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フェノメノン  作者: xtakashi
第1章 飛翔
11/13

第11話 激突

11話にして、ようやく戦闘描写が出てきましよ、奥さん。


BGMは、ACfaの4 The Answerでも流しながらご覧くださいませ。

https://www.youtube.com/watch?v=c21Uvj0KS-I




 ドミニクはいらだっていた。


 彼の乗るアーマーフレームは、オリジナルフレームの一つ。

 フレームのパーソナルコードは「バウンダー・グリーン」。


 文字通り、緑色を基調としたカラーリングに、ウラテア帝国でよくみられる、黒のカラーが所々に施されている。

 自動小銃オートマチックライフルを右腕に、短剣(ショートブレード)を左腕に装備し、中距離戦を主戦場とした機体だ。


 彼に随行する2機の汎用型フレームも、若干型落ちとなるが、自動小銃をメインウェポンとした、中距離戦主体の構成である。


 乗っている搭乗者も、副将の2・3番機を務める人間だ。

 いくら汎用型とはいえ、そのなかでも選りすぐりの搭乗者をドミニク自ら選抜している。

 決して甘い相手ではない……のだが。


 3機のアーマーフレームよる執拗な攻撃が、ずいぶんと行われているにもかかわらず、いまだ、目の前のたった1機のアーマーフレームに対し、決定的なダメージを与えるに至っていない。


 しかも、3対1で戦闘中にもかかわらず、クリムゾン・プライドは激突のわずかな隙間を縫って、ほかの騎士団へのフォローまで行っている。




 推進剤を排出する、けたたましい音ともに、ドミニクの乗るフレームへ赤い鷹が近づいてくる。


 真正面から突っ込んでくるところを、自動小銃でハチの巣にしようと、ドミニクがトリガーを引いた次の瞬間、視界から鷹が消えた。


 やつはどこだ! とドミニクは周囲を警戒する。

 ……とその時、自分の目の前に不自然な「影」があることに、ドミニクは気づく。


 ドミニクは、とっさに左手にある短剣を、自機の上方にかざす。

 ガギィィィンという鈍い金属音とともに、すさまじい衝撃が落ちてきた。


 クリムゾン・プライドが、バウンダー・グリーンの眼前で、瞬間的に飛び上がり、自機の自由落下と推進装置の力を利用して、大剣を振り下ろしてきたのだ。

 それを、すんでのところで何とか受け止めることに成功し、冷や汗をかくドミニク。

 目の前の計器から、自機の左腕に異常を示す警報がなっている。どうやら、今の衝撃で左腕の駆動部に、何らかの異常が発生したようだ。


 しかし、この距離であれば、自動小銃を確実に命中させることができる。そう思い、再びトリガーを絞ろうとした……が、すでに敵は、自分の前方、かなり距離を離されていた。


 ドミニクの攻撃とほぼ同時に、ドミニクの部下である2機のフレームによる、自動小銃の一斉射撃がクリムゾン・プライドに襲い掛かる。

 しかし、高速で、上下に、左右にと、縦横無尽に推進装置を鳴り響かせる赤き鷹は、またしても弾雨を潜り抜けた。


 思うようにいかない苛立たしさから、思わずドミニクは、操縦席で一人、舌打ちを打つ。


 自身の心を落ち着かせるためにも、改めてドミニクは、自分の部下たちに対し、報告を求めた。

 すでに両軍入り乱れての乱戦状態になり、しばらく時間が経過していた。今はとにかく、現状を把握することが重要であると、ドミニクは判断した。


 当初、アーマーフレームの数の上では、自軍31機に対し、敵は19機。普通に考えれば、こちらが間違いなく優勢。


 しかし、次々と部下から上がってくる報告に、ドミニクは思わず耳を疑った。


 こちらの戦闘行動が可能なアーマーフレームは、すでに20機まで数を減らしていた。

 対して、サルデニアのほうは、おおよそ14機がまだ戦闘行動が可能であるというのだ。


(クレイモア騎士団……! これほどのものか!)

 ぎりぎりと、歯を食いしばる音が、バウンダー・グリーンの操縦室内に響き渡る。


「ドミニク副将、戦況は現状、芳しくありません。ロレント将軍もおっしゃるように、無理攻めをせず、一度退いたほうが……?」


 部下からの進言に対し、当たり散らしたくなる気持ちを何とか抑え、ドミニクはうなるように指示を出す。

「……やむを得ん。すでにある程度、当初の目的は達成した。ここは一度、将軍の元まで引くぞ!!」







「はあっ……はあっ……」

 サラは、クリムゾン・プライドの中で、大きく息を荒くしていた。


 3機のアーマーフレームを同時に相手とし、そのうちの1機はランカーでもある。

 サルデニア最強と呼ばれるサラにとっても、決して楽をできる相手ではなかった。


 また、目の前の相手をただ撃破するだけでなく、数で劣る味方へのフォロー、そして自分たちの故郷が、なるべく被害を受けないように、流れ弾などにも気を使って、立ち回らなければならない。


 そうした一連の状況が重なり、サラは、予想以上に神経をすり減らしていた。


 しかし、泣き言をいっている暇などない。

 今はとにかく、自分ができる最大限のことを、最大の集中力をもって実行するだけだ。

 サラは、改めて大きく息を吐きだすと、操縦桿を握り直し、決意を新たにする。




 ……と、先ほどまでと、敵の動きがどうにもおかしい。

 激しかった攻撃の勢いは弱まり、サラににしつこくまとわりついていた、3機のアーマーフレームがどんどん後方へと下がっていく。


 周りを見渡すと、ほかの敵アーマーフレームも、続々と後退を始めていた。

 その動きは、整然としており、まるで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、非常にスムーズな動きである。


「おのれ……! 逃げるか悪漢ども!!」

「サラ団長!」


 サラの機体に、騎士団の一人である、アンディから魔導通信が入る。

「敵の動きがあまりにも()()()()()()。これは、我らを誘い込もうとする罠の可能性があるのでは……?」


 その言葉に対し、うなづきながら、サラは返答する。

「……ああ、違和感は私も持った。これは、十中八九、我らを引き込もうとする罠だろう。……だが、ここはあえて、奴らの誘いに乗る!! 罠を食い破って、奴の首をとる!!」


 クレイモア騎士団のメンバー全員に、緊張が走った。今の言葉で、騎士団全員が意図を理解した。





 サラは、罠とわかっていながら、なぜ誘いに乗ろうとしているのか。

 それはまず、ウラテアを率いているのが「ロレント」だから、というのが大きい。

 ウラテアの誇る猛将。軍人でありながら、古い戦人のよう気性を持つ男。


 彼が噂通りの男なら、最後は必ず自らの手で、特にランカーである自分を打ち倒そうとするはず。

 サラはそう考えていた。


 もともと、サラたちにとっては、圧倒的な不利な状況。数の上では勝ち目がない戦であった。


 先ほどのウラテアの攻撃で、都市機能にも少なくないダメージを負ってしまった。

 サラたちも消耗している。


 サルデニアは全軍を出して、何とかしのいでいるにもかかわらず、ウルテアの、今侵攻してきた相手は、()()()()()()()()()である。

 撤退した彼らが態勢を整え、敵の全軍が再度侵攻してきた場合、数の理で今度こそ、サルデニアはすり潰されてしまうだろう。



 もとより、サラは自分の命はもうないものと考えている。

 しかしそれは、()()()()()()()()()()()()()()()()()


 ロレントなら、自分たちを誘い込んだ先に必ずいる。舌なめずりをしながら、首を長くして待っているはず! 


 細い糸のようなわずかな希望。

 自分たちが勝利を手に入れるためには、()()()()()()()()()()()()()()()()()()



 もちろん、それは一時的な勝利にすぎず、その後、自分は死んで、自国が滅ぼされる未来は変えられないかもしれない。

 しかし、それでも「()()()()()()()()()」。

 自分の大切な友人が、安全な場所まで逃げるための十分な時間が。


 サラは、悲壮な決意を新たに、付き従う部下とともに、後退する敵フレームを、追撃するのであった。




エリックくんはどうなるかは次回へ持ち越しです。

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