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30の魔法使い  作者: 圧縮
本編
13/83

戦闘スタイル

戦闘スタイル


 野営地に着くと、まだ日は高かった。準備は訓練後始めても問題なさそうなので、疲れているとは思うが訓練を始める。


 リーアの訓練はノンナとナイアの二人を同時に相手するものだ。刃引きした剣があるわけではないので、ノンナとナイアは手加減するしか無いが、街級冒険者でもあるので、力量差ははっきり出る。リーアはまだ目の前の相手に集中しすぎるのが問題だろうか。それに気づいたナイアはわざと視界の外へと移動しつつ剣を振るう。慌てて防御するリーアに正面からまっすぐに向かってくるノンナから王手の一撃が飛ぶ。始終この様な有様ではあるが、2手くらいで終わっていたのが4手くらい訓練の終わりでは持つようになっていた。


 レンティの訓練はひたすら俺に短い詠唱で魔力をあまり消費しない『ファイア』を打ち続けること。こちらは羊皮紙魔法で『モーションアップ(速度強化)』の魔法をかけ魔法を避けながら近づくと言うもの。武器が届く約半径1mに近づいたら仕切りなおす。当てるタイミングと、相手の動きを読む事が重要なので、こちらからの攻撃は一切なし。だが、木の棒を持つことで、武器を持った相手の動きをシミュレートしながら行う。これからは対人戦もありうるのだ。

 幾度か訓練をした後、レンティに普通サイズの羊皮紙に魔法学院ではあまり教えない魔法を書いて渡す。レンティでも読めるように、魔法学院の魔法書に書かれている形式で記入。『ファイアショット』火の玉を散弾を打つように発する魔法。中級魔法であるが、基本は初級のファイアを同時発射するだけのもの。難点は射程が短くなること、連射が効かない。利点はそこまで長い詠唱必要としない。緊急事態用にも慣れれば使える魔法だ。早速と訓練で使用を許可し、自分の戦術に組み込んでもらう。合わせて、詠唱をより短くなる様に短縮詠唱のやり方を教える。これは書式学での経験上、いらない可能性の部分を省いてみたところ、発動することを発見し、実は未発表なものだ。何人かは教えているが、書式を熟知しないことには短縮できないので、多くの人が使えるわけではない。


 ファイアショットを教えて1回目の訓練でもう少しで1mの距離というところでいきなり使われた。リーアがたまたまこちらを向いており、一瞬火達磨になった俺を見てびっくりして動きが止まる。コツンと二人からゲンコツを頂いていた。


「いいタイミングで使用したな。相手の魔法防御が低いか、警戒していなければ効果は大きいだろう」


 あっさりと抵抗し鎮火させてしまったために、少々説得力にかけるが、こちらも燃えてあげられるわけにも行かない。そう思ってもらうしかない。短縮詠唱についてはファイアのみコツを掴んだようだ。他の魔法も理解していけば短縮できるだろう。


「はい、ありがとうございます。もう少し訓練に付き合っていただいてもいいですか?」


 既に半刻近く訓練していた。リーア達はもう訓練を終え、こちらの見学に入っている。魔法使いの動きやそれを躱す動作、見ているだけで学べることはあるはずだ。


「わかった。次が最後にしよう。今回は少し揺さぶることにするよ」


 20mほど離れてから、走りだす。火球が足元めがけて飛んでくるが、少し起動がずれている為に無視して走る。即座に次の火球が飛んでくる。先ほどの火球と線対称の位置に向けて放っているものだ。次は当てるつもりで直線で撃ってくるだろう。と予測し発動前に接敵する事を先ほどやったので、同じように突撃するが、火の散弾の有効範囲ギリギリで左に飛び、火の散弾を躱した。と思ったが、散弾では無く火球が飛んできた。誘われたと思い、左前に飛ぶ。今度は火の散弾が通り過ぎて行く。一歩大きく踏み込み、王手をかける。


「少し冷や汗をかいた。武器を持っていたら今のはやられていたかもしれない。良い攻め方だったよ」

「ありがとうございます。武器は私が使えませんので、その想定はあまり意味が無いと思いますが」

「俺も魔法一本で行けると思っていたが、世の中そんなに甘くなかったんだ。それで武器を扱うことを覚えた。まぁ、武器の方も性に合ってたのかもしれないが、使えて損はないと思うよ。杖等が無いと集中出来ないというのなら2種類持つのもありだと思う」


 実際に魔法使いと疑われるほどにまでなってしまっている。元々魔力が無いと言われているのも疑われている要因ではあるが。


「そうですか。杖が無ければというわけでは無いのですが、集中しやすいのは間違いないですね。でも懐に入られた時には他の武器を使えるほうが良さそうですね。何かおすすめはありますか?」

「そうだね……。レンティの今の筋力で使えそうなのは、短剣か、レイピア、短槍……くらいかな?」

「短剣やレイピアはわかりますが、短槍とは普通の槍とは違うのですか?」

「運用方法が違うはずだよ。刺突武器としては同じものだけど、両手で扱い、自分の身長より長く、剣の間合いより遠いところから剣の間合いまで扱うのが一般的な槍で、自分の身長と同じか短いくらいの短槍は基本片手で扱い、間合いは剣と同じくらいだ。だが、両手で扱っても問題はない。更に、投擲武器として使っても良いはずだ」

「似た部分はあるみたいですが、基本が違うのですね」

「そうだね、短槍を両手で扱う場合は似たような運用ができるね。射程は短いけど。あと、体術の延長線上で運用できるから、一緒に覚えても良いのかもしれないね」

「難しそうです……」

「まぁ、リーアの後ろから突くだけというのでもありだろうね」

「そのくらいなら行けそうです」


 剣術3倍段や槍術3倍段等言葉が残っているように、射程が長い物は有利なのだ。前衛職の後ろから突くだけでもかなり有効といえる。日本の長い槍は、戦闘専門兵じゃ無い農民を戦へ駆り出し、戦わせなければならない。剣と剣の間合いであれば、怖気づくことが多く、それなら槍を持たせて遠くから攻撃すれば恐れが減るという経緯もあるそうだ。そのような点も含めて、力のない、そして近接戦闘の経験が乏しいレンティには短槍は向いていると言えるだろう。


「魔法で虚実を使い分けているから、武器を扱わせたら手に負えなくなりそうだな」

「そんなことは無いと思います」

「そういえば、アピで知り合いの頑固ジジイ達がいるから、そのドワーフに見繕ってもらう?」

「魅力的なお話ですが、私に手持ちがありませんので、遠慮させていただきます」

「それなら気にしないでもいいよ。今回のお詫びということで良ければ費用は出すよ?」

「わかりました、素直に受け取らせていただきます。アピに着きましたら案内よろしくお願いします」

「わかった。でも、頑固なジジイだよ。口が悪いから、気を悪くしないでね?」

「はい。おねがいします」


 相談を終えると、リーア達が近づいてきた。


「いーなー、私もほしーい!」

「私も良い弓がほしいところですね」

「え……私も乗らなくてはダメですか……?」


 リーア、真面目だよ……。


「二人は自分で稼いで作りなさい。リーアは何かあれば相談乗るからね、なんでも言ってよ?」

「ありがとうございます!今のところこれというものが思い当たらないので、考えておきますね」


 その鎧はどうなの?と突っ込みたかったが一応やめておく。


「さて、そろそろ野営準備しようか、夜間の歩哨にも影響が出てしまっては本末転倒だ」


 馬車にもどり、まずは武器防具の手入れを行う。リーアを見ると、手加減してもらっていたのだが、刃こぼれが多くできているようで肩をがっくりと落としている。丁寧にやるとなると時間がかかる物なので少し同情する。アピでは訓練用の刃引きをした剣を数本購入しておくべきかな。


 夕食は初日に狩ったグラスボアの後ろ足を丸焼きにし、塩胡椒を振りかけ食した。固いパンと野菜のスープは定番ではあるが、久しぶりに乾燥肉以外を食べることで、皆の気力が戻ってきている。狩って初日でも食べることができるが、数日置いたほうが肉の臭みが取れ、食べやすくなるのだ。初日で食べる場合は、香草と共にスープで煮るか、炒める時に香草をたっぷり使うことにより、臭みを取る方法がある。このメニューも人気は高いが、純粋な肉の味を楽しむためには少し時間がかかるのだ。肉が焼き上がったところで、ようやくリーアが輪に入る。


「お疲れ様。訓練用に刃引きした剣があった方が良さそうだね」

「はい、あるととても助かります。お二方が手加減してくださっているのはわかっていたのですが、剣の側面で受けることが出来ず、刃こぼれが多くなってしまいました」

「それは主にノンナですよ。虚実を少し覚えたからといって、手加減が上手になったとは言えませんからね」

「ごめんなさい……」


 申し訳無さそうにノンナが謝る。突貫大好きいつも全力娘だから、しかたがないのだろう……。


「リーアさんの武器はどこで購入したのですか?」

「これはアイガーの武器屋で樽差しになっていた剣です。元手をかけずに装備をそろえるしか無かったので……」

「そうでしたか。アピに着いたらフミトさんに連れて行ってもらうといいですね」

「え……、やっぱりそこで俺に振るの?」

「当たり前でしょう。いつも3人のドワーフさん達と悪巧みをしているのですから、何かしら便宜を図ってもらえるのではないですか?」


 悪巧み……。今のバスタードソードは5代目であるが、その前にも色々な武器をあの爺さん達と試してきた。鉱石の実験、鉄の鍛錬の実験等。普通のバスタードソードは意外と簡単に曲がってしまったのだ。構造上かと思ったが、結局鉄に不純物等が多かった為に曲がりやすかった。だが、鉄を鍛錬し、不純物をある程度取り除けても、多少曲がりづらくなるだけだった。そこで、俺はとある方法を思い出し、爺さん達と四苦八苦して作り上げたのがこの5代目のバスタードソードだ。折れず曲がらず、良い武器に仕上がった。その鉄でまた変わった武器をお願いしているから、やはり悪巧みといえるのだろう。


「わかったよ。爺さん達に掛けあってみるよ。でも、その場で武器があるかはわからないからね?」

「ありがとうございます!でも、お代が……」

「それも何とかするよ。レンティの事もあるしね」

「私の武器ですね」


 黙々と食べていたレンティが、自分の話になったので加わって来る。


「そうだね。ん?となると手持ちじゃきついかもしれないな……。大丈夫かな……?」

「フェスティナ商会もあることですし、借りても大丈夫なのでは?」

「あ、フェスティナ商会があったか。結構預けてあるから、それを戻せばいいかな」

「預ける?お金をですか?」

「そう。フェスティナ商会にお金を預けて、必要なときだけ戻してもらうの。金貨や銀貨、銅貨って結構重いでしょ?だから必要なだけ持っていて、余剰分は預けておくの」


 この世界はまだ銀行などが無いため、エステファンに提案したら乗ってくれた。だが、都市間の移動があまり多くないのと、富裕層が少ない為にまだ普及は難しいだろうとのことで、大きくは行っていない。後は、大きな商会にやられてしまうと自分達が主導権を握れないと言う理由もあるため、小規模にしている。


「そんなことやっていたんですか。と言っても私達くらいだと預けるほど余裕が無いので利用しないかもしれませんね」

「フェスティナ商会圏内であれば、いつでも戻せるから身軽にはなるよ。スリもいることだしね」

「あまり持てない金貨を財布に入れたまま取られた話もありますからね……。預けるのも良いのかもしれませんね」


 価値としては、

 ・1金貨  = 10小金貨

 ・1小金貨 = 4銀貨

 ・1銀貨  = 5小銀貨

 ・1小銀貨 = 10銅貨

 ・1銅貨  = 1小銅貨

1小銀貨で食事2回か、食事1回と酒2杯飲めるくらいが相場だ。200回以上も飲み食いできる金貨を取られれば流石に話題になるだろう。ちなみに最下級の宿を素泊まりするのでは銅貨5枚位の物価だ。


「小金貨辺りからでも良いと思うよ。無理して金貨になるまでと言って持ってても重いだけだしね」

「そうですね、考えてみます」

「ということで、二人は気にしないでいいからね」

「はい!ありがとうございます」

「お言葉に甘えさせてもらいます」


 なんか出費がどんどん増えていくようだが、折角知りあった良い子達だ、生き残って欲しい。もし返してもらえるのなら、成長した姿を見せてから返してほしい。その前に結婚しちゃう人もいるけどね……。光源氏計画とかでは無いよ?。違うんだよ?


 食事を終え、夜間歩哨の時間になる。結局1日を除き、全日程ローテーションが変わっていない。つまり、2番目だ。一人で歩哨をやるのは流石に飽きてきた。慣れて入るが、飽きは来る。日中の訓練を思い出し、木刀でも作ろうかと考える。他にすることがないので、ジルフ爺さんの馬車へと向かい硬そうなそして、太い薪を探し持ってくる。密度の高い木ではないため、すぐ壊れてしまうかと思うが、この旅の間は持つだろう。最低3本は作らないとならない。樹の幹を切って作った薪があったのでそれを利用して作ることにする。少し離れたところで斧で4つに割る。それを監視する位置まで持って戻り、一本ずつナイフで形を整えていく。重量バランス等は正直今は考えられない。剣を壊さないためという程度の理由なので、そこは勘弁してもらおう。ヤスリが無いが、手で持つ部分は素手で確認しながら丁寧に削り、仕上げる。3本仕上げた後で気づいたのだが、何を思ったのか両刃の木刀ではなく、片刃の木刀、いわゆる日本刀式木刀を作ってしまった。今更やり直す時間もないので、4つ目に取り掛かる。この一本だけは両刃の木刀に仕上げた。まあ、サーベルがこの世界にあったので、誤魔化すとしよう。


 作り終え、木刀を馬車に置き、削りかすを火に焚べたくらいで交代の時間となった。ノンナとナイアを起こし、寝ることにする。思ったより順調に進み、何事もなければいいなと思いつつ意識を手放す。



本来かなり先まで進んでいるはずなのですが、世界観を折入れていくとどうしても話が膨らんでしまいます。説明文が無いと全く意味がわからないことになるので、スタンスは変えられそうにありません。言葉って難しいですね。


2016/01/04 三点リーダ修正

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