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フェノメノン  作者: xtakashi
第1章 飛翔
9/13

第9話 迫りくる侵略者

第9話です。




「すまねぇ! ここのシェルターは定員オーバーだ! 悪いが他をあたってくれ!」


 クリスとセレナは、混沌とする首都バーンズの町中を、避難場所を求めてひたすら駆け回っていた。

 途中、大荷物を抱える人、小さな子供連れ、老人などの移動、避難の手助けをし、騒ぎに応じて火事場泥棒を働こうとする、不逞の輩をとっちめていたため、予想以上に時間を食ってしまった。


 先ほどから、二人でかなりの時間、探し回っているにもかかわらず、一向に空いているシェルターを見つけられない。


「はあ、はあ……いやね、私だって、宮使いの、身分では、ある、わけなんで、市民の、皆様の、安心と、安全が、第一では、ありますよ、でも、もう、ちょっと、自分、勝手、でも、よかった、んじゃ、ないかな、って、思ったり、なんか、したり、して……」

 息も絶え絶えで、汗にまみれた顔になりながらも、不謹慎な軽口をたたくセレナ。


 ちなみに、困っている人を見かけると、真っ先に手助けをし、火事場泥棒に対して、積極的にトンファーキックを食らわしていたのは、ほかならぬセレナのほうであったのだが。


 そんなセレナに対し、苦笑しつつもほほえましい顔を向けるクリス。





 ふと、東の地平線の向こうを指さしながら、騒ぎ声をあげる人々がいることに、クリスは気づいた。


 クリスもつられて、人々が指さすほうを確認する。

 まだ距離は離れているが、東の方角、地平線の先に、うっすらと砂埃と、影のようなものが見える。

 よく見ると、その影は複数、確認が出来るうえ、すべてこちらに高速で移動しているようだ。


「あれは……!」

 影の大きさ、速度から、十中八九、アーマーフレームの大群であると、クリスはあたりをつける。


 そうこうしているうちに、首都の各所に設置されている、防衛砲台が、影に向かって一斉に火を放った。

 また、一般兵士がけん引する、複数のけん引式火砲からの砲撃も加わり、雨あられとなって、侵略者たちに襲い掛かった。


 


 この世界における「火薬」の発明は、近代社会と比べてはるかに進化が遅れている。

 そのかわり、彼らには「魔力」「魔導」といった、火薬に代わるエネルギーの軍事利用、転用が、圧倒的に進んでいた。


 詳細は省くが、バーンズの防衛砲台、けん引式火砲から発射される砲弾も、火薬によるものではない。

 一種の魔力エネルギーを凝縮したものを打ち出している、と考えればわかりやすい。

 見た目は、現代的にいうと、プラズマ砲に近い。


 しかし、この世界における遠距離攻撃の手段は、良くも悪くも「魔力」に依存している。

 例えば、魔力適性の低い人間のバズーカ砲と、魔力適性の高い人間の拳銃では、拳銃のほうが威力、射程距離、精密性に優れているのだ。


 固定砲台や、火砲を運用する兵士は押しなべて、魔力適性が低いとされ、アーマーフレームの搭乗者から漏れてしまった人間である。

 威力のほうは推して知るべし、といったところなのだ。


 それでも、直撃さえすれば、場合によってはアーマーフレームにも、ある程度有効なダメージを与えることができる。あくまで直撃さえすれば、だが。


 ウラテア帝国副将、ドミニク率いる先行威力偵察部隊、その数計31機。

 降り注ぐ砲弾の間を悠々とすりぬけ、障害となる砲台、けん引式火砲を適宜、蹂躙しながら、首都バーンズまで高速で近づいていた。




 

 続いて人々は、自分たちのいる首都バーンズ側のほうから、複数の機影が出撃したことを確認した。

 赤色の塗装が施された機影を先頭に、引き絞られた弓矢のように、シルバーの塗装が施された複数の機影が、次々と大空へと放たれていく。


 とたんに、町中の人々から、歓声が上がった。


 これこそ、サルデニア王国の誇る最大戦力、「ク()()()()()()()」のアーマーフレーム部隊。

 人々の希望の光であり、民衆を庇護し、敵を打ち倒す、文字通り、(クレイモア)なのだ。




 赤き鷹こと、サラ・カーティスの駆るアーマーフレームは、オリジナルフレームのうちの一つである。

 フレームのパーソナルコードは「クリムゾン・プライド」。


 彼女の髪と同じように、全身を燃えるような赤い塗装で覆われている。

 汎用フレームと異なり、装甲をある程度犠牲にして、機動性を確保。彼女の特性を考慮し、近接戦闘に特化している。

 機動力を生かした一撃離脱戦法、まさに「蝶のように舞い、蜂のように刺す」戦術を得意としている。

 その戦う様子と、真っ赤な塗装、胸にある鷹のエンブレムから、「赤き鷹」として、諸外国にも名が知れ渡っていた。


 そんな彼女は、自分の部下たる銀色の勇士、18名を現在携えていた。


 国を脅かさんとするならず者たちを打ち倒すべく、()()()()()()となって、今まさに獲物に襲い掛かろうとしていた。






 

 敬愛するロレント将軍に倣い、自らも先頭に立って進軍するドミニク副将。


 運悪く、部下3名が砲撃に被弾したが、損傷は軽微で、作戦遂行そのものに支障はない。

 ついに首都バーンズの街並み、そして怨敵の姿も同時にとらえた。


 自分たちと同じく、アーマーフレームの軍勢。その数約20機。

 ドミニクは、獲物を目の前にし、自然と口角が上がるのを自覚した。


 しかし、彼は腐っても由緒正しきウルキア軍人。

 作戦遂行を第一優先と、すぐに頭を切り替え、魔導通信のスイッチを入れた。

「敵アーマーフレームを確認した。しかしよいか! 我々の第一目標は、施設攻撃によって首都機能を混乱させることにある。そのことを忘れるな! そして、あの赤い鷹は、予定通り私と、2番、3番機が相手をする! それでは散会!!」



 その言葉を合図に、ウラテア帝国のアーマーフレーム部隊は、事前の打ち合わせ通り、各機が一斉に行動を開始する。


 黒い塗装が施された彼らが広がっていく様は、さながら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()であった。


次回、ようやく戦闘描写が出てきます。

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