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英雄の遺産  作者: りょう
序章
1/6

第0話

初の投稿ですので、拙い部分が多々あるかと思われます。取り敢えずプロローグですので、短めです。

 今より遥か昔の龍王歴52年。

 世界は魔物の侵攻により滅びの危機に瀕していた。魔物は元来統率性など無く、それぞれの群れが思い思いに行動する種族である。人間よりも数段優れた身体能力や凶暴性を秘めてはいるが、種の存続の危機に追い込まれるほど存在ではない。


 しかし、どこからともなく現れた“魔王”と呼ばれる存在が世界中の魔物を引き連れ、一斉蜂起したのだ。

 彼、或いは彼女、否、そもそも性別があるのかすら不明なその者は、一体何の目的があって蜂起したのか戦争が終わってから途方もない年月が経った今では、資料が殆ど失われており誰にも分からない。

 ただただ彼等魔物は、数多くの人間や亜人達を虐殺し、凌辱の限りを尽くした。魔物との戦争は100年もの永きに渡り続き、人々の希望も費えようとしていた。


 そんなとき、英雄が現れたのだ。




 “勇者”アルトリウス。


 “剣王”ジナ。


 “魔女”カタリナ。


 “聖女”マリアンヌ。


 “魔人”ベリアル。




 後に“五大英雄”と呼ばれる彼等は破竹の勢いで魔物の軍勢を撃破し、ついには魔王すら撃退してしまったとのことだ。

 魔王との戦いは一国が焦土と化してしまうほど激しい戦いだったのではないかと言われ、現在でもその残滓と思われる巨大なクレーターが残されている。

 平和が訪れた世界での彼等のその後は定かではなく、一国の王となった者、放浪の旅に出た者、ごく普通の家庭を築いた者、行方知れずの者など様々であった。


 その後現在に至るまでの約900年間、相変わらず魔物の驚異に晒されながらも、比較的平和な世界だったが、今異変が起きようとしていた。



















 「五大英雄、ねぇ……」



 手に持った分厚い本を閉じながら、ダレンバートは呟いた。

 ここは王都シュレイヤの王城内にある図書館。ダレンバートが手に持っているのは五大英雄と魔王との戦いが事細かに書かれた、鈍器と見間違えそうな本だ。

 内容はある程度学のある国民であれば誰もが読んだことのある絵本を、無駄に難しく、細かく書いただけのものである。

 細かくとは言っても、1000年も前の出来事であり、全てが学者達の都合の良い想像を元に書かれたトンデモ本だ。



 (実際には名前も合ってるか怪しいし、そもそも5人いたかも……いや、戦争があったのかも微妙なところだ)



 この国の騎士団の実力者であるダレンバートは、これまで数々の魔物との戦いを潜り抜けてきたが、正直言って魔物が文明を崩壊させる寸前まで猛威を振るったとは到底思えなかった。

 勿論、魔物は依然驚異であるし、放置すれば村や町が魔物に壊滅させられる危険性はある。しかしながら、騎士団や“魔法士”がいれば十分に対応できるレベルの驚異だ。ここ100年間で最大の犠牲は町一つ壊滅というものであるが、それも大きな町ではなかった。

 もしかしたらこの広い世界のどこかに強大で凶暴な魔物がいるのかもしれないが、いるのであればとっくに姿を現しているはずだ。


 ダレンバートは溜息を吐きつつ、本を所定の位置に戻した。

 と、同時に、図書館の扉を開ける者がいた。



 「ダレン、こんなところにいたのか」



 ダレンバートのことを気安くダレンと呼ぶのは、この国の第三王子ジークマイヤー・アークスだ。

 晴れ渡った天空を思わせる碧眼に、妖精が具現化して纏わりついているのではと思われる金色の髪。そしてあらゆる女性を惹き付ける甘いマスクを、その無駄に整った顔に貼り付けている。

 ダレンバートも整った顔立ちではあるが、まさに美男子であるジークマイヤーとは違い、どちらかといえば“男らしい”と表現される、少々粗野な顔立ちだ。



 「ジークか。お前公務はどうしたんだよ。こんなところで油売ってて良いのか?」



 王族に対して不敬罪とも取られかねない言動だが、二人は物心着く頃から共に過ごした親友ということもあり、プライベート限定で気さくに話している。最も、取り巻きの貴族の多くは、「下級貴族のくせにけしからん」と鼻を荒くしているが。



 「休憩休憩。ずっと執務室に詰め込まれてたんじゃ適わないよ。そんなことよりも、親友の様子が心配でね。もうすぐ“儀式”だろう?」



 とても心配しているとは思えない胡散臭い笑顔で宣う。それを見てダレンバートの顔が不快気に歪んだ。



 「そんな埃と煤だらけの行事なんざ、とっとと廃止にすれば良いんだよ」



 「何言ってるのさ。大事な行事だよ? 五大英雄から遺産をもらうという、ね」



 ジークマイヤーの言う儀式とは、彼の言う通り五大英雄から遺産を継承するというものだ。ただ内容が面倒なことに、五大英雄の一人である魔女カタリナが住んでいたと言われている遺跡に入り、奥からカタリナの遺産の一部を持ってくるというものだ。

 遺産にはものにもよるが特別な力が宿っており、所有者にあらゆる恩恵が与えられるのだという。

 ただ、遺産を継承するというよりは、完全に墓荒らしの類の所業である。



 「いらねーよ、んなもん。俺には剣と自分の魔法があれば十分っだっつーの」



 「まーまー、しょうがないでしょ選ばれちゃったんだから」



 この儀式は50年周期で行われており、国内でもトップクラスの魔法士にのみ許された、非常に栄誉のある儀式である。それをダレンバートは要らないと言ってのけた。他の騎士からすれば考えられない冒涜である。



 「お前が推薦したから選ばれたんだろーが!! しかも反対押し切って無理矢理押し込みやがって!!」



 今回の儀式には武に長けていると言われている第二王子か、果てまた将来有望なアークス王国騎士団第1師団団長が選ばれるかと思われていた。ダレンバート自信もそう思っていたし、そうあるべきだと考えていた。

 しかし、そろそろどちらかに決めようか、というときにジークマイヤーがダレンバートを推薦、ごり押ししてきたのである。それを聞いた第二王子は辞退し、同じく第1師団団長も候補から外れることとなった。

 ダレンバートはそんなこと望んでもいなかったし、頼んでもいない。ある日ジークマイヤーが「お前、遺産の継承者で決定だから」と告げてきたのは、まさに青天の霹靂であった。



 「あれ? そうだっけ? まぁ近隣諸国への牽制も含んでるから、ま、頑張ってよ」



 騎士団の面々なら竦み上がる怒鳴り声も、ジークマイヤーには全く効かなかったようで、涼しい顔をして図書館を出て行った。ジークマイヤーが出て行った後も、図書館の出入り口を親の仇であるかのように睨み付けていたダレンバートだったが、やがて諦めて深い溜息を吐き、すごすごと自分の兵舎へと戻っていった。


次回更新は明後日以降。

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