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掌編 『ある男の一生』

作者: 左右田 卡太

 少年は小学校を卒業して、中学生になった時に思いました。

「こんなに宿題も多くて勉強も難しいなんて。ああ、小学生のころは良かったなー」


 文句を言いながらも少年は勉強して、親に言われるがままに進学校に入学しました。

「せっかく受験が終わったっていうのに、どうして毎日、点数を競い合わなきゃいけないのさ。ああ、中学生の頃は良かったなぁ」


 それでも青年になった彼は競争を勝ち抜き、見事に有名大学に合格することが出来ました。

「僕はどんな道に進むべきなんだろうか。将来のことを考えると不安で仕方がないよ……。ああ、高校生の頃は良かったな……」


 試行錯誤の末に自分の『やりたいこと』を見つけた彼は、大手の企業へ就職しました。

「毎日の仕事がこんなに大変だなんて! ああ! 学生時代はなんて良かったんだ!」


 何十年も働きすぎて、いつの間にか老人です。多くの部下に見送られながら退社する時、笑みと涙と、言葉が零れました

「まだまだ現役だと言い張りたいものだが、もう身体がついて行かなくなってしまったよ。……ああ、若い頃は良かった」


 家族、友人、部下や後輩。多くの人々に囲まれて、男が天国へ逝こうとした時。彼はみんなの姿を見下ろして、こう呟きました。


「ああ、良い人生だった」



 

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