Episode6 - 多数に無勢
「だぁあ!もう!逃げられないじゃん!」
遺跡の中をゴブリン達から逃げていく中で、様々なモノを見た。
どうやらこの遺跡は、昔人々が使っていた建物らしく。所々にかつて使われていたであろう道具などが散乱しているのを確認できた。
とはいえ、それが何を意味するのかは今の私には関係のない事。
何せ、出口へと向かっていた私の目の前から、複数体のゴブリンが迫って来ているのが見えてしまったからだ。
「スキルは増えた!探索用だから戦いには向かない!」
ならやるしかない。
手には入り口に居たゴブリンから奪った棍棒を握り締め。私は10を超えるゴブリンを相手取る為、そのままの勢いで目の前へと迫って来ているゴブリンの、その中でも先頭を走る個体に狙いを付けて、
「こういう動きも出来るッてね!」
「!?」
跳び蹴りをお見舞いした。
その勢いは、途中獲得した【疾走】なるスキルのおかげか凄まじく。胴体に命中したのにも関わらず、足裏からは硬い何かを砕いた様な感触が伝わってくる。
……まずは1体!考えるよりも身体を先に動かさないと、逆にやられるのが今!
跳び蹴りをモロに喰らったゴブリンが衝撃で吹き飛んでいくのを横目で確認しつつ。
私は何とかその場で着地すると同時、
「そォれ!」
「ギャヒ!?」
手の棍棒を壊す勢いですぐ横に居たゴブリンの胴体を狙って振り抜いた。入り口でやったような頭を狙う余裕は今は無い。仕留めるまではいかずとも、少しの間行動出来ない様にする為の攻撃だ。
そんな私の動きを予想出来ていなかったのか、それともそこまで考えられる程頭は良くないのか。防御をする様子も無く命中し、遺跡の壁まで吹き飛ばされ気絶した。
だが、その衝撃に耐えられなかったのか……私が握っていた棍棒は柄の部分から折れてしまい、使い物にならなくなってしまう。
……良い!元々私のモノじゃない!
前方から来ていたゴブリンの数は5。その内、1体は蹴りによって吹き飛び、もう1体は今し方気絶させた。故に後3体。
しかしながら、
「ゲッヒッヒ!」
「ヒャヒャ!」
「ギギィ!」
「……追いついちゃったか」
私を狙うのは進行上に居る者達だけではない。
後方から迫ってきていた複数体のゴブリンの内の3体が、先行するように思い思いの武器を持って私へと飛び掛かってくる。得物は……錆びた斧に、ボロボロの槍、そして刃こぼれしたナイフ。
そしてそれに呼応するように、私の周囲に居る残り3体のゴブリンもこちらへと向かって手を伸ばしてきた。恐らくは私を拘束する事で仲間の攻撃を命中させようとしているのだろう。
「連携してくるのね、ここのゴブリン!」
ファンタジー作品に登場するゴブリンは基本的には脅威度は低い。
そんなゴブリンが人々から忌み嫌われ、討伐対象となる場合……よく理由付けられるものとして、その連携の練度の高さが上げられる。
主に裏にゴブリンキングなどと呼ばれる上位個体が存在している事が多い為の措置ではあるが、実際にその連携を味わってみると納得出来るものがある。
……言葉すら交わさずに、自分が怪我するかもしれない可能性すら考えずに瞬時に連携してくる複数体のモンスター!確かに普通だったら危険すぎるよね!
単純に厄介。
これが1、2体程度の話だったらまだ良い。しかしながら、ゴブリンというモンスターは2体以上……多ければ、今の私の様に複数体を相手にしなければならない状況が生まれる。
「でもソレはソレ!」
「ガ、ヒ?!」
「ギャギャ!?」
こちらを拘束してこようと手を伸ばした3体の内、最も近くに居たゴブリンの手を逆に掴み取り。
筋力にものを言わせ思いっきりこちらへと引き寄せると共に、その場でしゃがみ込みながらその身体を私の頭上へと移動させる。
イメージとしては、上空の脅威から身を護る為に掲げる盾。
小さく軽く、そして脂肪もそこまで無い身体ではあるが、質の低い得物程度ならば受け止めてくれる耐久性があるのはこれまでの戦いで分かっている。そして、私の今の身体の大きさはゴブリン達とあまり大差がない。故にコレで立派
私の動きに付いてこれなかった2体がバランスを崩すと共に、飛び掛かってきていた3体の得物持ちゴブリン達の攻撃が即席のゴブリンの盾……肉盾へと殺到しその全てを受け止める。
……おっもい……!体重と勢いが一気に掛かったなコレ!
両手で肉盾を支えているものの、落下の勢いがついたゴブリン3体分の重みは今の私には厳しいらしく。
圧されるように、徐々に腕に掛かる負担が大きくなっていく。
「くッ、離脱!」
私が肉盾を捨てその場から咄嗟に抜け出すのと同時、肉盾が重さに耐えきれなくなり損壊してしまう。
だが、そんな事をしていれば……当然、後続が追いつくわけで。
「……は、はは……何匹居るの?これ。流石に笑っちゃうなぁ……」
何とか対応したゴブリン達に加え、更に10体を越えるゴブリン達がこちらへと迫って来ているのが遺跡の薄暗い通路に見えていた。
流石に今の私にはどうしようもない数であり、その場から逃げ出す事も叶わないのを悟った私は、
「次の私はきっと上手く探索する事でしょう……まぁ死ぬまでは戦うけどね!」
生き残る事を諦め、出来る限りゴブリン達の数を減らして死ぬ事を決めたのだった。





