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才色兼備な変態さんシリーズ

紗姫とリリナと二人鍋

作者: 矢枝真稀

「才色兼備な~」最後の番外編です。

 最近、アタシの周りは「恋人が出来ました!」だの「結婚した!」だのと、色恋沙汰のめでたい話が多い。中でもプライベートじゃ一番世話になってる相澤由希(あいざわよしき)にも、綾館美雪(あやたてみゆき)っつーちょっとばかし生意気だけど、一途に相澤に想いを貫き通した恋人が出来たし、その相澤の周りも一部を除いて恋人同士になった連中が……。

 ってーわけで、仕事が終わったアタシは今、アパートでさび~しく鍋をつついてるわけよ。


「あら、(わたくし)がいますのに……」

「……さりげなく(アタシ)の心の中を読んでんじゃねぇよ」


 まぁ独りで……ってわけじゃない。近頃はよく美雪の姉(書類上)のリリナがアタシの部屋にやって来る。主に飯を作りに。んだから、別段さびしいってわけじゃねぇし、リリナとは歳も近……いと思うので、それなりに話も合う。


「私の歳は秘密ですわ。うふふ♪」

「いや、だから読心すんな」


 ――で、この通りリリナは変わり者だ。アタシの周りじゃ相澤や舞(相澤のクラスメイト)に次ぐ常識があるくせに、美雪に常識とは無縁の悪知恵を吹き込んだり、常にメイド服だったり、世界最大の市場っていわれてる築地市場の常連らしいし……読心術っつー規格外な能力持ってるし、外人だし。


「外人は偏見ですわ!見た目はアレでも心は立派な日本人です!それに、読心は普通ではありませんの?」

「……普通じゃねえよ。それに自分で「見た目はアレ」とか言ってるじゃねえか」


ほら、変わり者だろ。


「つか、いいのか?家の事とか……」


リリナは綾館美雪の姉だが、養女だ。それに本人は綾館家の侍従(メイド)長だとかで、主に家(綾館家)の家事一切を担っているんだとか。そんなメイドが仕事ほったらかしてアタシん部屋で飯(鍋)作ってるとか、下の(もん)に示しがつかねぇんじゃ……。


「あら、私はきちんと書き置きしてきましたわ。「探さないでください」と」

大事(おおごと)になってんじゃねぇのか!?」

「大丈夫ですわ!いつもの事ですから。今ごろ血眼になって探しているとは思いますが」

「今すぐ帰れ!」

「まぁまぁ!そろそろ……」


Pirrrrr!!Pirrrrr!!


ピッ!


「もしもし美雪?えぇ、紗姫の所にいますわ。えぇ、えぇ……はい、よろしく」


ピッ!


「美雪か?」

「えぇ。案の定、美雪のところにいるのではないかと、執事をはじめとした捜索部隊がユキの家を襲げ……訪れたそうですので、取り計らってもらいましたわ」

「……お前、今、襲撃って言おうとしなかったか?」

「あら、そんなこと言いませんわ……おほほ♪」


 ダメだこりゃ。常識人ってのもアタシの勘違いだったみてぇだ。つか、災難だな相澤…………あれ?


「もしかして、美雪と相澤が二人っきりだってわかってて、リリナが居る可能性の高い相澤ん家を襲撃させるよう仕向けたんじゃ――」

「あら、単なる悪戯(いたずら)ですわ♪」


 図星かよ!そして腹黒っ!!……相澤はいつものことだとして、今回ばかりは美雪が可哀相(かわいそう)だな。相澤は受験生で勉強に手が抜けないから、美雪も最近は遠慮してるって言ってたのに……せっかく二人っきりの時間を過ごしてるかと思いきや、襲撃されて―――


「独り者のささやかな悪戯ですわ♪」

「うわぁ性格悪……って、やっぱリリナも人並みに恋人が欲しいのか?」

「当たり前ですわ。私だって女ですのよ!紗姫だって、恋人の10や20くらい欲しいとは思わないのですか?」

「そんないらねぇ!つか、なんだ10や20って!?」

「え?普通ではありませんか??」

「リリナの“普通”がわからねぇ!!」


 発想が女王様じゃねぇか!……いや、女王様がそんなのかはアタシもわかんねぇけど……


「まぁ冗談はともかくとして」

「冗談かよ!?」

「まだまだですわね紗姫」

「なんだそのドヤ顔は……」


何このやり取り。あ~……なんか疲れる。リリナがこんな性格だと知っちゃいるけど、やっぱ疲れるな……主に精神が。


「ともかく、恋人が欲しいと思うのは女性として……いえ、人間として当然のことだと思いませんか?」

「……否定はしない」

「とはいえ、恋人が欲しいという気持ちはありますが、こうして紗姫とお酒を酌み交わしながら可愛い妹(美雪)をからかうのも、一つの楽しみでもあるのですよ。出逢いというのは人それぞれだと聞きますし、気長に待つのもまた、楽しくもあるのです。私は意外と、現状に満足してますから」

「単にぐーたらなだけじゃねぇの?」


 ほんっとにつかみどころがねぇ性格してるよコイツ(リリナ)は。さらっとSな発言してるし。……まぁアタシも(リリナ)の事をとやかく言うつもりはねぇけど。そりゃアタシだって恋人が欲しいと思うことはあるけど、焦りを感じることもなければ、こうしてリリナと酒を酌み交わす現状にアタシも満足しているわけで……。


「まぁいずれ、互いに恋人が出来る日も来るんだろうけどさ……でも――」

「でも?」

「……アタシも一緒さ。今の現状に満足してる……まぁ女二人ってのが味気ないかもしんねぇけど、意外と楽しいもんだよ。リリナとこうして鍋つついてるのは」

「……よく照れも無く言えますね、そんなこと」

「真顔で言うなぁ!!」


自分で言っててクセぇ台詞だと思ったよドチクショー!!


「……でも、嬉しいものですね。紗姫が男だったら良かったのに」

「えぇ~……アタシこんな嫁さんいらねぇ。ってか、真剣(マジ)な顔で言うな」


まぁリリナのやってることはほとんど“通い妻”だよな。飯作りに来たり、部屋の掃除を(勝手に)してくれたり……。


「でも“通い妻”のポジションじゃありませんか?私って」

「自分で言うな、心を読むな」

「だから紗姫……性別から、やり直しません?」

「だから真剣(マジ)な顔で言うなやぁぁぁぁああ!!!!」





「まぁ紗姫をイジめるのはこれくらいにして……」

「……いや、かなり本気だっただろ」

「おほほ♪」


ダメだ……リリナのSっぷりはアタシでも対応しきれねぇ。とかなんとか言いつつ、二人で食ってた鍋の具は空っぽに。残ってるのは汁くらいなもんだが――


「やはり、お鍋の締めくくりは“おやじ”でしょう!」

「“おじや”な。おっさんから出た汁なんて想像したくもねぇ」


 リリナは酒にだいぶ()まれてるようで、さっきからちょこちょこ親父ギャグを口にする。そこらの酔っ払いと変わらねえ。しかも、誰もが振り返らんばかりの美人が親父ギャグって……ある意味ギャップが激しい。


「ではでは~!本日は最高級ササニシキを炊きましたので、是非ともご賞味ください♪ちなみに卵は○○養鶏場の有精卵使用ですわ!」

「相変わらず、食べ物に金の糸目はつけねぇのな。まぁそのおかげでアタシも美味い物にありつけてるわけだけど」


しかも今日の鍋はカニ鍋だった。生きたまま空輸された毛ガニの。んだからカニの身に舌鼓を打ったし、カニの出汁が利いてる“おじや”がこれまた美味い!素材の良さもさることながら、作った本人(リリナ)の腕はまさにプロ級だ。さすがは他の料理人が一目置くほどの存在だ!←美雪が言ってた


「やっぱ美味いなぁ……!」

「お気に召していただけたようでなによりです♪」

「これで気にいらねぇ奴がいるなら、そりゃよほどの味覚オンチか、カニが嫌いな奴だろ」


 あっという間に鍋は空っぽだ。まぁ美味いもんは幾らでも腹ん中に入っちまうけど……さすがに食べ過ぎたな。体重が心配だ。


「別に紗姫は太ってませんわよ。スタイルも良いですし!」

「何食っても太らねぇ奴に言われたくねぇそして読心すんな!」


 アタシだって苦労してんだよ。美味いもんは幾らでも入ってしまうからなぁ……1週間前に体重計に乗って……青ざめたし。


「この前なんて、職場の先輩に言われたよ……「丸くなったんじゃないか?」って」


問答無用でぶっ飛ばしたけどな。女性に対して何というデリカシーのない言葉だ!って言って。さすがに後で謝ったけど。


「まぁ!なんというデリカシーの無い(かた)でしょう!」

「……(原因はリリナの作る飯なんだけどな)」


とはさすがに言えない。コイツは善意でやってくれてる事だしな、アタシはその善意を甘んじて受け入れてるわけだし。まぁ毎度毎度、申し訳ないとは思うんだけど……。


「……あ!」

「どうしました?」


 そういや明日って、待ってましたの給料日じゃねぇか!!


「リリナ、明日ってヒマ?」

「明日ですか?明日は午前中に仕事を終えたら、午後には仕事帰りの紗姫を襲げ……お迎えに行こうかと思ってました。何せ明日は土曜日ですし、たまには外でランチでも、なんて―――」

「また襲撃って言いかけたな!言っただろ!言ったよな!?」

「ほほほ♪」

「「ほほほ♪」じゃねぇ!!……ったく、まぁいい。明日はアタシも昼までだし、せっかくだから遊びに行こうぜ!考えてみりゃ、リリナとはアタシん部屋で一緒に飯食って喋るってだけだったし、たまには外に出てゲーセン寄ったり、服とか買ったりするのも悪くはねぇだろ?」

「あら、紗姫からデートのお誘いなんて……照れますわ♪その後はホテルで……イヤん♪♪」

「色々と語弊があるからやめろ。そしてクネクネすんな!ホテルとか言うな!行くわけねぇだろ!!」


ダメだ……酔ったリリナは普段の倍くらい性質が悪い!


「ふふ♪楽しみにしてますわ♪♪……って、あ、あら?」


ドサッ……


「お、おい!?」


突然リリナがひざから崩れ落ちたので、アタシはリリナを抱きかかえたんだけど――


「……くぅ~……すぅ~………」

「……寝てやがる……ったく」


はぁ……心配して損したぜ……ったく。


 よほど機嫌が良かったのか……なんともまぁ可愛い寝顔だ。並みの男ならイチコロだろ……女のアタシだって、思わずドキッ!っとしたじゃねぇか。……ま、アタシは“そっち”の気は無いけど。ホントだぞ!……って、誰に言い訳してんだか。あ~アタシもだいぶ酔ってるみてぇだ。早く寝よ。



























ってのが、最近のアタシの日常だ。んだから、翌日のアタシとリリナが出掛ける時のことは、想像に任せるよ。きっと想像の斜め上の出来事が待ってるんだろうけど。



さぁって、夜も遅いしアタシも寝るよ。んじゃ、このへんで!

紗姫「なぁ、たしか真稀(作者)が言ってたよな。最後はアタシがメインだって……」


リリナ「ですからメインじゃありませんか。視点も紗姫のみでしたし」


紗姫「えぇ~……リリナに弄られてただけじゃん、アタシ」


リリナ「紗姫だけじゃ間が持たないと思ったんじゃありませんの?」


紗姫「それ、ガチでヘコむ……」


リリナ「しかも色恋話は皆無と……でも、私とのその後は……キャッ♪」


紗姫「だから語弊があるような言い方すんなあぁぁぁああ!!!!」




ってわけで、真稀(作者)です。約10ヶ月ぶりの「才色兼備な~」の最後の番外編を執筆しました。最後を締めくくったのは、やはりサブキャラとして登場の多かったリリナと獅子神紗姫でしたが、この作品を執筆するにあたって感じたのは――


「この二人に見合う男キャラが全く思い浮かばない!」


でした。二人とも個性が強すぎましたしね。下手に恋愛ものを書けば、完全に男キャラを食っちまう(もちろん個性の話)可能性が極めて高かったので、今回のような設定で執筆した次第です。


 まぁ最後の締めとしてはいささか寂しいかも知れませんが、今の私が書ける精一杯の文章力だとご了承ください。


では~♪

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