福岡県北九州2.
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ようこそ!
『スポットライト・オン・ゾンビ!!!!』へ!
慌ただしい毎日の、ちょっとした一時にお付き合い頂き、本当に有難うございます。
僅かな時間ですが、ごゆるりとお楽しみください。
おっといけない、俺の自己紹介がまだだった。
俺の名前は中村颯太。
享年26歳独身だった男だ。
広島の呉海上自衛隊所属で、一応は海士長の階級を持っている……持っていた。
まぁ、今となってはどちらでも構わないのだけどな。
ゾンビになっちまえば幕僚長だろうと二等海士だろうと、やることは単純に人間を傷付ける事だけで何にも変わらない。
それに、例えどんな階級章を付けていようと、逃げ惑う人間が注意深く見てくれる訳でもない。
ついでに年齢も関係なければ性別だって関係無いと思いながら、マリアと晴也を見やる。
マリアは、ゾンビになる前は22歳のニートで、コンビニでチョコミントを買った帰りにゾンビに襲われたらしい。
今でもたまに、誰も居なくなったコンビニに入り込み、チョコミントを盗み出してはコソッと食べている。
しかし、ゾンビとなった今では味が分からないと嘆いていたし、最近は味すらも思い出せなくなったと言っていた。
誰も居ないんだから堂々と食べればいいのに、ゾンビになっても罪悪感を忘れないところがマリアのいいところなのかもしれない。
晴也は学習塾の帰りに、突然頭上から落ちてきたゾンビに後頭部を齧り取られたらしく、その部分が抉れて腐った脳ミソが僅かばかり覗いている。
高校での成績は常にトップを走り、全国模擬試験では1位を取る程の優秀さで、将来の夢は財務省の官僚だったらしい。
当然、東大を狙っていたと言っていた。
しかし、今現在は脳ミソの一部を齧られてしまい、正気を保てなくなる事がたまにあるようだ。
そんな時は、後頭部を叩いてやって固まった血栓を落としてスッキリさせてやると、この様に正気に戻るのだ。
そんな二人を眺めつつ、ある人物……もう一体のゾンビが居ないことに気付いた瞬間に、自衛隊によって破壊された、俺の5メートル後方の車の向こうから悲鳴が上がった。
「きゃぁぁぁぁぁっっっ!!! 痛い痛い痛いっ! 助けてぇぇぇぇっっっ!!!」
俺たちは互いに顔を見合った後、急いでその車の方に向かう。
しかし、身体が腐りゆくゾンビなだけに、いくら急いで足を動かしても人間の早歩き程のスピードしか出ない為に、俺たちなりの最速で移動すると、そこには人間の女性がうつ伏せで倒れていた。
そしてその女性の左足に齧り付く、一体の少女のゾンビが視界に飛び込んでくる。
グォォォォォッッッ!!!
そう俺が叫ぶと、うつ伏せの女性がこちらを向いて更に驚愕。
「いやぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!! 来ないで来ないでっ!!! 離せぇぇぇっっっ!!!」
っと叫んで、左足に齧り付いたゾンビの頭を右足の踵で何度も踏みつけ、ようやくを引き剥がすと即座に立ち上がって走り去って行った。
その女性の後ろ姿を見ながらマリアは、「後でねぇ」と言いながら、ユルユルと手を振っている。
「どのくらいですかねぇ……」
そんな晴也の呟きに俺は答えた。
「そうだなぁ……あの傷口を見る限り、六時間ってとこじゃねぇか?」
もちろん、あの女性がゾンビになるまでの時間だ。
女性の姿が完全に見えなくなったところで何度も踵で蹴られ、首が90度左に傾いたゾンビがモソモソと上体を起こし、そのままの体制で俺たちの方に視線を向けて……サムズアップ。
「すっげぇぇぇっ、詩織っ! やったじゃねぇか!」
そう俺が叫ぶと、マリアが喜びながら詩織に近づく。
「やったじゃん詩織っ! ゾンビになってようやく初齧り! がんばったねっ!」
晴也も脳髄をチョロリと垂らし、両手を高々と上げて大喜びをする。
「おめでとう詩織ちゃん! これで真のゾンビデビューだねっ!」
有田詩織と出会ったのは晴也と出会う1日前の事だ。
山口県の山陽小野田とか言う市の、とある中学校の校門の鉄扉に足を挟まれたまま動けずにいた所を助けて以降、一緒に行動するようになった。
詩織は中学2年生で、下校する為に学校を出た瞬間にゾンビに襲われそうになったらしい。
校内に逃げようとしたところ、ゾンビの侵入を防ぐべく、他の生徒が鉄扉を閉めた時に運悪く足を挟んでしまい、動けなくなったところを齧られたと言っていた。
どのくらい挟まれていたのかは知らないが、俺とマリアが通りがかった時に声をかけられ解放したという訳だ。
全く……助かりたい一心で詩織を犠牲にするなんてロクな大人にならないぞと憤慨したものだ。
ゾンビとなって校内でヨタヨタと徘徊していたそいつら等を詩織と共に見つけ出し、マリアと共に説教までしてやった。
そんな俺たちの憤りを上の空で聞いていたそいつ等は、白目を向いたまま校門を出て彷徨い始めやがる。
人の……
いやゾンビの……
いやいや俺たちの説教を無視しやがって、そんな奴らはとっとと朽ち果てやがれと強く思った瞬間だった。
彷徨うそいつ等の前に突然、猟友会の爺さん達が現れ、至近距離から散弾銃を発砲する。
そして、ことごとく頭を破壊されたそいつらは、地面に崩れ落ちた。
頭を無くしたそいつ等の身体は暫くのたうち回っていたが、徐々に動きが鈍くなり、最後にはぐったりとして動かなくなった。
自業自得だ、ざまぁみろと思う次第だ。
っと、マリアと小声で言いつつ、猟友会の爺さん達に気付かれないように、校門の裏で口に手をやって息を止める。
早く別のゾンビを仕留めに行けばいいのに、その猟友会の爺さん達はタバコを取り出して一服し始めやがった。
結局俺たちは30分も息を止め、爺さん達が移動するのをひたすら待ち続けたのを思い出す。
ゾンビは呼吸をしなくても問題ない事に気づくのは、それから暫くの事だ。
詩織は校門の鉄扉に足を挟まれてしまっていたので左足首の骨が砕けており、移動するのもかなり遅い。
だから人間を見つけてもまともに追いかけることが出来ず、俺たちと行動を共にし始めて一度も人間に齧り付けなかった。
そんな中で、ようやく人間を齧れた事に、俺たちの感慨深さはひとしおだ。
俺もマリアも晴也も、ヨダレを垂らして大喜びしながら詩織とハイタッチを交わした。
「なんかさっ! 私が車の後ろでバランス崩して倒れたらさっ! 車の下であの人が隠れててさっ! その後は無我夢中だったからどんな風に齧り付いたか忘れちゃったけど、気が付いたら齧り付いててさっ!」
等と、頬を紫色に染めた詩織が興奮気味にその時の事を語ってくれる。
詩織の傾いた首をマリアが頬を掴んで元に戻し、そして二人が……二体のゾンビが熱い抱擁を交わす様子を、俺と晴也はさらにヨダレを垂らして微笑ましく見守っていた。
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