Episode2 - キャラクターメイク
本日2話目
「モンスターとして、と言うと……うん、ごめん。私、このゲームの事を全く下調べしてこなかったのだけれど、そういうアバターも作れるのかな?」
「はい!可能です!KFOではプレイヤーは自由に、人間側かモンスター側かを選んだ上でプレイする事が出来るのです!」
バストがそう言うや否や、私の目の前に新たなウィンドウが出現する。
そこに表示されていたのは、2つの像。人間にしか見えないアバターと、モンスター……それもゲームユーザーからはゴブリンと呼ばれていそうな小鬼のアバターだ。
「ちなみに、プレイする上での違いは?わざわざ選ぶって事は……何かしらのメリットデメリットがあるんだろう?」
「勿論!……まず、人間側のメリットですが、これは簡単。主要国家の恩恵を受けられますし、そもそもとして元からある程度の能力を持ち合わせています!」
人間側のアバターがアップとなり、それぞれ身体の所々に注釈が加えられていく。
その中でも、
「……存在昇華?」
「あぁ、そうでした!それの説明もしないとですね!」
気になった言葉を口に出すと、バストが忘れていたと言いたそうな表情を浮かべながらも解説をしてくれる。
「存在昇華と呼ばれる、アバターの強化システムです!それを行う事で、人間は亜人、果ては神のような力を持つ存在へ。モンスターはより強大な力を持つ存在へと進化していきます!――但し!」
一息。
「ここで人間側のデメリット!人間側のアバターは全部で3回までしか存在昇華を行う事が出来ません!」
「その言い方だと、モンスター側は3回以上出来るみたいだね?」
「そうですね!モンスター側のメリットとしては存在昇華が数回……最低でも3回以上行う事が出来ます!代わりに、デメリットとしては主要国家のみならず、人間側からは討伐対象となってしまう点などですね」
そこまで聞いて、ある程度人間アバターとモンスターアバターのバランスを理解した。
つまるところ、モンスターは中々にゲームをプレイする点で言えばハードモードなのだ。
……このゲームに適用されてるかは分からないけど、弱肉強食が基本だろうしね。モンスターって。
人間ならば、主要国家のサポートもあってある程度の安全マージンをとって強くなれる。
しかしながら、モンスターにはそれがない。
代わりに存在昇華を何回もする事で人間と同じ様に、もしくは人間よりも強くなれるのだろう。
「オッケー、大体理解したよ」
「良かったです!その他の詳しい情報は、ゲーム内のトピックスから参照できますので!……して、どちらのアバターを作成しますか?」
「そりゃ勿論……モンスターで!」
人間側の料理を食べるならば、人間アバター一択だろう。
だが、私の目的には沿わないし、何よりそれを達成するまでの道のりが長すぎる。
ならばこそ、
「モンスターなら、人間どころか……モンスターも食べられるんでしょ?なら、ちょっとのデメリットくらい受け入れるよ」
「成程、理解しました!では作成に入りましょう!」
バストは私の返答を聞くと共に、周囲のウィンドウを一度消し、新たに1枚のウィンドウを出現させた。
そこに描かれていたのは……よく福引なんかで使うガラガラだ。
「では、一度ランダムにアバターの元となるモンスターの種類を決定します!勿論、あまり好みでなかったら変える事も、お客人がリクエストしてくれたモンスターに近いものを提案する事も可能ですので!」
「了解了解、じゃガラガラーっと」
そのウィンドウに指先で軽く触れてみれば。
コミカルなアニメーションと共に、ウィンドウ内のガラガラが回り出す。
暫く回り続け……やがて、1つのカプセルが音を立てて転がり出て、割れる。
そうして中から出てきたのは、デフォルメされたゾンビの様なアイコン。
モンスターの名称もその下に記されており、
「屍人喰い……グール、かな?」
「そうですね!アンデッド系に属する、主に人の死体を食らうとされるモンスターです!…….どうされますか?」
様々な料理を食べたい。
そう言ったからこそ、死体を食べるというモンスターを引き当ててしまった私に変更するかを聞いてきたのだろう。
私も流石に人の死体を食べるというのには少しばかりの抵抗感は……まぁ、ある。
だが、そんなちっぽけな抵抗感を覆い隠す程の好奇心が今、私の中には在った。
「変更しないよ。いいじゃんか、屍人喰い。人の死体なんて、現実じゃ色んなリスクがあって食べられないもんね。それに、存在昇華をすれば死体以外も食べられる様に……なるよね?」
「なります!お客人の選ぶ未来に寄りますが、ある程度は人に近く、それでいて人の食べ物を摂取出来る存在になる事が出来るはずです!」
「それならこれで決定だ」
私が言った瞬間。
私の視界が少しだけ低く、それでいて周囲の色が白黒へと変わっていく。
屍人喰いのアバター、アンデッドになったが故の変化なのだろう。
「詳しい見た目の調整は、一度存在昇華をしてから行うことになります!それまでは……」
「あぁ、まぁそこまで自分の見た目に頓着はないから大丈夫。他に何かやる事ある?」
「あります!アバターメイキングは残り2つの工程で終わりなのですが……」
バストが手を叩く。
すると、またも新たなウィンドウが出現した。
「初期スキルを3つ決めましょう!」
「おぉ初期スキル。よくある『鑑定』を取るとかそういうのだね?」
「そうですそうです!お客人には3つのスキルを選んで取得して頂きます!また、【鑑定】についてはアバターに標準装備なので、わざわざ取得する必要はありません!」
その説明を聞きながら、目の前のウィンドウ……リスト形式でスキルが表示されている一覧を、指でスクロールして気になるモノをピックアップしていく。
どうやら人間専用のスキルや、モンスター専用のスキルなんかもあるらしく。表示はされているものの、選択出来ない様にグレーアウトしているモノも存在していた。
……ふむ。私のアバターは屍人喰い。だったらそれに準じたスキルにした方が良いよねぇ。
どう考えたって、剣術や武術関係のスキルは必要ない。
それに加え、魔術らしきモノを扱えるスキルも見つけられたが……それに関しても、最初期は要らないだろう。
ならば、必要なのは、
「よし、これで」
「確認します!……【噛みつく】、【聞き耳】、【筋力増加】の3つですね!問題ありません!これで適用しますね」
「はい、ありがとう。じゃあ次で最後かな?」
「そうなります!次の工程がもっとも大事と言っても間違いありません!」
バストの声と共に、私の目の前のウィンドウが再度消え。
新たに出現したのは、1枚のウィンドウとキーボード。
「では、問いましょう。――貴方のお名前は、何ですか?」
「……あぁ、確かにそれはとっても大事だね。それなら……今回は、これで」
軽くキーボードに触り、名前を入力して確定させれば。
バストは満足そうに頷いてから、私の目の前に白く光る扉を作り出す。
「それでは。――この扉から先がKFO……『Kaleidoscope Frontier Online』の世界!再度お会いする事も御座いましょう!万華鏡の様な千変万化の世界の中で、貴方だけの生き方を!貴方だけの戦いを!貴方だけの生業を見つけてくださいませ!お客人……いえ、『イヴ』様!」
大仰に、しかしながら鼻につかない程度の芝居がかった態度で。
バストは私の目の前の扉をゆっくりと開いてくれる。
「あは、ありがとう。食べ歩きくらいの気軽な気分で行くとするよ」
開かれた先は、白く染まっており様子が分からない。
だが、恐れる必要はないだろう。バストの言う通り、私だけの生き方が出来る世界が待っているのだから。
一歩前へと踏み出し、私はその扉を通り抜ける。
すると、次の瞬間。私の視界に映る景色は一気に切り替わる。
「おぉ……っとぉ……分かってたけど中々だね?」
そこは洞窟だった。
薄暗い空間の中、ごつごつとした岩で出来た横穴。じっとりとした湿気が私の身体へと纏わりついていく。
あまり華々しいとは言えない位置。しかしながら、それでいい。
私の選んだアバターは屍人喰い。死人を食らうモンスターなのだ。生活感のある場所からスタートするわけがないだろう。
「さ、やっていこうか!」
私のKaleido scope Frontier Onlineが始まった。





