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気持ちが見えるんです

作者: あやお
掲載日:2026/01/19


 私には、普通の人には無い、特殊能力がある。

 なんと、人の気持ちが読めるのだ。


 両手の指でひし形を作り、指の間から誰かを覗く。

 そうすると、覗いた人の気持ちが読めるのだ。


 大学の学食で暇つぶしにした仕草で、まさかこんな自分の能力がわかるだなんて。全く驚いたものだ。


 今日も私は、そっとひし形を作り、みんなの気持ちを盗み見る。


 『だるい』

 『眠い』

 『嬉しい』


 この能力の欠点は、あくまで気持ちの断片がわかるだけで、詳細なことが何もわからないことだ。

 まぁ、それでも人と関わるに当たっては、今の気分さえ分かれば充分だった。

 機嫌が悪ければ関わらない。元気がなければ励ます。

 その程度しか使うことがない。

 あ、もう一つあった。


「何してるの?光莉」


「直斗。なんもー」


 そう言いながら、ひし形を作って彼を覗く。


『大好き』


 そう彼の頭上に文字が浮かび、私は口角を上げる。

 大好きな彼氏の直斗。彼が私のことを好きかチェック出来ること。直斗の頭の中は私でいっぱいにしてほしい、それくらいだーいすきなんだから、このチェックは重要だ。


 でも、この能力は、大好きな直斗には秘密。

 だって、バレて嫌わられちゃったら耐えられないもん。




 ある日、廊下を歩く直斗を見かけた。

 いつもより、少し無表情な彼。

 機嫌が悪いのかも?私はいつものように、彼を覗いた。



 『殺したい』



 想像もしていなかった文字が浮かび、私は動けなくなる。

 彼の視線は、同じ授業を取っている、高田くんに向いている。私は思わずゴクリと息を呑んだ。



 数日後、高田くんが大学近くの雑木林で遺体となって発見された。

 彼と一緒に学食でお昼休憩しているとき、そのニュースが流れてきて、学食では一部の生徒がざわめいた。

 彼はテレビを黙って見ていたが、一瞬口角があがった。

 私はそれを視界の端でとらえつつ、僅かに震える指を誤魔化すように、黙ってうどんを啜った。


 学食を出る時、私は少しゆっくり歩いて、彼の背中で指を合わせ、覗いてみる。


 『殺したい』


 彼の視界の先は、浜田くんだった。

 そして、数日後、浜田くんは遺体で見つかった。

 彼はまた、笑っていた。


 次の標的は河合さんだった。

 彼女の遺体が見つかると、彼は、何か確信めいたように、笑っていた。


 そんな事が2、3回続いた。

 何度も遺体は発見されて、その度に彼は微かに微笑む。

 私は震える手で、指を合わせ、覗き込む。

 それでも、何度見ても、彼の殺意は消える事がない。

 今も彼の頭上には、文字が浮かんでいる。

 彼の殺意は途絶えることがない。





「もう、無理…………これ以上殺せないよ」


 私はそう呟き、その場に立ち尽くす。

 彼の背中は遠ざかっていく。

 

 私は、指をゆっくり離した。




 

 

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