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序
眷属は新月の闇夜に生まれ、満月の輝夜に消える。
彼らを創るのはそう難しいことではない。
「人狐」に古くから伝わる化け学を応用した術だ。
ニノメはいつも、遠海稲荷の大イチョウの葉っぱを使う。
そのとき一等綺麗な葉を濡れ縁に絹糸でつるし、息を吹いて神気を込め、夜をたっぷり吸わせて創る。
カラスやハト、ネコやイヌ。
ちょっとしたお遣いや手伝いをこなしてもらうのに最適だ。
生まれる眷属は神通力の強さで変わる。熟練の術師ならば、自分そっくりな人狐を仕立てることだってできるという。
ところが、ニノメはこの術を苦手にしていて、いつもトカゲだとかカエルとか、まわりをちょろちょろするしか能の無いものしか生み出せなかった。
それでも、ひとりきりで務める神社に自分を慕ってくれる者が居るのは嬉しくて、満月を迎えるたび、ひとひらの葉に還る眷属を見送ってきた。
次は、もっと意思疎通のできそうな、ネズミやネコにでも会えたらいい――。
そう思い術を結んだ、新月の翌朝。
朝日輝く縁側には、目の覚めるような白狐がいた。
「遠海のニノメの眷属としてお働き申す。オノイチと、お呼びください」
蒼い瞳の雄狐にぺこりと頭を下げられた時のうれしさを、ニノメは生涯忘れない。




