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帰宅(恐らく完結)

 


 失神事件から数日後、僕らは既にお屋敷に帰っていた。

 行きよりも早いのは、シルフィゼリアに寄り道していないからである。そして何より、馬に乗って直行で帰ってきたからというのもあるかも知れない。なんせ、ご主人様と相乗りである。

 慣れない移動手段で足だの尻だのが痛い。


 ご主人様は、帰って早々、しばらく休むと自室にこもった。

 長期出張だったこともあり、だいぶ疲れていたのだろう。


 僕はその間、溜まった埃を掃除したり、お土産の保管をしたりしていた。お土産、買いすぎたかもしれない。

 これはあれだ。お腹を空かせてスーパーに行って、帰ってきていざ仕舞おうとしたら買いすぎたことに気がついた、そんな気分だ。


 やっと落ち着いて、一息ついたあたりで彼は起き出してきた。


 そして何気なく、「これ、土産」と箱を渡された。

 質素ながら質の良い黒い小さな箱である。


 なんだこれはと、中を見ると、ネックレスよりは短くミサンガよりは長い紐が一本。装飾品はそう多くないが、ただの紐というには太い。革か何かだろう。


 アクセサリーを土産にねだったから、コレがそうなのかもしれない。


 紐の両端から見て中心のあたりに何か飾りがついている。

 僕の見たことのない、不思議な丸い形のトップがついている。金属のようだが、銀なのかアルミなのか鋼なのか、僕には見分けがつかなかった。

 そういう職人さんなら見分けがつくのだろうか。


「なんですか、コレ」



 紐を指で摘んで、金属部分に指紋をつけないようにしながら、見つめる。


 ご主人様はにこにこと無邪気に笑って言った。



「首輪」



 せめてチョーカーとか、首飾りとか、他に名称が思いつかなかったのだろうか。


 まるで当然とでもいうかのように、言い放った彼を見て、なんとも微妙な気分になった。


 別に、つけることが嫌なわけではないし、僕は彼の所有物なので、構わないのだが…、それにしたって『首輪』はどうかと思う。



 ご主人様は何か言いたげな顔をしているであろう僕を見て、不思議そうな顔をしつつも、貸して、と僕からソレを受け取った。

 そしてそのまま、僕の後ろに回り込み、器用に髪を避けながら、僕の首にソレをつける。


 金属部分が少し冷たくて、肌にピッタリとフィットしている。肌身離さずつけていたいが、しばらくは違和感や息苦しさに苛まれそうだ、しかし慣れれば問題ないのだろうなと思う。




「うん、似合ってる」




 前からきちんと見つめ、ちょいちょいっと僕の首元で光るソレをつつく彼。

 宝物でも見るかのようなキラキラとした目に、眩しさを感じる。

 相変わらず見目がいい。


 蒼い目を見ていると思うことがある。僕は『外人さん』っぽいと感じることがあるが、そもそもどこの国から見た外人さんなのか。日本とか地球とか、知っている世界観がズレている僕。時々自分自身が分からなくなる。


 そんな時、何も言っていないのに頭を撫で、笑いかけ、慰めてくれるのはいつもご主人様だ。



 しばらく見つめたまま、瞬き以外微動だにせず、数十分。


 いい加減飽きないのだろうか、と思ったが、飽きないからこそこの状況が続いているんだよなと思い直す。





「ご主人へのお土産もいっぱいあるんですよ」


 あんまりにも見つめ続けられて、恥ずかしくなったので、話題を転換させて、リュックの中のお土産をあれこれと紹介していく。

 お菓子、キーホルダー、人形、お菓子、おもちゃ、お菓子、お菓子、お菓子……。

 こう見ると僕は食い気が強いのかもしれない。

 お菓子ばっかり買っている。

 太らないと、いいのだけれど。


 終始、彼は笑顔のままだった。


「菓子などの食材系は早めに食べるように、テーブルの上に置いておこうな」


 いいながらも、揚げ菓子を一つ摘んで食べているご主人様。

 塩やパウダーでもついたのか、行儀悪く舌で指を舐めとる姿が妙に艶かしく感じる。

 ご主人様は今日もセクシーだ。


 そういえば、ご主人様には恋人とかいないのだろうか…見目はいいのだからモテる気がする…。


 いや、死体収集に力を入れる男を好く人は少ないのかもしれない。僕としては自分自身が死体にされない限りは無害だと思うのだが、世間一般ではそうは思わないようだ。



「あ、そうだ。ご主人」


 思い出したので、どこに入れたかとバックやリュックを漁る。

 彼はなんだ、と首を傾げつつ、新たな菓子に手をつける。

 ご主人様もお菓子が好きなようだ。彼は細っこいので、もっとしっかりとした物を食べてほしい。いや、買ってきたのは僕なのだ。美味しく食べてくれればいいか。



「ピアスです。片耳用のですけど。なんか、死体の絵だそうで、ご主人は死体が好きだといっていたので買ったんです」



 いらなかったら、捨てて下さい。そう言いつつも、僕はピアスをテーブルに置いて、自分用のお土産を持って自室に逃走した。


 なんだか恥ずかしくなったのだ。理由は全くわからない。





 部屋に戻って、物を片付けた後、僕は布団に転がった。



 少し、いや、だいぶ疲れた気がする。



 今日はもう寝よう。





 次の日からご主人様は、片耳に死体の絵のピアスをつけていた。どうやら気に入ったらしい。




 彼が気に入ったなら何よりだ。

 僕が選んだものを身につけてくれているということが無性に嬉しく感じる。





『これからも、ご主人とともに平凡な生活が過ごせますように』




 もう、既に。僕の頭の中では、出生の謎も兄弟の存在も全てどうでもいいこととして捨てられていた。

 僕の中身が空っぽだろうと異質だろうと構わないじゃないか。兄弟がいるからってなんなんだ。実際に話したこともないのだからいないも同然だ。僕を作った人?捨てたのはソッチだから、もうただの他人だね、知らないし。


 好きになってしまった、気に入ってしまったご主人様と一緒に過ごせれば後のことは至極どうでもいいことと言って差し障りなかったので、オールオーケーである。




 強いて言うなら、このこと(過去)を伝えた後のご主人様の反応が気になる。嫌われたらどうしよう。






 心配は秒で無かったことになった。



 ご主人様は「へぇ、そっか」で済ましたのである。

 むしろ、もっと珍しいモノだとわかってご機嫌だった。

 名前に対しては、まぁ、気に入ったんならいいんじゃないか?と割と肯定的だった。

 変えたくなったら変えれば良いのだ、とも。

 簡単に名前を変えられる世界らしい。

 いろいろと大変な生まれだったが、良い人に恵まれて、満足だ。




 あぁ、僕は幸せ者だ。



草の国に行ったり兄弟にあったりする案もあるにはあるのですが上手く纏まらなかったです…。

 この後少々小話を投下した後完結にします。


ここまで読んで頂きありがとうございました。

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