第一話 このクラス編成した奴、後で屋上来い
何故かこれが一番最初にできたため、投稿。設定とかよく考えてないから名前とか適当になってる……
どうも、元男です。名前を細川春菜と言います。何の因果か、前世の記憶なんて持っています。
子どもの頃に段々と前の記憶を思い出していき、小学校に入る前には完全に思い出しました。個人的に女となって一番苦労したことは、スカートですね。ひらひらしてるし、スースーするし、違和感だらけでした。中学になって強制的にスカートを穿く日々が始まると、せめてもの抵抗として下にスパッツ穿いています。高校に上がった今では、慣れてきて違和感はなくなりましたが、進んで穿こうとは思いません。
あと、排泄関係は結構苦労しました。正直な話、小学校低学年までおねしょしていました。男と女では我慢の仕方や限界量とか違い過ぎたので……すり合わせが大変でした……流石に学校ではなかったのが幸いですね。もししようものならどうなっていたのでしょうか……想像したくないです……
それ以外はごく普通でした。仕事をして、休日にはゆっくりしている父と、専業主婦として毎日家のことをしている母と、頭が良くてしっかり者の長男の兄その一と、チャラ男のようでまともな次男の兄その二と、腕白でイタズラ小僧の三男の弟と、私の六人家族です。大家族ですね。親が居るというのはとてもありがたいことなんだと実感します。
学校生活は、ひたすら本ばかり読んでいました。身体を動かしたりするのも好きなんですが、前の生活では本なんてまともに読んだのは三、四冊くらい。幼少のころに絵本を見て、とても面白いものだという事が分かってからは、目に付いた本を片っ端から読んでいます。家にある本はもちろん、学校や市立の図書館の本まで全部読んでしまうほどの読書狂となっていました。
これだけ読んでいると目が悪くなりそうなものですが、視力は両方とも2.0です。なんででしょうかね……目に悪いこと結構しているはずなんですが……まぁ、メガネとか付ける必要がないからいいんですけどね。これだけ本読んでて、メガネまで付けていたら、あだ名が『文学少女』確定ですよ。地味に嫌です。
あと、どんなに食べても太らない体質なようです。兄二人や弟が大食いの影響で、私も女性にしては食べるほうなのですが、あまり体重は変わりません。ただ……胸にまで脂肪が付かないようです。高校生だというのに、三歳下の弟から「俺のほうが胸あるんじゃねぇの?」と言われるくらいのナイチチです。
とはいえ、ブラジャーなんて付けなくて済むと考えれば利点ではあります。前世の『俺』はトランスク派だったで、女性物の下着というものはどうにもピッチリしていて変な感じがしますし。夏とか運動後とかは汗に気をつけないと汗疹ができますから大変です。
それと願いで書いた月物ですが、これは要望通りとなっていました。友だちの話を聞く限り、私のはそうとう軽いらしいです。重い人は薬を飲まないといけないくらいなのに対して、私は軽い腹痛くらいで済んでいます。友だちからは羨ましいと言われますが、個人的には複雑です……男としての知識があるからでしょうねコレは……
さてさて、いい加減状況説明という名の現実逃避から戻るとしましょう……こんなどっかのネット小説みたいな体験をしている私が言うのもなんですか、大分非常識な状況です……何と言うか……私だけ浮いているような気がします。
というのも、私が通う事になった東道堂高校は、進学校に分類される高校です。前世の『俺』は奨学金や推薦で学費を減らしていかないといけない状況だったため、学力は割といいほうです。ゆえに、進学校でも問題なく学校生活が送れますし、家から結構近いというものポイントです。
しかし、私の一年五組は……どういう訳か、男女ともに美系ばっかです……どんな作意が働いてやがるんでしょうか……この組だけ顔の造形で選んだとでも?私なんてアレですよ?十人に生きたら二、三人くらいが「あー……うん、可愛いんじゃない?」くらいの地味子ちゃんですよ?
こうなってくると、私がイロモノみたいじゃないですか……どうすんでかこの状況……周りの人たちがチラチラ見ているのは多分勘違いじゃないですよ?本当に何なんですかこの状況……あぁ、ちなみに入学式はもう終わっています。それを見る限りでは、全体が美系と言う訳ではないです。
とにかく今は本でも読みながら心を落ち着けましょう……今読んでいる本は、前世でもお世話になった本ですから、改めて読み直すにはもってこいのものです。正直あまり内容が頭に入ってきませんが、それでもこの場をやり過ごせれば……
「ねぇねぇ、何読んでるの?」
「はい?っっ!?」
そう考えていた私に、突然声が掛けられた。目線を本から声のほうに向けて見ると、とても可愛らしい女の子の顔がドアップで眼前にあったのだ。悲鳴を上げなかった私を褒めてほしい。
「読んでる本ですか?『葉隠』ですけど?」
「はが……くれ?どんな本?」
明るくて元気なショートカットの茶髪。なんとなくひまわりのような印象を受ける女の子だ。よく通る鈴のような声で、更に質問してくる。
「一言でいえば、礼儀作法のマニュアル本ですかね?原本は江戸時代中期のある武家の人が書いたものなんですが」
「ほうほう……おもしろい?」
興味津々と言う感じで訪ねてくる。これに対して私の返答は決まっている。
「えぇ、少なくとも私にとっては」
一度死んだこの身。故に、『生』というものがより実感できる。大事でも小事でも、確固たる信念のもとに行動すれば、選択の際に自分の理想を貫けるかもしれない。いずれ来る、逃れられぬ『死』。それを覚悟しながら、精進して生きる。
今の自分が、本当に精進して生きているかは分からないが……そうありたいとは思う。そうなるように行動するように心がけている。
「そっか……だから真剣に読んでたんだね。私はあんまり本を読まないからさー」
そう言ってニッコリほほ笑む彼女。なんだかほんわかする娘だな。私の周りにはいないタイプの人間だ。しかし、何故話しかけてきたのだろう?
「でも、なんでそんなことを?」
「うーん……ちょっと気になったからかな?カバーしてるし、貴女は真剣に読んでいたし」
なるほど……確かにカバーが付いている本って気になるよね。ある意味目立つ私が読んでいるなら尚更。それでも初対面の私に対して、わざわざ読んでいる本の内容や面白いかどうかなんて聞かないと思うのだが……それはこの娘の人柄なのだろう。
「よーし、席に付けー」
そうして、担任の先生と思われる男性が教室に入ってきた。私の席は後ろほうで、彼女はその前だったらしく、話を中断して席に着いた。
そうして全員が着席したことを確認して、口を開く先生。
「新入生の諸君、入学おめでとう。今日から一年間、君たちの担任を務める板倉誠一だ。よろしく頼む」
ガッチリした体育会系のスーツ姿。正直ジャージのほうが似合うと思う、と思っているのは私だけではないはすだ。短髪の黒髪で、一応整えていますよみたいな感じの髪型をしている。
「それじゃ、これからの説明していくぞ。まず――――」
説明と言っても、オリエンテーションとか測定とか、入学してからまずやることの一覧だ。説明なんてするまでもなく、黒板に日程を書いているだけで終わっている。まぁ、一応メモは取っておこう。
「では最後に、簡単な自己紹介をしてもらう。出席番号順でどうぞ」
これも定番な自己紹介。誰が誰なんて一度に覚えられないから、とりあえず、前席の娘の名前だけでも覚えて帰ろう。そう考えながら聞き流して行って、ついに前のあの娘が立つ。
「日野朱里です。陸上部に入ろうと思っています。一年間よろしくお願いします」
日野さんか……よし、多分覚えた。そうして次は私の番か。自己紹介なんて気をへつらう必要はない。当たり障りのないものがベストだろう。そう思いながら席を立ったのはいいのだが……何故か目線がこっちを向いている……いや、当たり前のことなのだろうけど、私の時だけ集中し過ぎてはないだろうか?
「細川春菜です。趣味は読書と料理です。一年間よろしくお願いします」
元々自分で作るしかなく必要に駆られたスキルであったが、女性であるこの身では、趣味としても機能している。一般的な料理なら、レシピを見なくても作れるくらいの腕だ。家族や友だちにも評判で、家では母さんと交代制で作っている。
それから自己紹介も終わり、下校の時間となった。荷物は少ないため、すぐにでも帰れるのだが、せっかく話をした娘が目の前にいるのだ。もっと話したいと思うのが人情というものだろう。
「細川春奈さんっていうんだね。自己紹介でも言ったけど、日野朱里です!よろしくね!」
「はい、日野さん。よろしくお願いします」
そう思っていたら向こうから話しかけてくれた。やっぱり明るくていい娘だなと思う。『名は体を表す』とは、良く言ったものだ。
「うーん……細川さんなら朱里でいいよ?私のことも呼び捨てでいいからさ」
いきなりフレンドリーな態度に戸惑ってしまう私。流石に有ったばかりの人を呼び捨てで呼ぶのには抵抗がある……友だちも少なからずいるのだが、クラスが違ったり、学校自体が違っていたりするため、今は居ないが、その友だちも呼び捨てになるまで時間がかかったほどだ。
でもまぁ……せっかく友だち第一号ができそうなのだ。私にはあまりない積極性というものを手に入れるいい機会だと思えば……
「では、朱里さんで……」
「むー……さんはいらないよー」
ヘタレた……そして却下された……ならせめて、
「じゃあ……朱里ちゃんで……」
「ちゃん付けかーなら私は『春っち』と呼ぼう!」
・・・。春っち……とな?そんな呼び方をされるのは初めてですね……良いかもしれません。
「では、改めてよろしくお願いますね、朱里ちゃん」
「はいなーよろしく春っち」
そう言って朗らかに笑う朱里ちゃん。これだけ笑顔の似合う女の子というのも珍しいと思う。そう考えながら昇降口まで会話しつつ、メルアド交換しつつ、お別れとなった。
学校生活一日目にして、アドレス交換とは幸先がいいと思う。気になることは多少あるが、これからの高校生活が楽しみにしていこう。そう考えながら、車で待っているであろう母さんの元に向かうのだった。
という訳で、美系ばかりのクラスに普通の女の子が一人です。でも中身は普通ではありません。そのあたりの設定も、しっかりしてから次回を投稿しますので、遅くなるかと
ご意見、ご感想をお待ちしております