指宿3.
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毎日AM8:00とPM9:00に投稿!
【本日のPM9:00の投稿はお休みします】
ようこそ!
『スポットライト・オン・ゾンビ!!!!』へ!
慌ただしい毎日の、ちょっとした一時にお付き合い頂き、本当に有難うございます。
僅かな時間ですが、ごゆるりとお楽しみください。
どれくらいそうしていただろうか。
砂風呂に身を任せながら結構な時間ダベっていたような気もするが、そんなマッタリな時間は突然の衝撃音でかき消されてしまう。
ガッシャァッ! ガガガッ! ダァァァンッ!!!
何事かと砂風呂の後方、俺たちが降りてきた道路を見上げると、500メートル先に原型を5分の1無くした黒いワンボックスカーが横転していた。
そして、その周りをノマゾンが取り囲むように移動して行くのを見ると、恐らくあの車の中には生存者がいるのだろうと想像できる。
車が派手に損傷しているみたいだから、怪我は免れないだろう。
そんな横転した車を眺めていると、横倒しになったワンボックスカーのスライドドアが開かれ、中から2人の男女が這い出す。
さらに助手席側の扉が勢いよく開かれる。
そこからも男女2人が姿を見せ、辺りを素早く見回し、倒壊を免れていた小屋に向かって車を飛び降り走って行った。
その中のひとりは頭から血を流しているようで、人間としたら心配になってしまう光景だろうが、ゾンビとしてはヨダレものだ。
自我に目覚めた俺たちは、人間とゾンビの狭間のような存在に思われがちなのだろう。
しかし、ゾンビとなってしまえばだ、どう転んでもゾンビでしか無いものだから、当然ノマゾン同様に生きている人間を見ればゾンビらしく高揚してしまうし、無性に齧りたくなるし、ヨダレもやかましく垂れる。
それこそが『骸の兵士』の使命であり存在意義なのだ。
建物内に入り込まれれば、知恵のないノマゾンでは扉を開く概念が無いものだから、籠城されて攻略にはかなりの時間がかかってしまうだろう。
あるいはノマゾン側が兵糧攻めを狙っているのかもしれないが。
……ないない。
俺たちは互いの顔を見合いながら頷き、そしておもむろに砂の中から這い出して立ち上がる。
しかし、立ち上がれたのは俺とマリアだけで、片足のない詩織は上体だけを起こして俺に視線を向けていた。
晴也は俺の労いが過ぎたのか、こんもり盛られた膝元の砂の山に苦戦を強いられていた。
頑張れ、晴也!
「いいからこの砂退けて下さいよっ!」
ご最もな抗議を受けてしまった。
晴也を掘りあげ詩織を背負い、ノマゾンに紛れながら小屋に張り付き、ノマゾン同様におどろおどろしい動作をしながら中の様子を伺う。
小屋の中には、頭から出血していた男が頭部にタオルを巻き付け、もうひとりの男と一緒に2箇所の出入り口にテーブル等でバリケードを作っている。
女性2人はテーブルや椅子や、バリケードに使えそうなものを移動させては男達に渡し、その連携であっという間バリケードは完成。
残ったテーブルや椅子は、ガラス窓の前に置かれて中を伺えないようにされてしまった。
それでも隙間からは中の様子が伺え、小屋の中の配置は把握出来る。
どうやらここは海の家らしく、30畳程の空間に料理スペースがある以外は完全な箱型空間だ。
俺たちの移動してきた途中に、横倒しになった簡易トイレがいくつも確認出来たから確かだろう。
なので.人間が身を隠す所はそのキッチンスペースの向こうでしか無く、当然その場所に身を潜めたものだから姿を見ることは出来なくなった。
それでも中の様子を記憶した俺たちは、ノマゾンの群れから少し外れて作戦会議を始める。
「今回は速攻で行くぞ。これだけのノマゾンの数だから突破口を開けばなだれ込むだろう。だから今回は待ち伏せは無しだ。如何に素早く人間の場所に行けるかが鍵となるからな。それに砂風呂効果を試す絶好のチャンスだし、気合い入れていこうぜ」
その後、頷きあった俺たちは速やかに行動に移った。
俺は、詩織を背負ったままキッチンスペースが一番近くに見える窓に張り付いて中を伺っている。
反対側の窓にマリアと晴也がひょっこりと顔を覗かせたのを確認し、双方で頷きあった後で俺は真横に居たノマゾンのボディを殴って砂の上に倒す。
その上に、もう何体かのノマゾンを倒して重ねた。
目的の為ならゾンビでも使う、時に非常な特殊部隊『カプカキ』なのだ。
ある程度の高さに積み上げたノマゾンを踏み台にし、思いっきり窓ガラスを蹴り飛ばした。
ガチャャャンッ!!! ガラガラッ! バァァァンッ!!!
派手な音を鳴らして窓ガラスとバリケードを2箇所同時に室内に撒き散らし、詩織を背負った俺と、対面のマリアと晴也が同時に飛び込んだ。
「くそっ! 馬鹿なっ! 何でゾンビが窓を蹴破れるんだっ!」っと、驚愕する怪我をした男。
不思議でしょう?とは言わない。
「「きゃぁぁぁっっっ!!!」」っと、叫びながら抱き合う2人の女性。
ガチ百合なのだろうか。
「ちっきしょぉぉぉっっっ! やられてたまるかぁぁぁっっっ!!!」
っと言って、俺の方に飛びかかってくるタンクトップのマッチョな男。
見ているだけで暑苦しくって嫌いだ。
その男は小屋に飛び散った椅子の破片を取り上げ、俺の横っ面にぶち当てるべく大きく振りかぶって突進してきた。
いよいよ俺の左頬を捉えようとしたところで俺は瞬時にバックステップで躱し、驚愕の表情で空ぶったマッチョ男の首元にカプリと人齧り。
うむ……動きは上々だ。
「ぐぁぁぁっ!!! いってぇぇぇっっっ!!!」
タンクトップのマッチョ男がバランスを崩して床に倒れたのを確認し、詩織をキッチンスペースの横に解放すると、詩織はオドロオドロしく立ち上がって奥で佇む女性を伺い始めた。
「うわっ! うわぁぁぁっ!!!」
こちらを向いて叫ぶ、怪我をした男の後ろからマリアが飛びかかり、うなじ辺りをカプリ。
これで特殊部隊、『カプカキ』の中の『カプリコン』2体の任務は完了だが、砂風呂効果なのか通常より2割増で動けたような気もする。
残る人間は2人で、残った『カプカキ』の中の『カキリコン』2体が獲物を狙っているのだが、俺とマリアが蹴破った窓からはノマゾンが我先に侵入しようとしていた。
「あきらっ! やめてぇぇぇっっっ!!!」
「きゃぁぁぁっっっ!!!」
そう叫んだ女性2人。
せっかくキツく抱き合っていたのに、ひとりは怪我をしていタオルを頭部に巻いた男の方に飛び出し、もうひとりはその場で自らの身体を抱きしめて立ちすくんだ。
恐らくその2人はカップルなのだろう、その女性がマリアから男を引き剥がしてキッチンスペースの方に連れて行こうとした時に、割られた窓からノマゾンがなだれ込んでくる。
その勢いは将棋倒しの行列の様で、かなりの数のノマゾンが倒れ込みながら侵入し、その場で立ち上がる者も居れば這いつくばりながら倒れている男達に襲いかかる者もいた。
オォォォオッッッ……
ガアッ……ガアッ……
ウワァァァァアァァッッッ……
ゴォォオッッッ……
「うわっ! 来るなっ! 来るなぁぁぁっ! うわぁぁぁっっっ!!!」
俺がカプって倒れたマッチョ男は、ノマゾン達に覆いかぶされて見えなくなった。
マリア側の怪我をしている男も、這いつくばりながら襲いかかってくるノマゾンに足を捕まれる。
そして、彼女から剥がされる様に引き摺られて、あっという間に大量のノマゾンの中に悲鳴を残して飲み込まれていった。
「たっ・助けっ……助けてっ! まゆみっ!!! ぎゃぁぁぁっっっ!!!」
そんな悲惨な光景を眺めつつ、こんな所に逃げ込まなければあんな目に合わなかったものをと思っていると、俺の後方で女性2人の悲鳴が室内に響き渡った。
「きゃぁぁぁっっっ! いやぁぁぁっっっ!!!」
「来ないで来ないで来ないで来ないで来ないで来ないで来ないで! いやぁぁぁっっっ!!!」
直ぐにそちらを向くと、破壊された窓からなだれ込んできたノマゾンが、いつの間にか小屋の両隅に逃げ込んだ女性に向けて襲いかかろうとしている所が目に飛び込んできた。
しかしその光景は俺たち、『カプカキ』の面々にとっては宜しくない光景であることは間違いなく、このままでは『カキリコン』の2体のミッションが果たされない。
クソっ!
俺は素早くノマゾンの前に身体を滑り込ませ、動きを止めるように両足を踏ん張って詩織を見ると、詩織はキッチン台の横で固まったまま女性を凝視しているだけだった。
「詩織っ、詩織っ!」
出来るだけ人間に聞こえない様に声を掛けても、ノマゾン達の唸り声で俺の呼び掛けは掻き消されていく。
一方、マリアの方もノマゾンの群れの前で抑え込むように足を踏ん張り、晴也に声を出し続けている。
「晴也っ! 何してんのさ、早く! 早くっ!」
だがしかし、マリア側もノマゾンの唸り声が大き過ぎて晴也に届いておらず、ただただ晴也は驚愕の表情で小屋の隅で悲鳴を上げ続ける女性を、佇んで見ているだけだ。
そろそろ俺もマリアも、大量のノマゾンの進行に足を踏ん張る事が出来なくなってきた。
背中に当たる圧力に、これ以上はもう無理だろうと思ったところで、俺とマリアが海の家の中のノマゾンの呻き声に掻き消されない大声で同時に吠える。
ゴォォォォォォォッッッ!!!
ギャァァァァァァッッッ!!!
その瞬間、小屋の中に二陣の風が吹き抜けていった。
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