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フェノメノン  作者: xtakashi
第1章 飛翔
13/13

第13話 フェノメノン

前回、ようやく主人公がやる気を出しましたが、はてさて。




「よう、来たか! 待ってたぜ! こっちは準備万端だ!」

 兵舎に到着したクリスを待っていたのは、すでに出撃準備を終えた汎用型フレームが1機。

 そして、一人の大柄で、野性味あふれる男であった。


「カルロスさん……?」

「おい、おい、何をボケっとしてんだ! 時間がねえんだから、さっさと乗りな! 奴らの攻撃で、多少地面に凹凸ができちまったが、お前さんなら問題なく発進できるだろうよ」


 そう促され、さっそくアーマーフレームにクリスは乗り込む。

 クリスは機器を操作し、出撃前の機体チェックを行うが、今のところすべて完璧に準備されていた。

「ああ、それと、お前さんの模擬戦の結果を踏まえて、プラスアルファでちょこっとだけ、調整しておいたぜ。問題なけりゃあいいが」


 そういわれたクリスは、各種計器、駆動部の状態を改めて確認する。


 機体の調整は、彼の本来、最も得意とする戦闘スタイルである、「高機動よりの中量機体」にすべて、最適化された状態で調整されていた。

 思わず目を見張るクリス。


「完璧です、カルロスさん……ありがとうございます。あなたほどのエンジニアは、俺の前の世界すべてのエンジニアの中でも、間違いなく5本の指に入ります」


 そういわれたカルロスは、「けっ」という言葉と共に、照れたように横を向く。

「一番と言われないのは心外だが……まあ、誉め言葉として受け取っておくぜ。あとよう、カルロスさんなんて、他人行儀で呼ぶな! 他の連中と同じように、おやっさんでいい! あと、敬語も使うな! 聞いていると、手の甲のあたりがかゆくなってしょうがねぇ」


 照れくさそうに、頭をかきながらそう話すカルロスに、クリスは思わず笑顔がこぼれた。

「わかったよ……()()()()()。じゃあ行ってくる」


「おお、行ってこい! 後の整備のことは気にしなくていいからな、存分に行って暴れてこい!!」





 カルロスの言葉を背に、東の空へ、颯爽と出撃するクリス。


 前の世界で「超常現象(フェノメノン)」とまで呼ばれた天才フレーム乗りが、ついに、異世界の地で戦場へと躍り出たのであった。













 後退していくウラテアのアーマーフレーム部隊を追撃する、クレイモア騎士団。

 戦闘が困難と判断されたフレーム5機は、後ろに後退させ、残りの14機のフレームが、憎き侵略者の背を追いかける。


 狙うは、その先にあるはずの敵対象の首一つ。彼らは金剛の意思を胸に秘め、まるで一つの生き物になったかのように、一丸となって進んでいく。


 やがて、追いかける敵のスピードが徐々に緩やかとなる。

 よく見ると、部隊のさらに先前方に、丘のような高台が見える。そして、その丘の上に、複数の黒い影がみてとれた。

 その中で、悠然とたたずむ中心にいる影は、周囲のものと比較し、ひときわ大きな存在感を放っていた。


 それこそが、ロレント将軍の乗るアーマーフレーム。オリジナルフレームの「エメラルド・ケイオス」である。


 黒を基調としたカラーに、エメラルドグリーンのラインがいたるところに施されている。

 また、ウラテア帝国を象徴するハゲワシは、金色の意匠で、左胸にあつらえてある。ロレント将軍の気性を表しているがごとく、全身が荒々しい装飾で覆われていた。


 とたんに、ドミニク率いるアーマーフレーム部隊が、左右に散会した。

 サラを先頭として、高速で前進するクレイモア騎士団の前に、ロレントは高台からその全身を悠々とさらす。


「よくぞ来た! サルデニアの勇士たちよ。早速だが、歓迎の()()のプレゼントを贈ろう! なに、()()()()()()()()()()()()()()()!!」


 その瞬間、高台上で、エメラルド・ケイオスの左右に展開する50機のアーマーフレームから、一斉にりゅう弾砲が発射された。


 すさまじい爆音とともに、クレイモア騎士団に弾丸の雨が迫りくる。



 しかし、彼らは、その歩みを一切止めることはない。


 最短、最速で、自分たちの騎士団長を、敵総大将の眼前まで送り届ける。

 彼らの意思は、強固となりて、一つになった。


 あるものは、自分の身を犠牲にして、サラの身をかばい、あるものは敵を引き付けるため、自爆覚悟で敵に突入する。


 そんな彼らの思いを背にのせ、サラ・カーティスのかるクリムゾン・プライドは、ただまっすぐに突き進む。



 サラをかばい、左前方に躍り出た、騎士団のライリーの機体に、りゅう弾が直撃する。


 彼は、サラが騎士団の団長に着任した当初から、直情的な彼女をたびたび諫めていた。

 サラは、時にそれを煩わしくも感じることがあったが、それでも彼が、だれよりもサルデニアを、クレイモア騎士団を愛し、そしてサラを尊敬していたかを知っていた。


 今の一撃、場合によっては、ライリーは即死しているかもしれない。


 自分たちの被害にサラが動揺しないよう、ライリーをはじめとする騎士団全員が、あえて通信のスイッチを切っていたため、詳細はわからない。

 いったい今日一日で、何人の騎士団がこれまで死んで、そしてこれから死ぬのだろうか。


 サラにとっては、若い自分を文句も言わず支えてくれている、全員が、かけがえのない戦友たちだった。

 しかし、それを悲しみ、嘆く暇は、いまのサラにはない。今はただ、前へ、わき目も降らずとにかく前へ! 



 サラは前方の、エメラルド模様の、侵略者の親玉めがけて、ただひたすら駆けていった。




ようやくタイトルの回収もしました。

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