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食事

 

 大鳥さんことカカオくんはよく食べる。

 なんでも嬉しそうに口にする。

 失敗作もガラクタも、食べる。

 毒だって飲み込む。


 なのにとんでもなく健康体だ。


 胃酸がおかしなことになっているのではないかと思う。


 この前はご主人様の収集品の一つを飲み込んだ。

 呪いの品と名高い逸品で、中に水銀が入った透明の入れ物だ。中の水銀はなぜか赤く、これの所有主だったモノの生き血が混じっているからだと言われている。


 嘴で掴んで、遊んでいるのかと思ったら、そのままごくん、と一息で。




 それを見ていたご主人様と僕は目を点にした。



 どうやったらそんな大きなものが、ごくんとできるのか。


 アレは缶ジュースくらいの大きさだった。小さい口でよく食べれるものだ。

 ご主人様は、別にその品に興味はなかったようで、持って帰ってきて満足した類のものだっただけらしく、怒られはしなかった。ただ、腹の心配をされていた。


 僕は次の日にはコイツ死んでいるんじゃないかと思ったが、生きていた。元気に、あさごはんまだー?と首を傾げていた。


 やっぱり胃酸も胃袋もおかしい。


「カカオくん。実験体が一匹餌行きになったんだけど、焼く? 煮る?」




「ぎゅぁ」



 しまった、鳥語はわからないのだった。



 仕方ないから焼いた。

 カカオくんは美味しそうに頬張っていた。



 何かを食べている時もカカオくんはとても幸せそうな満足そうな顔をして、キラキラと目を輝かせている。


 僕も生絞りジュースを飲む。


 真っ黒い液体に赤い物体が浮かんでいて、なんじゃこりゃって感じの見た目だが、コレはこの世界の木の実を絞ったものだ。浮かんでいるのは残りカス。


 そうやって一人と一匹でほのぼのしてると、後ろからガタンと音がした。ご主人様が起き出してきたようだ。


「おはよう御座います。ご主人」


「あぁ」



 眠た気な顔をしているご主人様に、さて、朝食出すかな、と腰を上げると、横で訝し気な目で見られた。


「何飲んでるんだ? 魔物の生き血か何かか?」



「……え?」


 予想外の反応だった。



「カカドターニャの実を絞って、ジュースにしただけです。()()生き血、飲みませんよ」



 カカドターニャ。毒性があるのは根っこだけ。実は食べられるから問題ない。栄養素が多いのが美点。葉っぱは麻酔や痛み止め、炎症を防ぐ効果がある。



「カカド……あぁ、アレか。よく飲めるな、そんな薬臭いもの」



 確かに湿布の香りがする。慣れれば気にならない。



「湿布とかもコレで作りますから。臭いが一緒なのは仕方ないかと」



 気になるなら臭い消しの薬草と混ぜて飲みます。ニンニクのように口に残るわけではないから、口臭には気を遣っていなかった。



 いや、別にいい、と言われ、そうですか、と端的な返事をする。



「そういえば、この前拾ってきた花をシロップ漬けしたんです。すごく綺麗にできたんですけど」



 朝食の準備をしながら、お喋りする。ご主人様はへぇ、と相槌打ちながら聞いてくれる。


 本当に上手に作れたのだ。ハーバリウムみたいなことになった。拾ってきたとは言うが、山の木の上に生える品種で、綺麗に洗ったので汚れてるわけでもない。花は綺麗な紫色。


 僕は紫色が好きだ。



 不意に、カカオは僕の肩に飛び乗り、もぐしゃぁっと僕の手のパンを…。


 まって、それ今から使う奴。食べないで。


 片手でカカオを止めようとするが、カカオはうまくすり抜けて、パンにがっつく。


「ぎゃぁ」


「ちょっとカカオ。待って下さい……食うな。おいこら」



 口調が乱れた。

 カカオめ、逆さ吊りにしてやろうか。


 両手でカカオを捕まえていると、ご主人様が紐を持ってきてくれた。


 先端を椅子にくくり、反対側をカカオの足にもつけて、リードの完成だ。



 バサバサ音がしてるけど無視。



「今日はそのシロップ漬けとやらを使うのか?」



 ご主人様もカカオを気にせず会話をする。



「いえ、アレは花弁に多量の毒成分が含まれてまして……」



「なんでシロップ漬けにしたんだ」



「後から僕もそう思いました…。なんででしょうねぇ……」




 今度は可食の花弁でやってみよう。食べれる綺麗な花は意外に沢山ある。刺身に乗ってる黄色い花も食べれる。菊だったか。品種までは覚えていないけど。


 そうそう、あのドライフラワーは、編んで輪っかにして僕の部屋の前先に吊るしてある。


 ネームプレートのようで素敵だった。編んでくれたのはご主人様だった。手先が器用なようだ。




 そのシロップ、暗殺とかに使えそうだなーと朗らかに笑うご主人様。



 彼は死体の損傷の少ない殺し方が好きらしく、たまに僕の作った毒を持って仕事に行ったり外出したりする。


 今度使います?と聞くと、それもいいな、と返ってきた。



「ぎゃぁ……ぐぎゃあ!」



「うるさいよ、カカオ」



 前よりも食事風景が、少し賑やかになった。


 今日のご主人様の朝食は、硬めのパンに、野菜スープだった。


 野菜スープというか、トマトスープ。


 こっちの世界だと、トメィト、とかいうらしい。すっごくいいづらい。


「コレも生き血じゃないよな? 俺は食人の趣味はないぞ」



「違います。トマトです」



「……あぁ、アレか。赤い身のやつ。フルーツのイメージだったが……」



 こっちだとトマトはフルーツだったらしい。

 まぁ、バナナが緑で野菜って場所もあったし、この世界でトマトがフルーツでも不思議ではない。


 甘くて美味しいからね。



「くぐあぁ。ぎゃぁぁ」


 あ、カカオが、僕のコップに頭突っ込んでジュース飲んでる。


 ……盗られた。





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