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幼い頃から今までずっと一緒で、私のことを引っ張ってくれたり面倒を見てくれた人。
何事にも前向きで、引っ込み思案の私とは正反対の性格。
だから憧れていた。でも……。
何時の頃からかな、こんな感情を抱くようになったのは……。
放課後の教室。クラスメートの喧騒を耳にしながら帰り支度をする。
元々人混みの嫌いな私は、そのノイズに疲れを感じる。
「久美、そろそろ帰るよ。……って、まだ準備してないの? ホントに遅いんだから」
真紀はそう言いながら少し呆れ顔を見せている。
「ごめんなさい……」
その疲れから支度が遅くなり、帰りの時はいつも待たせている。少しだけ罪悪感を感じる。
それを感じたのか、それとも顔に出てしまったっていたのか、真紀は「あっ」と小さく発してから、
「ゴメン、ゴメン。ちょっと言い過ぎたよ」
と、笑顔を見せる。
真紀に悪気が無いことは分かっている。結構ストレートな物言いだけど、嫌みは感じない。
そういうとこも正直羨ましかった。
「それじゃ、帰ろっか」
私の帰り支度が終わったことを確認した真紀は私の手を引く。
トクン、と心臓が打つ。
いつか私がこの手を引いていくことが出来るのだろうか……。
無理……。私が真紀の手を引くなんて……。
強気で、いつも私の前を進んでいる真紀の手を引くなんて……。
……でも、もしかして、もしかしたら、出来るかも。
私が真紀よりも上の立場になれば。
なるためには……。
一ヵ月前の出来事。これが決定的だった。
元々、憧れを持っていた。
できることなら真紀の立ち位置になりたいと思っていた。
でもそれは出来ない。元々アドバンテージが付きすぎている。私ではそこに辿り着けない。
辿り着けないのだったら、真紀を私の立ち位置より下にすればいい。
そう、それしかない。
そのためには、真紀を支えている物を崩して上げればいい。一つずつ、ゆっくりと……。
元々一緒にいた時間が長いから、容易にそれは把握出来た。
……さて、手始めになにを崩して上げようかな?
まずはあなたが好意を寄せているあの人との関係からかな?
私にとって、あの人は目障りだし、真紀は私を、私だけを見てくれないといけないし、私をもっと好きになって貰わないと駄目だから。
そうね。そうと決まれば、早速始めましょう。
……ねぇ真紀。弱音を聞かせて……ね。