第11話 激突
11話にして、ようやく戦闘描写が出てきましよ、奥さん。
BGMは、ACfaの4 The Answerでも流しながらご覧くださいませ。
https://www.youtube.com/watch?v=c21Uvj0KS-I
ドミニクはいらだっていた。
彼の乗るアーマーフレームは、オリジナルフレームの一つ。
フレームのパーソナルコードは「バウンダー・グリーン」。
文字通り、緑色を基調としたカラーリングに、ウラテア帝国でよくみられる、黒のカラーが所々に施されている。
自動小銃を右腕に、短剣を左腕に装備し、中距離戦を主戦場とした機体だ。
彼に随行する2機の汎用型フレームも、若干型落ちとなるが、自動小銃をメインウェポンとした、中距離戦主体の構成である。
乗っている搭乗者も、副将の2・3番機を務める人間だ。
いくら汎用型とはいえ、そのなかでも選りすぐりの搭乗者をドミニク自ら選抜している。
決して甘い相手ではない……のだが。
3機のアーマーフレームよる執拗な攻撃が、ずいぶんと行われているにもかかわらず、いまだ、目の前のたった1機のアーマーフレームに対し、決定的なダメージを与えるに至っていない。
しかも、3対1で戦闘中にもかかわらず、クリムゾン・プライドは激突のわずかな隙間を縫って、ほかの騎士団へのフォローまで行っている。
推進剤を排出する、けたたましい音ともに、ドミニクの乗るフレームへ赤い鷹が近づいてくる。
真正面から突っ込んでくるところを、自動小銃でハチの巣にしようと、ドミニクがトリガーを引いた次の瞬間、視界から鷹が消えた。
やつはどこだ! とドミニクは周囲を警戒する。
……とその時、自分の目の前に不自然な「影」があることに、ドミニクは気づく。
ドミニクは、とっさに左手にある短剣を、自機の上方にかざす。
ガギィィィンという鈍い金属音とともに、すさまじい衝撃が落ちてきた。
クリムゾン・プライドが、バウンダー・グリーンの眼前で、瞬間的に飛び上がり、自機の自由落下と推進装置の力を利用して、大剣を振り下ろしてきたのだ。
それを、すんでのところで何とか受け止めることに成功し、冷や汗をかくドミニク。
目の前の計器から、自機の左腕に異常を示す警報がなっている。どうやら、今の衝撃で左腕の駆動部に、何らかの異常が発生したようだ。
しかし、この距離であれば、自動小銃を確実に命中させることができる。そう思い、再びトリガーを絞ろうとした……が、すでに敵は、自分の前方、かなり距離を離されていた。
ドミニクの攻撃とほぼ同時に、ドミニクの部下である2機のフレームによる、自動小銃の一斉射撃がクリムゾン・プライドに襲い掛かる。
しかし、高速で、上下に、左右にと、縦横無尽に推進装置を鳴り響かせる赤き鷹は、またしても弾雨を潜り抜けた。
思うようにいかない苛立たしさから、思わずドミニクは、操縦席で一人、舌打ちを打つ。
自身の心を落ち着かせるためにも、改めてドミニクは、自分の部下たちに対し、報告を求めた。
すでに両軍入り乱れての乱戦状態になり、しばらく時間が経過していた。今はとにかく、現状を把握することが重要であると、ドミニクは判断した。
当初、アーマーフレームの数の上では、自軍31機に対し、敵は19機。普通に考えれば、こちらが間違いなく優勢。
しかし、次々と部下から上がってくる報告に、ドミニクは思わず耳を疑った。
こちらの戦闘行動が可能なアーマーフレームは、すでに20機まで数を減らしていた。
対して、サルデニアのほうは、おおよそ14機がまだ戦闘行動が可能であるというのだ。
(クレイモア騎士団……! これほどのものか!)
ぎりぎりと、歯を食いしばる音が、バウンダー・グリーンの操縦室内に響き渡る。
「ドミニク副将、戦況は現状、芳しくありません。ロレント将軍もおっしゃるように、無理攻めをせず、一度退いたほうが……?」
部下からの進言に対し、当たり散らしたくなる気持ちを何とか抑え、ドミニクはうなるように指示を出す。
「……やむを得ん。すでにある程度、当初の目的は達成した。ここは一度、将軍の元まで引くぞ!!」
「はあっ……はあっ……」
サラは、クリムゾン・プライドの中で、大きく息を荒くしていた。
3機のアーマーフレームを同時に相手とし、そのうちの1機はランカーでもある。
サルデニア最強と呼ばれるサラにとっても、決して楽をできる相手ではなかった。
また、目の前の相手をただ撃破するだけでなく、数で劣る味方へのフォロー、そして自分たちの故郷が、なるべく被害を受けないように、流れ弾などにも気を使って、立ち回らなければならない。
そうした一連の状況が重なり、サラは、予想以上に神経をすり減らしていた。
しかし、泣き言をいっている暇などない。
今はとにかく、自分ができる最大限のことを、最大の集中力をもって実行するだけだ。
サラは、改めて大きく息を吐きだすと、操縦桿を握り直し、決意を新たにする。
……と、先ほどまでと、敵の動きがどうにもおかしい。
激しかった攻撃の勢いは弱まり、サラににしつこくまとわりついていた、3機のアーマーフレームがどんどん後方へと下がっていく。
周りを見渡すと、ほかの敵アーマーフレームも、続々と後退を始めていた。
その動きは、整然としており、まるであらかじめ、打ち合わせをしていたかのような、非常にスムーズな動きである。
「おのれ……! 逃げるか悪漢ども!!」
「サラ団長!」
サラの機体に、騎士団の一人である、アンディから魔導通信が入る。
「敵の動きがあまりにも綺麗すぎます。これは、我らを誘い込もうとする罠の可能性があるのでは……?」
その言葉に対し、うなづきながら、サラは返答する。
「……ああ、違和感は私も持った。これは、十中八九、我らを引き込もうとする罠だろう。……だが、ここはあえて、奴らの誘いに乗る!! 罠を食い破って、奴の首をとる!!」
クレイモア騎士団のメンバー全員に、緊張が走った。今の言葉で、騎士団全員が意図を理解した。
サラは、罠とわかっていながら、なぜ誘いに乗ろうとしているのか。
それはまず、ウラテアを率いているのが「ロレント」だから、というのが大きい。
ウラテアの誇る猛将。軍人でありながら、古い戦人のよう気性を持つ男。
彼が噂通りの男なら、最後は必ず自らの手で、特にランカーである自分を打ち倒そうとするはず。
サラはそう考えていた。
もともと、サラたちにとっては、圧倒的な不利な状況。数の上では勝ち目がない戦であった。
先ほどのウラテアの攻撃で、都市機能にも少なくないダメージを負ってしまった。
サラたちも消耗している。
サルデニアは全軍を出して、何とかしのいでいるにもかかわらず、ウルテアの、今侵攻してきた相手は、ただの威力偵察部隊である。
撤退した彼らが態勢を整え、敵の全軍が再度侵攻してきた場合、数の理で今度こそ、サルデニアはすり潰されてしまうだろう。
もとより、サラは自分の命はもうないものと考えている。
しかしそれは、勝利をあきらめることと同義ではない。
ロレントなら、自分たちを誘い込んだ先に必ずいる。舌なめずりをしながら、首を長くして待っているはず!
細い糸のようなわずかな希望。
自分たちが勝利を手に入れるためには、乾坤一擲、敵総大将の首を狙うしかない。
もちろん、それは一時的な勝利にすぎず、その後、自分は死んで、自国が滅ぼされる未来は変えられないかもしれない。
しかし、それでも「時間は大幅に稼げる」。
自分の大切な友人が、安全な場所まで逃げるための十分な時間が。
サラは、悲壮な決意を新たに、付き従う部下とともに、後退する敵フレームを、追撃するのであった。
エリックくんはどうなるかは次回へ持ち越しです。




