気持ちが見えるんです
私には、普通の人には無い、特殊能力がある。
なんと、人の気持ちが読めるのだ。
両手の指でひし形を作り、指の間から誰かを覗く。
そうすると、覗いた人の気持ちが読めるのだ。
大学の学食で暇つぶしにした仕草で、まさかこんな自分の能力がわかるだなんて。全く驚いたものだ。
今日も私は、そっとひし形を作り、みんなの気持ちを盗み見る。
『だるい』
『眠い』
『嬉しい』
この能力の欠点は、あくまで気持ちの断片がわかるだけで、詳細なことが何もわからないことだ。
まぁ、それでも人と関わるに当たっては、今の気分さえ分かれば充分だった。
機嫌が悪ければ関わらない。元気がなければ励ます。
その程度しか使うことがない。
あ、もう一つあった。
「何してるの?光莉」
「直斗。なんもー」
そう言いながら、ひし形を作って彼を覗く。
『大好き』
そう彼の頭上に文字が浮かび、私は口角を上げる。
大好きな彼氏の直斗。彼が私のことを好きかチェック出来ること。直斗の頭の中は私でいっぱいにしてほしい、それくらいだーいすきなんだから、このチェックは重要だ。
でも、この能力は、大好きな直斗には秘密。
だって、バレて嫌わられちゃったら耐えられないもん。
ある日、廊下を歩く直斗を見かけた。
いつもより、少し無表情な彼。
機嫌が悪いのかも?私はいつものように、彼を覗いた。
『殺したい』
想像もしていなかった文字が浮かび、私は動けなくなる。
彼の視線は、同じ授業を取っている、高田くんに向いている。私は思わずゴクリと息を呑んだ。
数日後、高田くんが大学近くの雑木林で遺体となって発見された。
彼と一緒に学食でお昼休憩しているとき、そのニュースが流れてきて、学食では一部の生徒がざわめいた。
彼はテレビを黙って見ていたが、一瞬口角があがった。
私はそれを視界の端でとらえつつ、僅かに震える指を誤魔化すように、黙ってうどんを啜った。
学食を出る時、私は少しゆっくり歩いて、彼の背中で指を合わせ、覗いてみる。
『殺したい』
彼の視界の先は、浜田くんだった。
そして、数日後、浜田くんは遺体で見つかった。
彼はまた、笑っていた。
次の標的は河合さんだった。
彼女の遺体が見つかると、彼は、何か確信めいたように、笑っていた。
そんな事が2、3回続いた。
何度も遺体は発見されて、その度に彼は微かに微笑む。
私は震える手で、指を合わせ、覗き込む。
それでも、何度見ても、彼の殺意は消える事がない。
今も彼の頭上には、文字が浮かんでいる。
彼の殺意は途絶えることがない。
「もう、無理…………これ以上殺せないよ」
私はそう呟き、その場に立ち尽くす。
彼の背中は遠ざかっていく。
私は、指をゆっくり離した。




