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第9話 パンがないならケーキを食べれば良いじゃない

自作のラノベを生成AIを用いてコミック化するチャレンジをしています。


※コミックと原作で、一部地名や固有名詞が異なっています

「ニューワールド」(原作版)→「ユークライン」(コミック版)など

<コミック>


制作中です。


<文章原作>


 グループクエストを無事クリアした私は、次なる目標を防具の獲得に置いていた。

 一緒にグルクエに参加したユキオが装備していた、木製の盾である。


 どうせまともにモンスターと戦うことはないであろうから、別にわざわざ装備する必要もないのだが、せっかくショートソードを手に入れたのだから、左手に盾を装備したくなるのが人間の性というものだ。(ちなみに、クラーケンに投げつけたショートソードは事後しっかりと回収を図った)

 いやむしろ、今後攻撃はしなくとも、フィールドを歩いている際に攻撃を受ける可能性は大いにあるだろうから、どちらかというと武器よりも防具の方が欲しいのだ。


 さて、お値段はどれほどのものかと、リプールの武器屋に立ち寄ってみる。

 中に入ると、相も変わらずスキンヘッドのおっさんの頭が光を反射してまぶしい。


 防具コーナーを見てみると、あったあった。

 ユキオが装備していた木製の盾、ウッドシールドだ。

 レベル10から装備可能、値段は……600Gか。

 60Gしか入っていない私の財布をわざわざ確認するまでもなく、購入できないこと端から分かっていたが、やはりそれなりに高い。


 となると、私としては再び600Gをその辺のプレイヤーから強奪することになるのが、今回はやり方を変えよう。

 そもそもお金というのは、目的を達成するための手段でしかない。

 いくらお金をたくさん持っていたって、世の中に欲しいものがなければ買うことができないし、欲しいものが必ず手に入るとは限らない。

 お金は人を不幸せから救うが、必ず幸せにするとは限らないのだ。


 まあ要するに、600Gではなく、直接ウッドシールドを強奪すれば話は早いということだ。

 私は、店から出た後、さっそく港町リプールでたむろしているプレイヤーの装備を物色し始める。


 最初の町だけあって、プレイヤーはほとんど初級職、私と同程度のレベルのように推察される。

 ぽつぽつとウッドシールドを装備しているプレイヤーがいる中で、私は一人で素振りをしている堂島という名前の男に狙いを定めた。


 技の練習をしているのか、ブンブンと剣を振りまわしたり、盾を構えている様子は、寡黙で精悍な剣士といった印象を受けるが、一方でわざわざこんな人が多くいる町の真ん中で練習している点、少しナルシストな感じも垣間見える。


「こんにちは!何されてるんですか?」


 堂島はこちらを振り向いた。


「ああ、モンスターへの命中率を上げたくてね。

 素振りをしているんだ。

 ハァッ!」


 ブンブン!シュパッ!


 堂島は私が見ている手前だからか、さっきよりもさらに体に力が入ったような感じで剣を振り回している。カッコつけたところで、こいつは初級職のザコだ。なんだか微笑ましい。


「かっこいいですね!

 憧れます!」


 堂島はまんざらでもない様子で寡黙に練習を続けている。

褒められて嫌な気持ちになる人間はいない。私は続ける。


「私もやっと盾を装備できるレベルになったんですけど、まだまだお金が足りなくて……」

「そっか。盾は高いですよね」

「はい……」


 勘違いしないでほしいが、私は乞食のように男に盾を恵んでもらうつもりは毛頭ない。その行為はただの「クレクレくん」であり、恥ずべき行為だ。

 あくまでも私は、詐欺師のプライドとして、相手を騙して奪い取るのだ。


 念のため繰り返し言うが、このネトゲ「ニューワールド」には警察は存在しない。現実世界とは異なる倫理観で世界が回っている。だから、相手を騙して金品を奪い取っても、それは合法であり、ゲーム性の範疇である。

 騙し騙されるのも全て自己責任であり、プレイヤーの自治に任されている。


「良かったら、写真を撮らせてくれませんか?」

「写真?」

「はい。私、プレイ日記のブログを運営してるんです。

 そこで、日々の出来事を写真付きで綴ってるんです」

「へえー。面白そうだね。

 全然、とってもいいよ」

「ありがとうございます!」

「あっ、ちょっと待って」


 堂島は、剣を持ち直し、剣に反射した自分の顔を見ながら前髪を整えだす。

 そして、おもむろに素振りの練習に戻る。


 パシャ、パシャ。


 ゲームのスクリーンショット機能を使って、堂島の下手糞な素振り姿を写真に収める。


「こっちに目線ください!」


 パシャ、パシャ。


 自分で提案しながら私は何をやっているのだろうか……カメラマンの仕事っていろんな意味で大変なんだな。

 私は心を無にして写真を撮った。


「ありがとうございます!

 ニューワルド放蕩日記で検索したら、私のブログが出るので、是非見てくださいね」

「分かった。後で見てみるよ」


 適当に嘘のブログ名を言って、信頼性を高めておく。


「最後に、そのウッドーシールドの写真を撮らせてください!

 眺めてモチベーションにしたいんです」

「うん、いいよ」

「できれば、ズームインした状態で撮りたいので、地面に置いてもらえませんか?」

「えっ、でもそれは危ないから、できないかな」


 ……うーん、意外とリスク管理能力が高いな、この男。

 アイテムを装備から外して地面に置くと、誰でも拾えるようになるのである。


「このあたり、今人通りがないので大丈夫ですよ!」

「私も離れて遠隔で撮りますんで!」

「そっか、分かったよ」


 私が堂島から離れると、ウッドシールドを地面に落としてくれた。

 よし!今までほめ倒した甲斐があった。


「じゃあ撮りますね。

 あっ、良かったら、ニューワールド放蕩日記ってボードに書いて持ってくれませんか?」


 相手が一つの条件を飲んだ後に、わざと、すかさずもう一つのお願いをする。

 心理学では一貫性の原理、あるいはフットインザドア法というが、人は一度相手の提案を承諾したら、その後のもう一つのお願いも受け入れやすくなってしまうのである。

 堂島がボードにペンで書こうとしているところ、私グッと体に力を入れる。


「分かった。ニューワールド……ほうとうって、この漢字でいいんだっけ?」


 ボードに書き始めた瞬間、私はウッドシールドに向かって思いっきりダッシュした。


 ダダダダッ!


 わざと少しややこしい漢字を使った架空のブログ名を言ったことが幸いしたようで、堂島はそちらに注意がいっていたようだ。

 私が盾に向かっているのに少し遅れて気づいた堂島は、すぐにボードを放り出して盾を拾おうとしたが、間に合うギリギリの距離を掴んでいた私の手が届くのが早かった。


 ピコン!

『ウッドシールドを拾った』


 堂島はあっけにとられて、言葉が出ないようだ。


「ありがとうございました~」


 そう言って私は、すぐにサーバーチャンネルを変え、姿をくらました。

 私がいなくなったサーバーに、やっと我に返ったらしい堂島の「おい!」という声がむなしく響いた。


 ウッドシールドを装備した私は、剣と盾がそろって、やっと半人前のプレイヤーらしくなったように見える。中身の人間はとんだクズであるのだが。


 それじゃあ次は、初級職から中級職になれるレベル15を目指していこう。

 中級職になると職業選択もできて、更に楽しくなるはずだ。

旧作品名は、「天才詐欺師の女子高生はVRMMOでニューワールドの神になる。」です。


作者Xアカウント:@pinebookjp

※この作品は画像生成AIを使用して制作しています。

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