第13話 フェノメノン
前回、ようやく主人公がやる気を出しましたが、はてさて。
「よう、来たか! 待ってたぜ! こっちは準備万端だ!」
兵舎に到着したクリスを待っていたのは、すでに出撃準備を終えた汎用型フレームが1機。
そして、一人の大柄で、野性味あふれる男であった。
「カルロスさん……?」
「おい、おい、何をボケっとしてんだ! 時間がねえんだから、さっさと乗りな! 奴らの攻撃で、多少地面に凹凸ができちまったが、お前さんなら問題なく発進できるだろうよ」
そう促され、さっそくアーマーフレームにクリスは乗り込む。
クリスは機器を操作し、出撃前の機体チェックを行うが、今のところすべて完璧に準備されていた。
「ああ、それと、お前さんの模擬戦の結果を踏まえて、プラスアルファでちょこっとだけ、調整しておいたぜ。問題なけりゃあいいが」
そういわれたクリスは、各種計器、駆動部の状態を改めて確認する。
機体の調整は、彼の本来、最も得意とする戦闘スタイルである、「高機動よりの中量機体」にすべて、最適化された状態で調整されていた。
思わず目を見張るクリス。
「完璧です、カルロスさん……ありがとうございます。あなたほどのエンジニアは、俺の前の世界すべてのエンジニアの中でも、間違いなく5本の指に入ります」
そういわれたカルロスは、「けっ」という言葉と共に、照れたように横を向く。
「一番と言われないのは心外だが……まあ、誉め言葉として受け取っておくぜ。あとよう、カルロスさんなんて、他人行儀で呼ぶな! 他の連中と同じように、おやっさんでいい! あと、敬語も使うな! 聞いていると、手の甲のあたりがかゆくなってしょうがねぇ」
照れくさそうに、頭をかきながらそう話すカルロスに、クリスは思わず笑顔がこぼれた。
「わかったよ……おやっさん。じゃあ行ってくる」
「おお、行ってこい! 後の整備のことは気にしなくていいからな、存分に行って暴れてこい!!」
カルロスの言葉を背に、東の空へ、颯爽と出撃するクリス。
前の世界で「超常現象」とまで呼ばれた天才フレーム乗りが、ついに、異世界の地で戦場へと躍り出たのであった。
後退していくウラテアのアーマーフレーム部隊を追撃する、クレイモア騎士団。
戦闘が困難と判断されたフレーム5機は、後ろに後退させ、残りの14機のフレームが、憎き侵略者の背を追いかける。
狙うは、その先にあるはずの敵対象の首一つ。彼らは金剛の意思を胸に秘め、まるで一つの生き物になったかのように、一丸となって進んでいく。
やがて、追いかける敵のスピードが徐々に緩やかとなる。
よく見ると、部隊のさらに先前方に、丘のような高台が見える。そして、その丘の上に、複数の黒い影がみてとれた。
その中で、悠然とたたずむ中心にいる影は、周囲のものと比較し、ひときわ大きな存在感を放っていた。
それこそが、ロレント将軍の乗るアーマーフレーム。オリジナルフレームの「エメラルド・ケイオス」である。
黒を基調としたカラーに、エメラルドグリーンのラインがいたるところに施されている。
また、ウラテア帝国を象徴するハゲワシは、金色の意匠で、左胸にあつらえてある。ロレント将軍の気性を表しているがごとく、全身が荒々しい装飾で覆われていた。
とたんに、ドミニク率いるアーマーフレーム部隊が、左右に散会した。
サラを先頭として、高速で前進するクレイモア騎士団の前に、ロレントは高台からその全身を悠々とさらす。
「よくぞ来た! サルデニアの勇士たちよ。早速だが、歓迎の祝砲のプレゼントを贈ろう! なに、遠慮せず、存分に受け取りたまえ!!」
その瞬間、高台上で、エメラルド・ケイオスの左右に展開する50機のアーマーフレームから、一斉にりゅう弾砲が発射された。
すさまじい爆音とともに、クレイモア騎士団に弾丸の雨が迫りくる。
しかし、彼らは、その歩みを一切止めることはない。
最短、最速で、自分たちの騎士団長を、敵総大将の眼前まで送り届ける。
彼らの意思は、強固となりて、一つになった。
あるものは、自分の身を犠牲にして、サラの身をかばい、あるものは敵を引き付けるため、自爆覚悟で敵に突入する。
そんな彼らの思いを背にのせ、サラ・カーティスのかるクリムゾン・プライドは、ただまっすぐに突き進む。
サラをかばい、左前方に躍り出た、騎士団のライリーの機体に、りゅう弾が直撃する。
彼は、サラが騎士団の団長に着任した当初から、直情的な彼女をたびたび諫めていた。
サラは、時にそれを煩わしくも感じることがあったが、それでも彼が、だれよりもサルデニアを、クレイモア騎士団を愛し、そしてサラを尊敬していたかを知っていた。
今の一撃、場合によっては、ライリーは即死しているかもしれない。
自分たちの被害にサラが動揺しないよう、ライリーをはじめとする騎士団全員が、あえて通信のスイッチを切っていたため、詳細はわからない。
いったい今日一日で、何人の騎士団がこれまで死んで、そしてこれから死ぬのだろうか。
サラにとっては、若い自分を文句も言わず支えてくれている、全員が、かけがえのない戦友たちだった。
しかし、それを悲しみ、嘆く暇は、いまのサラにはない。今はただ、前へ、わき目も降らずとにかく前へ!
サラは前方の、エメラルド模様の、侵略者の親玉めがけて、ただひたすら駆けていった。
ようやくタイトルの回収もしました。




