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福岡県北九州1.

 ウォォォッ……

 アアアァァァッ……

 グアッ……ァァァ……

 ゴボッ……ォオォォ……

 ガッ……ガアァァ……


 九州の最北部にある福岡県のとある駅の前。現在迫り来るゾンビの大群の進行を抑えるべく、自衛隊や警官隊が応戦している最中だ。


 ゾンビの群に戦車が砲弾を打ち込み吹き飛ばす。だが、その後ろからまたワラワラと残骸を這い上がって進軍するゾンビの大群。

 自衛隊員が手榴弾で複数のゾンビを炸裂させても後から後から群がってきては、逃げ遅れた市民や自衛隊員に襲いかかる。


 噛みつき引っ掻き傷を付け、そしてまた新たな獲物を目指して移動していくゾンビ。

 傷を負った人々は赤い血液がいつしかどす黒い粘液となって凝固し、腐臭を漂わせた数時間後にゾンビとなって進軍に加わる。



 それが『骸の兵士』だ。



 そうやって本州から関門トンネルや傍にある歩道トンネルを通り、九州の最北部である門司から侵入してきたゾンビの群れ。応戦する自衛隊や警官隊の抵抗を押し込むように増殖しながら獲物を求めて前進して行った。

 獲物を求めて進軍するゾンビや、街中に残り彷徨うゾンビはおよそ15万体程か。


 横浜港に座礁したアメリカ海軍の軍艦で、ひとりの自衛官がゾンビにされてから1ヵ月が経った。増殖していったゾンビの群れは本州全土を目指すように北上する群れと南下する群れに別れる。

 そして、各地で甚大な被害を及ぼすしなが進軍を続けていた。


 本州の西側にある山口県下関では九州に繋がる関門トンネルを爆発。九州への侵入を阻止しようとしたが、歩道側トンネルの爆発が間に合わず、いよいよゾンビの群れが九州に上陸し人々を襲い始める。

 そして、門司からここまで約20キロも人類は後退させられていたのだった。



 そんな『骸の兵士』の群れの中。黒い有名スポーツメーカーのジャージを着たゾンビ……俺が逃げ惑う人間を最もらしい格好で立ち止まって眺めている。必死で逃げていく人間が見えなくなった瞬間の事だ。

 俺は目の前で同じように佇む二体のゾンビに声を掛けた。


「おいっ、人間が見えなくなったぞ。休憩しようぜ」


 すると、目の前に立っている腹部辺りを血液で真っ黒にしたゾンビ。グレーのパーカーに、所々小さく裂かれたデニムを履いた女性のゾンビが伸ばしていた右手をゆっくりと後頭部にあてる。

 グシャグシャになった髪の毛を手櫛で掻きながら背筋を伸ばし、こちらに向き直って声を出した。


「ったく、見えてるから分かってるし。まだまだ目ん玉腐ってなしぃ」


 そんなギャルっぽい口調で気だるげな態度を見せる彼女は、桜坂さくらざかマリア。広島県大竹市で知り合ったゾンビだ。


 俺がいつもの様に人間を追いかけるゾンビに紛れ、人の姿が見えなくなった時だった。漁港の近くのコンビニの裏で一休みしようと移動した時だったか。店の裏からやってきたマリアとバッタリと出会ってしまったのだ。


『うわぁぁぁぁぁっっっ!!!』

『きゃぁぁぁぁぁっっっ!!!』


 壮絶に驚きあった事を思い出す。ただ、俺にはあの頃まであった右耳はもう腐り落ちて無いのだが。


「あの時は心底驚いちゃったし、心臓が動き出すかと思ったくらいなんだからね」


 そう言って、ため息を吐くマリア。まぁ、ゾンビは心臓止まってるからな。


「あの時は悪かったな」と言いながらマリアの先に視線を向ける。そこには後頭部に齧られた跡があるゾンビがヨタヨタと前進を始めるのが見えた。

 まるで本物のゾンビの様に歩くそいつを、俺は大声で呼び止める。


「おいっ! 晴也っ! 休憩しようぜっ! 聞こえてんのかっ!? 晴也ぁぁぁっ!」


 しかし、晴也には俺の声が届いていない様で前進を止めずにいる。すると、目の前のマリアが踵を返しスタスタと晴也の元に行くと齧られている後頭部をバシッと平手打ちした。


「うわっ!!!」


 後頭部を叩かれ前のめりになった晴也。3歩ほど惰性で移動した所で急停止し、上体をこちらに向けて言ってきた。


「ちょっとマリアさん! いきなり後ろから引っ叩くなんてどういうつもりなんでか? もう少しで左目が落ちるところだったじゃないですか」


 そう言いながら左目を元の場所にはめ込んでいるのは、山口県の下関市で知り合った安倍晴也あべはるや。関門橋の下で俺たちがサボっていた時に、俺たちの様子をゴミ箱の中で伺っているのに気付いて声を掛けたのだ。

 何でそんな所に居たのかと聞くと、腐臭がバレずに済むからだとか。


 まぁゾンビに嗅覚はないのだが。


 ゾンビの身でありながら今更腐臭が気になるなんて、まだまだ割り切れて無いのかと。思春期全開の晴也にマリアと二人でため息を吐いたもんだ。

「腐臭に気付かれたら人間に逃げられて齧れなくなる」との正論に論破されたのを思いだす。


「アンタがいつまでもボーッとして人間追っかけようとするからだし! そんなに真面目ぶって誰に褒められようとしてんのさ! これだから優等生は嫌いなのよね」


 と言って晴也から「ふんっ!」と鼻を鳴らしてそっぽを向くマリア。その時に鼻の穴から凝固した血液の玉が飛び出したのを俺は見逃さなかった。

 全くこいつはレディとしての嗜みを忘れてしまってるようだ。


「大きなお世話様っ! ゾンビになる前から腐女子やってたんで嗜みなんてデリート済みですぅ」


 っと言って、紫に変色した舌をデロンと首元まで伸ばすマリア。ゾンビとしての嗜みは上々のようだ。

 しかもゾンビになる前から腐っていた等と、ウイットに飛んだゾンビギャグを言うなんてゾンビセンスの塊の様なゾンビだった。


 クイーン・オブ・ゾンビの称号を与えてやってもいいかも知れない。


「ウケる!」





貴重なお時間を使ってお読み頂き、本当に有難うございました。


興味を持って頂けたならば光栄です。


・面白かった!

・ゾンビ頑張れ!

・次はどうなる!?


と思って下さった方は、ぜひとも画面下の☆から作品への応援をお願いします。


うん、いい!と思っていただけたら★5つ

いやぁまだまだ!と思っていただけたのなら★1つ、素直な気持ちで大丈夫です。


ブックマークを頂けると最高です。


なにとぞ、よろしくお願いします!


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