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第1話 異世界転生は唐突に

俺は気がつくと森の中に1人、ポツンと佇んでいた。

何も持たず、革でできた長ズボンを履いていて(ブリーチというらしい)、ブーツの中に裾をしまっていた。

そして黒い色のシャツを着ていて、ズボンもブーツも黒色なため、完全に黒ずくめになっていた。

だが、それ以外身体に変化はなく、手足が伸びていて高身長になっているという風ではなかった。


俺はごく普通の高校2年生だった。

今朝もいつものように制服を着て、学校に向かった。

いつもの車通りの多い交差点で信号待ちをしていると、後ろから誰かに突き飛ばされた。

俺はその時スマホで友達のSNSの投稿を読んでいたから、踏ん張りが効かず、そのまま車道に倒れ込んでしまった。

俺は慌てて立ちあがろうとしたのだが、その時には左折してきたトラックに轢かれて意識を失った。


そして気が付けばなぜか鬱蒼と生い茂る森の中に立っていた。

正直俺は今見えている景色は全部瀕死の俺の幻なんじゃないかと思っていた。

しかし、頬をつねってみたらちゃんと痛いし、目に飛び込んでくる日の光もちゃんと眩しいと感じる。

夢じゃないって確証はないが、俺は取り敢えず川の流れる音が聞こえる方向に進んでみることにした。

生きるためには水が必要だしね。

さらさらと街の中だと聞くことのない水の流れる音が聞こえる。

川は俺が立っていた場所からすぐ近くにあり、数分もしないうちにたどり着くことができた。

俺は川の水を掬おうと、川を覗き込んだ。

ついでに自分の顔がどうなっているか見てやろうと思ったのだが、水は流れているせいで、よくわからなかった。

俺は水を掬って飲もうとしたが、川の水は飲んではいけないという話を聞いたことがあるのを思い出した。

動物の糞尿が混ざっているとかなんとか。

俺は顔を上げて川の向こう岸を見てふと思った。

これは三途の川なんじゃないかと。

俺は少し不気味に思って川から離れることにした。


それにしても、ここは一体どこなんだろうか。

俺は歩きながら周囲をぐるりと見渡してみた。

リスのような生き物が木の上でどんぐりをかじっているのが見えたり、時折カブトムシのような生き物が飛び回ったりしているのが見えた。

黄泉の国の一歩手前ならもっと人がいてもいいはずなのだが、人間は俺以外いないようだった。

大きな動物も見ていないし、一見するとただの森だった。

だが異変はすぐに訪れた。

俺の目の前に一匹(?)のゼリー状の物体が落ちてきたのだ。

俺は鳥か何かの糞だと思って後ろにのけぞった。

だが、そのゼリー状の黄色の物体はまるで石を持つかのように俺の方へもぞもぞと近づいてきた。

「なんだなんだ!?」

俺は混乱してゼリー状の物体を蹴ってしまった。

しかしそいつは木の幹にぶつかってぐちゃぐちゃになったかと思うと、すぐに元の丸っこいフォルムに戻って俺に近づいてきた。

そこでようやく俺はこいつの正体が何かわかった。

多分こいつはスライムだ!

ということはここはファンタジーの異世界か?

俺はこれまで読んできたラノベの内容を思い出しながらじりじりとスライムから距離をとった。

しかし、俺はとあることに気が付いた。

異世界ファンタジーでは結構な頻度でスライムを仲間にしていた気がする。

俺は気を取り直してスライムに近づいた。

もしかしたら俺も魔物使い(テイマー)になっていて、スライムを仲間にできるんじゃないか、と思ったからだ。

俺はスライムに手を差し出してみた。

しかし、手がスライムに触れると手に電気が走ったような激痛が走り、俺は手を急いでひっこめた。

「いってぇ!」

俺はスライムを睨んで言った。

「電気属性ならそう言ってくれよ!」

スライムは口もなにもないため何も言い返してはこなかった。

それどころか全くの無反応で今度は俺に飛び掛かってきた。

俺は近くに転がっていた棒切れを掴んでスライムから身を守ろうとした。

しかし、スライムは棒切れに当たったとたんぐちゃっと音を立ててあたりにぐちゃぐちゃのゼリーをまき散らした。

俺はむき出しの腕や顔にスライムの体の一部が当たってしまい、痛みに悶絶することになった。

「いってぇぇ!!」

俺はごしごしと体に着いたスライムを拭いた。

スライムはまたまとまって元の形に戻ろうとしたので、俺は棒切れでスライムを潰した。

しかし潰しても潰してもキリがなかった。

そこでようやく俺はスライムは一つの小さな石にまとまっていることに気がついた。

俺はそれに向かって石をぶつけて石を割った。

スライムの石は握りこぶしよりも小さく、石を割ったとたんスライムが発していた電気はなくなった。

電気といっても静電気を少し強くしたくらいの威力だった。

10万ボルトとかだったら普通に死んでたな…。

俺は少し安堵しながら石をズボンのポケットにしまった。

特に苦労して倒すことはなかったが、チートらしきものが発動することもなかった。

俺はチート能力とかは持っていないのかもしれないな…。

いや、もしかしたらこの先強敵と戦っているときに覚醒するのかもしれない。

俺は若干がっかりしながら、スライムが来た方向とは逆方向に進みだした。

もしかしたらもっとスライムが潜んでいるかもしれないからね。

あの不快な静電気は二度と食らいたくないしね…。

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