考えに移り支配され行く。
「明日からどんな顔して合えば良いのかな?キリッとした顔で昨夜はお楽しみでしたねとか?いやいや、これはどっかの宿屋が言う一言だろう」
「彼女からもっと楽しみたかったのに、帰っちゃうなんてって言われたりして!?」
次々とくだらない事が頭の中に湧き出て、それだけですませば良いのに思わず口に出てくる。
羽の生えたような気分と言うのはこの時使うべき言葉ではないのだろうが、浮ついているという点では間違いないと思う。
そう、信号が赤くなっていることにも気づかないくらいに。
体の右半身に突如強い衝撃をうける。骨がきしむような感覚や、肉が圧迫されたような感覚さえ脳が感知出来ない刹那の衝撃。
衝撃の後は浮遊感を感じた。足元から地面の感触が無くなり、鉄棒で飛行機をやって飛び出した後のような妙な感覚が占める。鉄棒で飛んだ後なら体が動き足から着地することができるが、今はその様な考えさえ追いつかない。
体感時間で20秒ほど経ったであろうか?左半身に先ほどと同等な衝撃と擦れる感触が会った後、自分の体が跳ね上がる感覚も合わせて襲ってきた。
痛いと思う前に、頭にも衝撃が走り、最後に背中に大きな衝撃が走り、ワンバウンドした後大きく擦れる感触が続いた。
文人は何が起きたのだろうと体を起こそうと思ったが体の何処の部位を動かそうとしても動かない。指や腕が地面と思われる所に触っているはずなのに触っている感触がない。
次に音が聞こえないことに気づく。キーンとした高周波の様な音が頭の中に響く。視界の端に幾人かの靴が見えた。足音くらい聞こえても良さそうな位置なのだがそれさえも聞こえない。
その近づいてきた人に事情を聞こうと思い視線を向けようと思った所、徐々に視界が白くなっていく。何が起きたのかわからないので慌ててどうにかしようと試みるが、視界が白く変色していくのが早く、視界が全部真っ白になった瞬間自分の意識も途切れた。
少しずつ自分の意識が覚醒していくことに気づいた。あわせて目を開いた所が真っ白であり、その白いのが天井だということにも少しづつ覚醒した意識で理解することが出来た。
先ほどの妙な感覚が全く無く、すっきりした気分で目がさめることが出来た。
衝撃を受けた部分に意識を持って行ってみるが、痛みやかゆみ、その他負の状態に関する状態は全く感じられず、今日の朝目が覚めた時と同じような快調といえる状態だった。
体を起こしてみて色々と触って調べてみるが、あれだけの衝撃を受けたのに骨が折れて4いる場所は無く、左半身や背中の擦り傷が出来たであろう場所にも何も問題なかった。
体の異常が見当たらない所で視界に女性が立っていることに気づいた。
腰近くまで伸びたストレートヘアで、背中の空いた体のラインがくっきり分かるような白いワンピースを着た女性だ。俺の存在に気づいていないのか、背中を向けて何か作業をしているようだった。プロポーションとしては抜群に見え、出る所は出て、引っ込む所は引っ込む、日本の女の子向けで作られている人形で理想の体型の縮尺を小さくしただけという人形があるが、それをそのまま大きくしたらこうなるのであろうかと言う体型だった。
現在の状況を教えてくれそうな人がその人以外いなさそうなので思い切って声をかけることにした。
「あのー、すいません」
「ひっ!?」
丁寧に声をかけたはずなのに、かなり怯えた声を出され少しショックを受ける。その女性は恐る恐るこちらに振り返る。ストレートの髪がゆっくりと振り返るが綺麗になびき、イメージ通りの綺麗な女性の顔を拝むことが出来た。こちらを見ているが一向に口を開いてくれないので、再度こちらから質問をしてみることにした。
「ここは病院ですか?」
「病院ではありません」
その答えに納得できる事が一つ理解できた。声を出したことでより思考がハッキリとできたのか、先ほど天井と思っていた所はただ白いだけで天井の様な所は何処にもなく、左右を眺めても壁らしきものが何もなかった。
それの異様な状況に気づいた後、その女性の評定が青白くなっているのに気づくが、今の状況を理解することを優先した。
「ここはどこなのですか?」
「ここは転生の間です」
その女性の顔は以前青白く、綺麗な顔が台無しと思えてきた。だが、それより聞き慣れない単語が出てきたのでその単語の意味を聞くことを優先し、質問することにした。
「転生の間?なんですそれは?ホテルの一室ですか?」
鳳凰の間とかならホテルとかでよく使われていると思う。ただ、よくわからない名前の部屋をつけられているホテルも多いのでその一つかと思った。
「ホテルとは地上界の宿のことですよね?その様な場所ではありません。亡くなった人が再度出発先を選ぶ場所です」
地上界という遠回しな一言が聞こえたが、それより先に聞かなければならない単語が聞こえたのでそれを質問する。
「亡くなった人?なんで俺がそんなところにいるの?」
「ここは地上界で運命を全うし、神々に選ばれた人がたどり着くことが出来る場所です。あなたがここにいる理由はわかりません」
やさしい口調で答えてくれるが、青白い顔は変わらなかった。
「俺、神様に選ばれたの?」
「いえ、本日は誰もここに来ない予定になっています」
選ばれし勇者とでも言ってもらえるかと思い質問したが、かなりイレギュラーな返答が来た。頭がまだハッキリと動いていないのか、理解し難いことが起きているから処理が追いついていないのか、中々理解が進まない。
「それじゃ、なんで俺はここに来たんだろう?と言うか、俺はどうなったの?」
「神々の導きがなければここに来ることは出来ないはずですが……。貴方がどうなったかは今見ることが出来ます」
女神は先ほど作業をしていた様に思えた楕円形の鏡のようなものを操作し始めた。
少し経つと簡潔に俺の状況を簡潔に答えてくれた。
「貴方は交通事故で亡くなったようですね」
「え?死んだ?どういうこと?俺、初めての彼女が出来たばっかりだよ?これから色々とやりたいことがあるのに!」
怒りとも違うが、やりきれない感情が浮かびあがってくる。
「彼女とはこの女性ですか?」
そう言うと女神はセミロングで薄く赤を混ぜた茶色い髪で、青系のショートパンツと黒のジャケットの組み合わせをした女性を拡大する。
俺はその楕円形の鏡のようなものに飛びつき確認する。飛びついた瞬間「ひっ!」と悲鳴が聞こえたが確認することを優先した。
「そうそう!この子!……ねえ、隣のモザイクは何?」
女性が映っている近くにプルプル震えるモザイクが見えた。見たくないものや見せたくない物に多用されるような良くTV以外でもよく見るものだ。
「このモザイクは貴方です。キモいのでモザイク加工をしました」
その言葉を出している間もその女神は2歩ほど下がり、青い顔がより青くなっていった。
「キモイってそんなにひどい事故だったの?」
「いえ?貴方の顔の外傷は全くありませんでした。ただ貴方がキモイので」
「ちょっと!失礼なことを言う人だな!」
女神に対して怒りをぶつけようと思った所、彼女の口が動いているのに気づく。
「ねえ、彼女がなにか言ってるようだけど、聞くことが出来る?」
俺に対してのお別れの言葉か、悲しげな言葉が聞こえるかもしれないが、最後に彼女の言葉を聞けると思い、女神に依頼してみる。
「では、鏡から離れてください」
女神の言うとおりに鏡から2歩ほど下がると、女神が霧吹きみたいなものを鏡に吹きかける。
「何それ?魔法の触媒みたいな奴?」
リアルなゲームとかでは魔法を使うのに触媒が必要だとかあったきがする。そんな感じなのかと感心していたら女神から思わぬ一言が出てくる。
「いえ、洗浄液です」
「洗浄液って何それ!」
怒りをまたぶつけようと女神に何か言おうと思った所に地上に残してきた彼女の声が聞こえ始めた。
「なにこれ?あ、これフミトじゃね?死んじゃったんだ。ちょっと小金持ちっぽかったから3番目くらいに貢がせようと思ってヤラせたのに。貢がれる前に死んじゃうなんてヤラせ損じゃないのよ。つか、20秒だし、下手だし、自分勝手で動くし、AVじゃないっつーの。それ以上に尻はねーだろ。薬局ってまだやってたっけかな?ちょっといてーよ」
そう言うと駅の方向に歩いて行ってしまった。
「……尻?……」
色々と言われたようだが、俺の頭で処理できたのはこれだけだった。
「尻と言っていましたね」
女神がたたみ掛けるように俺にダメージを与える。
「大丈夫ですよね?俺、初体験できたんですよね?」
やはり混乱している頭では正常な質問も出来ないようだ。
「男性にもお尻はありますよね」
女神から致命的なダメージを受けるような攻撃的な言葉が紡がれる。
ものすごく良いパンチを貰ったように、膝から力が抜け、手をつきうつむく。致命的なダメージは俺の中に蓄積し、このダメージはしばらく抜けることはなさそうだった。
「……俺は……まだ……」
最後の希望を、女神が否定してくれることを希望してうなだれていた顔を上げ見つめた。
「ダンセイニモオシリハアリマスヨネ」
棒読みのように話してきた。話し後笑いをこらえきれないような口や顔を隠す仕草をする。
「そんなんじゃ、死んでも死にきれねーよ!」
混乱した頭と、崖っぷちに追いやられた時にまともな思考が出来る人間はいないと思う。俺もそれにもれずにまともな思考ができなかった。
「お姉さん!お願いします!」
女神に飛びつき、両肩を掴みながら懇願する。
「キャーーーーーーー!!!!!!!!!!」
女神が叫ぶと同時に交通事故で飛ばされた時以上の衝撃を受け吹き飛ばされる。2~3回地面にぶつかり最後に擦れる感覚が来るなと思った瞬間体が浮き続けているような感覚があった。
「え?なにこれ?」
飛ばされた先に穴が開いていたようだ。その中にうまく入り落ちていしまった。
「ちょっと!俺落ちてる!待て待て!え?」
大きな声で悲鳴をあげる。助けてくれなどまともな言葉が出る状況でもない。混乱し続けた頭の中に更に混乱させる状況、女神が助けてくれるかもしれない一縷の望みを頼みにした。
だが、女神から聞こえた言葉はとても短い言葉で俺の耳に届いた。
「キモイ!!」
呆れと絶望を感じながら俺は意識を失った。
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ここは魔獣たちが多くいる生息している地域に出来た街レーニアだ。最前線の街ほどではないが、力試しの冒険者や、修行、一攫千金等で夢を見て訪れる人が耐えない街だ。港町でもあるので、流通の要でもある。その様な街の一室を定宿としているので、知り合い等は俺への手紙はこの宿宛に送ってくる。
「おー、あの娘も結婚したんだ。懐かしいな。随分とあってないな」
溜まった手紙の1枚を読み終え、次の手紙に手を移す。
「ほー、借家じゃなくて自分で立てることができたんだ。すげーなー。あいつそんなに稼げるとは思わなかったんだがな」
故郷に済む同年代の男の幼なじみを思い出す。次の手紙。
「あら、この娘妊娠したんだ。早いなー……。まだ15歳だろう。と言っても成人は15歳だったんだよな」
故郷の女友達を思い出す。同年代の幼なじみで15歳で結婚し、すぐ子供を生んでいた。その娘がもう結婚し、子供が出来たという手紙だ。
「幼なじみの娘が妊娠か……」
俺の名前はフミト。
偶然にも前世での名前と同じ名前になっている。
記憶が定着してから両親に聞いてみたら完全に偶然つけたものらしい。
日本での人生は20年しか過ごすことが出来なかった。だがこっちの世界では今30年目に突入した。
職業:冒険者、職種:魔法使い、性別:男、年齢30歳
前世でも意外と好きだった魔法使いになることは出来た。
だが、ネットスラングでの別の意味での魔法使いの称号も得ることになってしまった。
つまり、未だに未経験である。
事故の衝撃だけは実体験です。
怪我は擦過傷(すり傷)だけでしたが……。
10/25 句読点の修正
2016/01/04 三点リーダー修正
2016/3/21
プロローグ大幅修正。丁寧な言葉にした方が良いというご指摘頂き、進行はそのままでほとんど書き直しました。
内容はほとんど変わりませんので、既にプロローグをお読みの方がいらっしゃっても問題ありません。事故の衝撃は少し誇張が入りました。ただ、実際にあわれた方は似たようなイメージを持たれるのではないかと思われます。