些細なこと、そして裏を知る
また後日、彼女は私に話してくれた。前よりも淀んだ瞳は怖いというよりかは、痛々しいほどに同情をかう。
再びとある女子大生の話を記しておこう。この、行き場のない思いは果たしてどこに流れていくのか……。
おや、また私のお話を聞きにきてくださったのですか?まったく物好きな人ですね。
タメになるわけでも、何か収穫を得られるわけでもないので、またさらっと聞き流す程度で大丈夫ですよ。
今回は、とある私の友達についてお話します。私の話題に出すくらいですから、まあなんと言いますか……色々理解できない子でして。
前回でも少し出てきていましたが、どうしても長くなるのであまり焦点を当てませんでした。なので、今回もはしょりながら、手短にしていきます。
その子……Zちゃんと呼びましょうか。Z世代だから、なんつって。すみません、調子に乗りました。
Zちゃんは私と同じ地元で、しかし高校が違ったので大学で初めて知り合いました。共通の友達がいたことも発覚しています。本当、世間って狭いですよね。
しかも同じマイナーなアニメが好きで、食べ物の好みも合うということが自己紹介でわかりました。
そんな出会いをしたものですから、すぐに意気投合し仲良くなったのでは?と皆さん思うはずです。
残念ながら、仲良くなったのはもう少し先でした。
Zちゃんは誰が見ても可愛いと思うほどの整った顔立ちで、よく男性から声をかけられています。大学内で知らない男性からポップコーンをもらったりもしているくらいです。
その上誰にでも明るく話しかけ、人がいるのにどこでも大声で歌うことができ、女子全員に「可愛いね」と言いまくる光属性だったのです。
私は言わずもがな根暗なので、私に彼女は眩しすぎました。
その上どこのグループにも属さないとまで言っていましたので、ある程度の距離があったのです。
私には私で、先に、とあるゲームがお互いに好きという理由で友達になった子がいたのです。そのためその子と一緒に行動を供にしていました。
やがてその私の友達とZちゃんが話すようになり、成り行きでそのまま、私と友達、Zちゃん、Zちゃんの友達の四人でつるむようになりました。
ここで、先に私の友達関係についてお話しておきます。
Zちゃん単体のお話はまた後程しますね。
私は以前にも話した通り、過去の失敗からグループでいるのがあまり好きではないのですよね。なるべく二人、もしくは一人でいたいと思っています。まあ、奇数にならなければまだ良いのですが……。
最初、「結局グループに属してるじゃねーか」とZちゃんに不信感を抱き、なんとなくの感覚で四人で行動していましたが、これが何とも意外。
楽しかったのですよね。
Zちゃんが盛り上げて、友達がそれに乗っかって、私が追い討ちをかけて、Zちゃんの友達が冷静にツッコんで。
居心地が良くて、私の不安だった大学生活の心の拠り所となるくらいでした。
四人で出かけたし、一緒のサークルにも入って、プレゼント交換ありのクリスマスパーティーもしました。
とても充実していました。あの時の私はいわゆるリア充でした。
しかし、その楽しさが続いたのは一年でした。
友達が大学を辞めてしまったのです。私たちは何にも報告を受けずに、ゼミのグループ分けされた名簿表を見てその事実を知りました。だって、友達の名前が当たり前のように無いのですから。
結果、私たちは三人グループになり、残りの大学生活を過ごすことになりました。
この不安定な幸先悪いスタートから、二年生が始まったのです。
さて、感が良い人はもう気付いたのではないでしょうか?はい、その通りです。
二人と一人に分かれ、私は一人のほうになりました。
そりゃそうですよね。考えてみてください。
もともとZちゃんとその友達は仲が良くて、四人グループになる前から一緒にいたのですから。私は言うなれば、部外者です。
Zちゃんは趣味が本当に広くて、友達とよく映画やドラマや俳優の話をして盛り上がっていました。
その辺に疎い私は置いてけぼり。最初は頑張って色々質問してみたり、オススメ聞いたりしていましたが、ドラマや映画はすごい勢いで新作が出てきます。
話が毎回変わってしまうので、疲れてやめました。
好きなお話をしている時は、話についていけていない友達がいても、どんどん話してしまうものではありませんか?
もしかしたら、それでも自我を保って、周りの雰囲気を優先してくれる優しい人もいるかもしれません。
ですが、私は前者のほうが多いと思っているので、これは致し方ないと諦めていました。
そんな私はどうしていたのかというと、サークル(漫研)でその孤独感を埋めていました。
オススメのアニメを見たり、逆に私が布教したりして上手くやり過ごしていたのです。
しかし、試練はまだ終わりません。
なんと、私以外の人たちは皆、VTuberやボカロが好きということが発覚しました。
私はまず、それが何なのかさえ危ういほど世間知らずで、これがまた頭を抱えました。
正直に言いますと、全然興味を持てなかったのですよね。もし好きな人がいたら、すみません。本当にすみません。
その話になると私以外は丸まって楽しそうに話すけれど、わからない私はその場で作り笑いするしかありませんでした。
サークルの皆でカラオケ行っても、VTuberやボカロの歌がわからなくて乗れない。
「なんでハマらないの?」と聞かれても、ハマらなかったからとしか言い様がありません。
かといって無理矢理話に入ってしまうと、知らないくせにとイライラさせてしまうことがあるのを知っています。これは中学生の時に経験しました。
そして、何よりも話についていけていない私への哀れみの眼差しがつらかったです。
どうして私はその場その場を楽しめないのだろうと自分を責め続けました。
好きなものが人と違いすぎること、周りが好きなものにハマれない自分の感性、どこでも感じる疎外感。
ここまでくると、一人になれという運命なのですかね。神様も皮肉なものですよまったく。
そして、お待たせしました。ここでZちゃん単体のお話に移行します。
Zちゃんは基本的に良い子なので、私と二人きりで出かけてくれたりしました。食べ物の好みも合うので、一緒に何回もご飯に誘ってくれました。
私という人間は単純なものですから、おかげで、ものすごい鬱になることもなく、孤独感絶頂期もそこまでひどくならなかったです。
Zちゃんのことが大好きでしたし、彼女に助けられることがたくさんありました。
感謝してもしきれません。
そんな彼女にあれ?と思い始めたのは、本当に些細なことがきっかけでした。
Zちゃんはやたら男子の側に行きたがり、私が男子と話していると必ず割って入ってきます。
さらに、私とお話していても、途中で男子のほうに行くくらいです。
前にも、私と絵しりとりしているというのに、気付いたら途中から男子とトランプしていました。(笑)
Zちゃんには初めて仲良くなった時から、「男の人が嫌い」だと聞かされていました。何でも昔児童ポルノに遭ったことが原因のようで、「雄ムリ」が口癖なくらいです。
また、最近になってZちゃんは彼氏ができたようでした。酔っ払った相手から何度も電話で「会いたい」と言われて、絆され、告白されて付き合ったと言っていました。
今ではどんな話をしていても彼氏のことばかり。しかも、その彼氏は返信を数日後に返したり、未成年で煙草をポイ捨てするような人らしいのですが、嫌われたくないから注意できないと嘆いています。
その優しさは優しさではない。彼のことが本当に好きなら注意すべきと説教しましたが、聞いてもらえることはありませんでした。
性格悪くてすみません。
どうもおかしいなと思ったのですよね。全然余裕で男の人のこと好きじゃないか?と感じます。そして彼氏ができてからそれにも拍車がかかったのではないかと思うのです。
私自身が恋人がいないため、女子のやっかみだと思われても仕方ないのかもしれませんが、事実、これは私の考えがあっていると思うのです。
男子克服のために頑張っているのかもと考えたこともありますが、結局腑に落ちませんでした。
どうしてかって?こんなこともあったからです。
とある私の好きなアニメの一番くじがあったのですが、Zちゃんはくじを引くのが好きという理由で、一回だけそれを私と一緒に引きました(私はすでに引いていた)。Zちゃんはそのアニメには興味なかったのですが、後ろに並んでいた男子がなんと、一番くじで当てた商品をZちゃんがそのアニメを好きと勘違いし、譲ってきたのです。
しかもその譲ってきた商品は私の好きなキャラのものでした。Zちゃんはそれを喜んでもらい受けましたが、私は困惑が増すばかり。だってZちゃんはそのアニメ自体に興味ないのです。なので、商品はいらないはずです。ましてや、Zちゃんが好きと思ってわざわざ譲ってきた男子のことを考えれば、いくら好きなキャラといっても私がもらうのはなんか気が引けますし、違う気がするのです。
案の定、Zちゃんは商品をいらないと言いました。でも私ももらうことができない面倒な性格です。例えばこれがもし、男子が可愛いZちゃんにカッコつけたくて渡したのに、実はそのアニメが本当に好きなのは私で、もらったのは私だと知った時に、がっかりさせてしまうと思うのです。そのちょっとした不安をZちゃんに伝えたら、そんなことを考えるような人には見えないと冷たい目を向けられてしまいました。
だったら私たちが一緒に所属している部室に飾れば、平等で良いかもと思いましたが、それはせっかくくれたのに失礼だと怒られてしまいました。
じゃあどうして嬉しそうにもらったんだと思いました。私がこんなにウジウジ簡単なことで悩むことをZちゃんはわかっていると受け入れてくれました。しかし、私をわかってくれているのなら、男子には大丈夫ですと断ればよかったのです。
デレデレしながら会話していたのを、私は見逃しませんでした。
もう一つ。Zちゃんは、よく人に対して「雑魚」「死ねよ」「最悪」「キモい」「黙れよ」と言った言葉を遣うのです。
私は一回、私も言い返して大丈夫だよね?と考えて「お前も最悪だよ」的な感じで言い返したら、「○○ってひどいよね」と不機嫌になりました。
また、彼女には急に「○○とは卒業時に縁を切るかもね」と言われた始末です。
まあ、それだけだったら別にまだ気にはしません。その後に、「△△(Zちゃんの友達の名前)とは一生友達でいると思う」と言われたのです。
それがグサッとなりました。それを私に言うのか……とともかく不思議でしたね。
そしてZちゃんは自分の顔をこれでもかというくらい悪く言います。男子にこれだけちやほやされて、自分を好きだと言ってくれる彼氏がいて、同性の友達含め周りからも可愛いと言われまくっているのに、です。
容姿でいじめられたこともないくせに。街中で低い点数をつけられ、嘲笑われたこともないくせに。そんな幸せな状況で生きてきて、何故自分の顔をボロクソに言うのか。
Zちゃんでそれなら、私なんて汚物に並んでしまいますよ。
やはり、理解できないのです。
これが明るくて可愛くて優しい彼女の裏の顔なのかもしれませんが、許容できる部分とできない部分があります。
嫌な部分とか、受け入れられない部分とかそれを認めてこそ友達。昔、誰かから聞いたことがあります。
私としては言われてばかりはどうしても癪なのです。腹も立ちます。こんな私と言えど、プライドはありますから。変なところで謙虚で、なのに私のことはどこか下に見ているような節がある。
Zちゃん曰く、心を許したら口が悪くなるのだということ。個人的にあまり、嬉しいとは言い難いですね。毎度私のほうは顔色を見ながら言葉に気を付けないといけないので、疲れがとんでもありません。
このくらい彼女の人間性ですから、受け止めてあげたいという気持ちもありました。Zちゃんには恩もありますし、すごく嫌いなわけでもないのです。
ですが、拭いきれない違和感があるのです。
彼女と私は、本当に友達が合っているのか……?と。
縁を切るかもとZちゃん本人が言ったことなので、本当に縁を切ったら楽になれるのでしょうか。私もこんな風にどんどん自分を嫌いになっていくこともないのでしょうか。
具合悪くなるほど考えたことを覚えています。
こんなことで悩むか?そう思う人も中にはいるでしょう。言った通り、本当に小さな小さな些細なことですから。気にする私が子どもで、器が小さくて、寛容ではないからかもしれません。
私がもう少し真っ当であったなら、こんなに悩むこともなかったでしょうね。
今はこういう子だからと割り切って、Zちゃんと持ちつ持たれつな関係を続けています。
なんだかんだ、離れるかどうかになるのはその時が来るまでわかりませんからね。
運命に任せようと思っています。
だから、私たちがどうなるのかは神のみぞ知るってことで。
さ、かなり長く話してしまいましたね。
今回も薄っぺらい私のお話を聞いてくださり、ありがとうございました。
もしこの私の経験があなたの記憶の一部に刻まれるのなら、きっと私はこの経験をしてよかったと思えるでしょうね。
ではまたどこかで。あなたの人間関係に、幸があらんことを。
痛々しいネタ文豪なりきりです。
温かい心で読んでくだされば嬉しいです。
人間って難しいですね。実に面白い