救助
まずは火の近くの地面を、両手を使って綺麗にする。
邪魔な石などを退かし、出来るだけ平らにする。
葉っぱを集めて、そこに敷いていく。
「よし、これでよしと……次はアレか」
なるべく見ないようにして、女性の衣服を脱がせていく。
幸い、ボタンで留めるタイプだったので難しいことはなかった。
そして、どうにか下着姿にまでたどり着く。
その姿は美しく、思わず息を飲んでしまった。
「さ、流石に下着は脱がせないな……というか、情けないことにやり方もわからん」
「クゥン?」
「……ハク、お前がいてくれて良かったよ」
「ククーン……」
ハクの頭を撫でて、心を落ち着かせる。
「もちろん、寝ている女性に手を出す気はないが……うん、感情はそうもいかん」
気持ちを切り替えたら、女性の身体をタオルで拭いていく。
次に抱きかかえて、草の上に優しく乗せる。
その周りに木を突き刺し、中央で支えあうように置く。
最後に俺の上着を被せれば、即席テントの完成だ。
こうすれば、多少は熱も逃げにくいし風も当たりにくいだろう。
「後は、持っていたタオルを彼女にかけて……ひとまず、これでよしと」
「ワフッ!」
するとハクが彼女のそばに寄り添う。
どうやら、見張りをしてくれるらしい。
俺がいるよりはいいので、その場をハクに任せて俺は少し距離をとる。
「さて、どうしたもんかな。まずは、無事に目覚めてくれることを願うとして」
もし目覚めたら、聞きたいことはたくさんある。
ここはどことか、貴女は誰ですかとか。
彼女を見る限り、西洋人に近い容姿をしていたけど……言葉は通じるのか?
「日本人じゃないけど、とりあえず人がいて良かった。というか、日本人とか言ってる場合じゃないか」
どう考えても、ここは俺の知る世界とは違う。
俺にはこんな能力はないし、今時女騎士などそうそう居ない。
……あの説が有力だよな。
「そうなると……やっぱり、そういうことになるよなぁ」
知らない世界に来た可能性が高い。
ここに至っても不思議と、俺は落ち着いていた。
それから火を見続けること数十分……トコトコと、ハクがテントから出てくる。
「ワフッ!」
「おっ、彼女が目覚めたのかな?」
「キャン!」
「わかった。さて……とりあえず、言い訳を聞いてくれると良いが。ひとまず、平手打ちくらいなら甘んじて受け入れるとしよう」
「クゥン?」
「ハク、お父さんは頑張ってくるよ。お前は、ここにいなさい」
「ワフッ!」
まるで『よくわからないけど頑張って!』とでも言うように、俺の足をポンっと叩く。
俺はそれに背中を押され、テントの方に向かうのだった。