Episode1 - ゲームスタート
という事で新作。
今日はこのまま3話目まで更新予定です。宜しくお願いします。
■遠野 葵
『Kaleidoscope Frontier Online』。
4つの国家からなる巨大な大陸で、現実の人間の様に思考し行動するNPC達と共に生活、冒険が出来るというVRMMOだ。
フルダイブ技術が発展した昨今、綺麗な景色を見るだけの世界や、現実では出来ない表現などを体験出来るという触れ込みの世界など、VRを使った様々な世界が創られては人々の手に触れられるようになっていた。
このVRMMOもその中の1つなのだろう。そう考えてはいた……のだが。
「……今度は違うって本当かい?桐崎くん」
「まぁ、な。俺の勧めたゲームは大体外れは無かっただろ?」
「大体はね。でもこの前の……ほら、あのプレイヤー全員が重罪人とかいうの。あれは酷かったよ。まず足首にすっごい重い鉄球が付けられて動けないんだもん」
「ありゃあ……まぁ、うん。俺が悪かった。犯罪系の先駆けがヒットしすぎたからか、あの手の酷い出来のが結構あってなぁ……」
都内某所。
路地裏でひっそりと経営している、見た目だけは古いカフェ。
店内は木製のテーブルや椅子、珈琲の香りが漂う純喫茶という雰囲気……ではあるのだが。
所々に飾られているボードゲームや、壁際に置かれた巨大なブラウン管のテレビ。そしてそれに繋がった古いゲームの筐体等、普通の喫茶店では置かれていないような代物達がそんな雰囲気を壊してしまっていた。
「ゲーム喫茶名乗ってるんだから、そこら辺は下見してよね」
「面目ない。だが、今回はちゃんと下見したぞ。……うちの従業員が」
「赤奈ちゃんか。なら信用出来るねぇ」
この場には居ない赤髪の女性従業員に感謝しつつ。
私は桐崎から受け取ったメモへと改めて目を落とす。
「KFO、ねぇ。確かに最近ネットじゃ話題になってたよね。まだベータだっけ?」
「なんと今日から正式サービス開始だ。あと……2時間くらい後だな」
「へぇ、いいね。やってみようか」
「事前情報は?」
「これ以上要らない。後は中で聞くよ」
頼んでいた珈琲を一気に飲み干した後、その代金を桐崎に渡し喫茶店を出た。
丁度、最近ハマっていたゲームのエンディングを見た後だったのだ。
メインディッシュ後のデザート気分でゲームに挑んでみる事にしよう。
―――――
「よし、それじゃあログイン」
時間は正午。
ヘッドセット型のVR機器を頭から被り、ベッドに横になって起動させてみれば。
私の意識は水の中へと落ちていくかのように、すぐさま闇の中へと沈んでいった。
「……っとと!ここがチュートリアルの場所かな?」
次に視界に映ったのは、何処かの森の中。
木々が拓け、ちょっとした広場の様になっているそこの中心には巨大な切株が存在しており、
「ようこそお客人!お待ちしておりました!KFOへようこそ!」
「よろしくね。君は……チュートリアル担当のAI?」
「そうですね!これからゲーム内でも要所要所でお会いする事があるかもしれませんので……私の事は簡単に『バスト』とでもお呼びください!」
二本足で立つ、黒色のでっぷりと太った猫。
ニコニコと笑みを浮かべ、バストと名乗ったAIはこちらへと近付いてきながら、
「さて、早速ですがゲーム内で使用するアバターの作成をしていきましょう!お客人はKFOについてどれくらいご存じですか?」
「実はそこまで詳しくなくてね。出来れば説明してもらっても?」
「承知しました!ではでは、先にこのゲーム……『Kaleidoscope Frontier Online』についてのご説明から!」
バストが手を叩く様に前足を合わせると同時。
私達の周りには複数の半透明なウィンドウが出現した。映っているのは……様々な環境映像の様なモノ。
「このゲームには4つの主要国家が存在します!――綺麗な湖が中心に存在し、周囲を広大な草原に囲われた遊牧民の国『ロレリア』!」
私の目の前にその中の1つ、巨大な湖を中心として街が広がっている光景が映し出されたウィンドウが移動してくる。
ちょっとしたパフォーマンスを兼ねて国の紹介をしてくれるようだ。
正直、このような形での紹介は嫌いではない。
「広い砂漠の中、巨大なオアシスと共に発展した商業の国『シファール』!」
次に移動してきたのは、何やら露店を始めとした商店が大量に展開している砂漠の街の光景。
綺麗な氷で冷やされた果実や、綺麗なガラス細工などが目を惹くものの。
やはり砂漠に存在しているからか、中々に陽の光が強そうだ。
「夢と過去の偉人が遺したとされる宝を探し求める海原の国『タラッセイア』!」
そんな事を考えていれば、ウィンドウに映し出される光景は青一色へと切り替わる。
砂漠とは打って変わり、そこにあるのは水、水、水。
巨大な船舶と、それを停められるだけの巨大な港。中々活気の溢れる港街が映し出されていた。
「そして、霊峰とされる巨大な山を中心とした狩猟の国『クリフヘイム』!――これらが主要国家となり、プレイヤーの皆さんのゲーム内での生活を支えてくれます!」
最後に映し出されたのは、巨大な山だ。
その山肌には数々の集落が存在し、時折弓や槍、私が見た事のない武器の様なものを持った人々が過酷な山の中を進んでいく。
……成程、この4つが主要国家って奴なんだねぇ。これの中から所属を選ぶ感じかな?でもなぁ……。
バストがウィンドウに映る風景に合わせ、コミカルに前足を動かしているのを見て軽く微笑みながら。
私自身が気になっている事を聞く事にした。
「成程成程……ちなみに聞いてもいい?」
「はい、なんですか?」
「それぞれの国には美味しいものとかあったりする?ほら、最近のVRMMOって味覚とかも再現できるでしょ?私、冒険とか景色とかよりそっちの方が気になっててさ」
そう、私が気になるのは……各国の食事の部分。
遊牧民の国ならば、家畜から獲れた肉などの料理があるだろうし。
砂漠ならば、過酷な環境の中で飢えない為に伝わってきた料理があるだろう。海鮮を使う料理や、漁師飯の様なモノもあるかもしれない。山岳ならば、山の幸や山で活動する為の保存食なんかも作られてもおかしくはない筈だ。
それらがどのような形で実装され、口に出来るのか。それが一番、私が気になる点なのだ。
「確かにそれぞれの国家に特産品や、それらを使った料理は存在しています!ただ……」
「ただ?」
「それらを食べるには、サービスを開始した直後である現状では自身の手で作るか、NPCとの友好関係を築き作ってもらうしかありません……。レストランなども存在してはいるのですが、フレーバー的なものとなっていまして……」
「あぁー……そっかぁ……成程ね」
バストが申し訳なさそうに言ってきた事も理解出来る。
そもそもが私の楽しみ方は、他の大衆とはズレた位置にある事は私自身理解しているのだ。
そして、ゲームの運営開発的にそれらの実装を後回しにする事も。
……リアルの料理技術が必要になるとは思えないけれど……正直、私が料理すると碌な事にならないからなぁ。
自身の料理技術が壊滅的な事は、自分が良く知っている。
そして、料理を作ってもらえるまでNPCと絆を深めるまで料理を我慢出来るかと言われれば否だ。
と、なれば。
「うーん……あ、じゃあさじゃあさ。このゲームってモンスターも食べられる?」
アプローチを変えれば良い。
料理という料理が必要ない、ただただ生肉へ喰らい付くだけでも良い。
そんな選択肢を探れば良いのだ。
「えっ、と……はい、可能です!ただ、普通のプレイでは難しいかと!人間のステータスではモンスターを食し、味わうというのは耐性などが必要になってきますので」
「ほうほう、普通のプレイじゃあ難しい。……って事は、普通のプレイじゃなかったらイケるわけだ」
「そうですね!では、そちらの方の説明をば!」
周囲に表示されていた、国家の風景を映したウィンドウが全て消え。
代わりに現れた複数のウィンドウには……先程とは打って変わり、荒廃した土地や、墓地。人が住めるとは思えない火山や深海などが映し出されていた。
「モンスターとしてアバターを作り、プレイする方法のご紹介です!」
どうやら結構面白そうな方向に話が転がっていったようだ。





