表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人を喰らう、味方も喰らう。両方やらなくちゃならないのが屍人喰いの辛いところだね  作者: 柿の種
第1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/12

Episode4 - はじめてのたんさく


 最初に口の中に広がるのは、強烈な獣臭と鉄の味。

 お世辞にも柔らかいとは言えないその肉を、顎の筋肉で無理矢理噛み千切ろうとして、


「!」


 歯が肉に食い込んだ瞬間、突如その硬さが消え去った。

 【噛みつき】が効果を発揮したのだろう。

 私の噛むという動作を補助する様に。それを完遂出来る様に。ゴブリンの筋張った肉が噛み千切れる程度に、私の歯が強化されたのだ。


「ァ、ギァア!」

「んー……うん!まっずいねぇ君!血の味は仕方ないとして、変な臭みとエグ味があるし仕方なく食べるとかじゃない限りは口にしようとは思わないな!……でも」


 今噛み千切ったのは肩口の肉。

 だが他の場所の味が違う可能性もある。魚ならば……腹の辺りには脂が乗り味わいが変わったりもするし、内臓なんかもまた違った風味があるかもしれない。

 血が流れ、力が入らなくなってきたのか。ゴブリンの抵抗は次第に弱くなっていく。

 私はその様子を見て、にっこりと笑いながら……再度、大きく口を開くのだった。



―――――



「ふぅ、ゴチソウサマでしたっと」


 捕まえたゴブリン、そして気絶させた2体のゴブリンを食らい終わり。

 私はその場で一息ついた。【聞き耳】から伝わる周囲の音には、特にこちらへと近付いて来ているモノもなく。洞窟に戻る必要もないだろうという判断だ。

……で、だ。一応戦闘は終わった訳だけど。

 私は視界の隅へと意識して視線を向ける。

 そこに在るのは、視界上にしか表示されていない……HPとMPらしき緑と青のバー。

 そして、その対極の位置に存在している行動ログだ。


「えぇっと……今回倒したのはスワンプゴブリン。そのまま湿地のゴブリンかな?ドロップ品は特になし。経験値は入ってるけど、特にスキルレベルが上昇した訳でもない」


 システム的なログが表示されているだけではあるが、これだけでも私には重要な情報だ。

 何せ、今の私は自分がどこの国家に近い場所に居るのかも分かっていないのだから。

……湿地、って事は……バストに見せてもらった映像的にはロレリアが一番近いのかな?

 草原の国、ロレリア。

 巨大な湖が存在しているらしい、遊牧民の国。

 他の3つの国よりも、湿地がありそうな地形なのはロレリアくらいだろう。


「あんまり強くなかったのは、私のスポーン位置が近かったから……とかじゃないよね、多分」


 プレイヤーが初期スポーンする位置なのだから、元よりそこまでレベルが高いモンスターが出ては来ないエリアなのだろう。

 とは言え、このまま湿地だけで活動する訳にもいかない。折角のVRMMOなのだ、冒険出来るならばしたい。

……問題があるとすれば、私の強さがどれくらいなのか全く分からなかった点かな。

 スキルと身体の動かし方だけで、3対1を制してしまった手前、このゲームにおける屍人喰いの立ち位置が分かっていないのだ。

 この辺りも国家からの恩恵とやらを受けていないが為に生じるデメリットというヤツなのかもしれない。


「ま、ゴブリンがあれが最後って訳じゃないだろうし……当分食糧には困りそうにはないね。出来れば何処から出てきてるのかは確かめたいけど」


 不味いとは言え、倒せるならば立派な食糧だ。

 今後もある程度の強さを確立出来るまではお世話になるだろうし、出所くらいは知っておきたい。


「よし、探すか」


 その場に立ち上がり、私は耳を澄まして周囲の音をしっかりと聞く。

 自然にスポーン……出現する可能性もあるが、何分私はこのゲームの生態系における情報を持ち合わせてはいない。

 モンスターも集落を作る可能性もあるし、ゴブリン以外の群れを見つけられる可能性だってある。

 やらない理由はない、というやつだ。


「……ん、なんか聞こえた。息遣いと足音の軽さ的にまたゴブリン?でも数が多い……5、6体くらいかな」


 と、適当に耳を澄ませながら湿地を闇雲に歩いていれば。

 丁度進んでいた方向から、複数の足音が聞こえてきた。聞き覚えのあるそれに、先程食らった肉の味が口の中に蘇ってくるのを感じながら、すぐさま近くの背の高い草の中へと身を隠した。

 息を殺し、足音の主が近づいて来るのを待っていると。


「ゲゲ?」

「ヒャヒャ」

「ギッギッ」


 予想通り、ゴブリンが5体私が潜んでいる草の横を通り過ぎる様にして歩いていく。

 向かっている先は……先程、私が戦闘を行った方向だ。

……こっちの方から来たって事は……やっぱり集落とかがあるタイプかな。丁度いいね。

 どれ程の規模かは分からないが、合計で8体のゴブリンが活動しているのが分かった時点で収穫だ。

 暫くはこの辺りを拠点として経験値を稼いでもいいかもな、と考えていると。


『行動経験値が一定量貯まりました。スキル【隠密】Lv1を獲得しました』

「!」

「……?」

「ゲ?」

「ギギッ」


 突如頭の中に流れた、機械的なアナウンスに驚き声を上げそうになってしまったが何とか堪え。

 ゆっくりとシステムログへと視線を向ける。

……スキルの獲得!成程、経験値の消費以外でもこうやって増えてく訳だ。

 今回獲得したのは、探索カテゴリに属する【隠密】。

 『独りで隠れる』という行為全てにボーナスが入るという限定的な効果のパッシブスキルだが、基本ソロで行動することになるであろう私には丁度いい。

 それに、こうしてスキルを得る事ができるのならば。


「……戦闘を繰り返せば、その分だけ強くなれる可能性があるって事だよね」


 ゴブリン達が十分離れてから声に出す。

 探索だけならば【隠密】と【聞き耳】で。

 戦闘面は【噛みつく】を。

 そしてそれら全てをサポートする【筋力増加】。

……初期にしてはそれなりにバランスが良いんじゃない?私のスキル構成。

 もしかしたらもっと良い構成や、戦闘方法などがあるかもしれないがそれはそれ。

 私に合っているのはこの構成なのだから問題はないのだ。


「よし、それじゃあまずは……」


 視線を向けるは、ゴブリン達が歩いてきた方向。

 元々私が進もうとしていた方向であり、ゴブリンの集落があるかもしれない方向だ。


「いっちょ、ゴブリンの集落を観光しに行こっかな!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ