『俺が最弱? なら……勝手にすれば?』
※この物語は「追放されたはずの主人公が、何もしないのに最強になっていく」異世界ファンタジーです。
最弱スキルと呼ばれた《引き寄せ》には、誰も知らない力がありました。
気づけばモンスターが跪き、アイテムが勝手に集まり、
本人が一番「え、なんで?」と困惑する成り上がり物語です。
サクサク読めるテンポと、ほんの少しのギャグ要素。
異世界での“のんびり無双”を、ぜひお楽しみください。
「……ごめんね、リクくん。君のスキル、パーティから外れてもらうことになったんだ。」
そう言ってきたのは、パーティリーダーのカインだった。
優男ぶってるけど、口元はニヤついてる。バレバレだ。
「“引き寄せ”? ははっ、何それ。敵でも引き寄せんのか? 罰ゲームかよ」
他のメンバーも笑い出す。
スキル鑑定で表示された俺のスキル── 《引き寄せ》。
効果不明。説明なし。評価“E”。
……うん、自分でも意味わからん。
「いや、でも何か効果あるかもって──」
「ねぇよ。そんなゴミスキル、役に立つかよ」
リーダーの一言で、俺の居場所は一瞬で消えた。
ギルドの掲示板には、新人冒険者の名前と“解雇済”の赤いマーク。
仲間だったはずの奴らは、俺の目も見ずに街を出ていった。
「……あー。そういうことね。了解。俺、追放ね。はいはい」
荷物も装備も、何一つ残してもらえなかった。
俺にあるのは、謎スキル《引き寄せ》と、ボロ布の服だけ。
その晩。
野宿するしかなくて、森のはずれで眠ることにした。
空腹と寒さで意識が朦朧とする。
「……なんか、人生詰んだな」
ぼそりと呟いたそのときだった。
──ザッ……ザザ……
音がする。草を踏みしめる音。
見れば、森の奥からモンスターが数体、ゆっくりと近づいてくる。
「……うそだろ。マジで“引き寄せ”発動してんのかよ……」
牙をむいた狼型モンスター。
その一匹が──俺の目の前で頭を下げた。
『主よ。我ら、あなたの力に従います。』
「……は?」
それだけじゃなかった。
辺りに散らばる小石の中に、ひときわ光る何かがあった。
土を払いのけて拾い上げると──
手のひらサイズの、小さな剣。
けれどそれは、見たこともない光を放っていた。
剣身には、こんな文字が刻まれている。
《選ばれし者よ、時は来た》
「……選ばれてねぇけど。勝手に来るなよ、マジで」
俺はため息をつきながら、再びごろりと横になる。
「……もう寝るわ。考えるのは明日でいい」
そう、何もしてない。
ただ追放されて、寝てるだけ。
なのに──
モンスターは従い、レアアイテムは集まり、
知らぬ間に“最強”への道が開かれていた。
次回──勝手に仲間になる魔物たち!?
俺、やっぱり“引き寄せ神”かもしれん。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
今回は「追放×無自覚最強×何もしない系」をテーマにした導入回でした。
主人公リクは、自分の力にも世界の流れにもまったく自覚がありません。
それなのに世界の方から“勝手に跪いてくる”。
そんなギャップを楽しんでもらえたら嬉しいです。
次回は──“引き寄せ”によって現れる、ちょっと不思議な魔物たちの登場です。
感想やブクマなどいただけると、とても励みになります。
引き続き、よろしくお願いします。
「今日も、なんかいいこと引き寄せられるといいね。」
――リク