表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人を喰らう、味方も喰らう。両方やらなくちゃならないのが屍人喰いの辛いところだね  作者: 柿の種
第1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/11

Episode9 - 初見の味は


「君の味を確かめさせてくれるかい!」

「ガッ、ァ!?」


 伝承に登場する吸血鬼の様に。

 しかしながら、野生の肉食獣が獲物へとかぶりつく様に。

 私はその無防備な首元へと歯を立て、筋肉質な硬い肉を噛み千切り飲み込んでいく。

 瞬間、私の身体の内側……主に、胃袋がある辺りから熱い何かが全身を駆け巡るような感覚が湧き上がる。


『【捕食】が発動しました。バフ『全ステータス強化』が付与されました』

「良いじゃん良いじゃんッ!」


 口の中に広がる血の味と、ゴブリンと似通った臭い。

 しかしながら、肉の味は少し違う。オーガの方が臭みの奥底に微かな旨味が存在しているのだ。

 生でなければ幾らでも活かす事が出来たであろうその旨味。しかしながら、今はそれをゆっくりと探す様に味わう時間はない。

……格上相手だから足りてないステータスを補う様にバフを得たって感じかな!

 オーガの動きは迅速だった。

 首元の肉を噛み千切り、次は肩の肉を食らおうとしている私に対し、捕まえてやろうと両手をこちらへと向けてきたのだ。

 ただの野性動物、ゴブリンなどの知能が低い相手ならばその対処でも良かっただろう。しかしながら、こちらは外側がモンスターでも……中身は人。


「おやつの提供、ありがとう!」

「ッ!ギギィ!」

「んぐ、こっちはこっちで軟骨とか骨の食感が良いアクセントになるねェ」


 こちらへと迫ってきた手を、その指をそれぞれ掴まれない様に2本ずつ。計4本、口の中へと含み噛み千切る。

 普通のモンスターならばこんな芸当は出来ていないだろう。幾ら全ステータスが強化されたとしてもだ。

 だが、私には【噛みつき】という、相手を食らう為のスキルがある。

 硬い肉だろうと、骨だろうと、食らう為のハードルを著しく下げるスキルを持っている。


「あはッ、捨てたね?私を捕まえる為にソレ(棍棒)を捨てたんだよね?!」


 私はオーガの背中から、わざと真正面へと降り立つと。

 すぐに足元へと落ちていた、巨大な棍棒の柄を握り持ち上げた。

 手にはずしりと今まで持ったどんなモノよりも重い感覚が伝わってくるものの……【筋力増加】とバフによって無理矢理に振りかぶって。


「ガ、ガぁアアアアアッ!」

「遅いよ、もう。私はもう君の格下ってワケじゃないからさ」


 良い様に食われ、あまつさえ自身の得物までもを盗られたオーガはここに来て慌てた様に全身でこちらへと突っ込んでこようとする。

 小型のモンスターならば、オーガの巨大で筋肉質な身体でぶつかられただけでも致命傷になるだろう。

 でも、私にとっては。今の強化された私には、まるでバッティングセンターで投げられたボールのようにしか見えていない。

 浅く息を吐き、こちらへと突っ込んできたオーガにタイミングを合わせて巨大な棍棒を振り抜けば、


「ホームラーン!景品貰えると嬉しいなぁ!」

「~~~ッ!!!」


 無防備なオーガの胴体へと綺麗に命中し、その身体を通路の壁まで弾き飛ばした。

 だがそれで終わりにはしない。壁に激突したオーガが身体を起こそうとしているのが見えたからだ。

 重たい棍棒を引きずりながら、下から掬い上げる様に振り上げれば……丁度こちらへと視線を向けたオーガの顎へと吸い込まれるように命中し……その意識を刈り取った。

 死んだわけではない。ただ気絶しただけだ。しかしながら、捕食者()の目の前で意識を失うという事はどういう事か……想像は容易いだろう。


「ではでは。イタダキマス」


 【聞き耳】には、既に近くまでゴブリン達が集まってきているのが分かっている。

 しかしながら、目の前に食べる事が出来る肉があるというのにそれを捨て置けるほど私の食欲は御しやすくはなかった。

 足を食らい、腕を食らい。途中で目覚めてしまったオーガが恐怖に染まった瞳を向けてきた為、瞳を食らい。

 ゴブリン達が集まってきた頃には……オーガは息絶え、光の粒子となって消えていく所だった。


「ゴチソウサマでしたっと!それじゃあ……【捕食】の効果が切れる前に、食後の運動と行きますか!」


 格上であるオーガに勝てたのは偶然だろう。

 そもそも戦う前は見ただけでも十分勝てないと自分の中で断じていた。だが、勝てた。

 理由は分かり切っている。【捕食】によるバフの倍率のおかげと、私がこの屍人喰いというアバターの動き方に慣れてきたからだ。

……バフの効果中だったら……ゴブリンはどれだけ数が居ても問題はなさそうだね。

 噛み千切っては潰し。突っ込んできた武器持ちには、それを奪い取って殺す。

 おやつ感覚でゴブリンの身体を所々つまみながらも、倒し続けていれば……気が付けば、周囲には何も居なくなっていた。


「ふぅー……改めて、ゴチソウサマでした。増援は……暫く来ないかな?」


 倒せたのは、オーガも含めると20体を越えるだろうか。

 経験値もそれなりに入っては来ているが、これまでの様に新しくスキルを覚える事はなかった。

 バフの効果もじきに切れる。狩りを終わりにするならこの辺りが潮時なのだろうが、


「スキルレベルを上げちゃって、この遺跡の探索続けちゃおうかな。なんでいきなりオーガとか出てきたのかも気になるし」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ