従者、兄弟の詳細を知った
「……変わった方であることと、私たちの考えている存在であるという事実がわかりましたね。ええ、あなたは本当に不思議な方です。『トイの』創作物であるのに……」
何が言いたいのか本当によくわからない。
変なものを見る目で彼女を見た後、ご主人様にどうしますかと目線を送ると、彼は微笑みかけてくれる。
先ほどからご機嫌になったご主人様の、切り替えどころがわからない。
「ガトーは、有名な厄介者が生み出した人工物の兄弟の一人だっていう話だ。」
「親(仮)は厄介者なんですか」
「そうそう、厄介者だから、造られたモノも厄介な奴だったのに、ガトーはいい子だから王女サマは驚いているんだ」
へぇ、と難しい話も簡単に理解したご主人様を尊敬の目で見ていると、違うよ、それ違うという目線がその他の方から送られてきた。
僕はそれに気がついたが、訂正の必要はないのだろうなと思ったので聞くのはやめた。
「……少しずれてないか……? まぁいい」
目線の持ち主の一人であった口の悪い男が、僕に声をかける。
「トイの造ったモノは、何かしら力を持つ。お前の力はなんだ」
さも当たり前のように聞かれた。
僕に転生チートなどないのだが。
わからないという風に首を傾げるとご主人様が答えた。
「ガトーに実感はないのか。おそらくその知識だろう」
「知識……」
興味深そうこちらを見つめる周囲の方々少々申し訳なく感じる。
「むしろ箱入りな分知らないことの方が多いのですが」
知識の食い違いはたくさんあるが、特別な知識の覚えはない。
…いや、この転生知識こそ、その特別ってことなのか?
「そうだな……医学とか、食に関する知識もあったな……」
ご主人様の言っているのは、あのなんちゃって応急処置のことだろうか。
「ご主人、あれは医学なんていう大層なモノではありません、応急処置の初歩です」
ご主人様が変な知識を得ても困る。訂正を入れる。
「その君の中の常識が、俺らにとっての非常識で価値のある知識ってことだ」
頭がパンクしそうだ。
よくわからないが、僕はご主人様にとって有用な知識を得ているということでいいのだろうか。
「他のやつらは四人兄弟の可能性を示唆していたが、お前は何か知っているのか」
他のやつらってことは、僕の兄弟(の可能性がある方)と知り合いなのだろうか。
その人に聞けばいいのに。
兄弟…。あの紙で見た人物たちのことであろう。あんまりはっきり覚えていないのだが…。
「兄が二人と姉が一人。姉の方は髪の色が一緒……だったかと。一番上の兄は……ムキムキでした。下の兄はなんかトカゲみたいでした……」
僕の感想に、呆れたような顔をされた。
印象くらいしか覚えていない。
………そういえば、似たような人がイベントに出ていた気がする。
まぁ、いっか。
一通り顔合わせを済ませた後、明後日には帰ろうな、と言われて、ようやくかと思った。
お外に出るのは新鮮で、なかなかいい経験になったとは思うが、危険で怖いことが山積みだったのでもうしばらくは出かけたくない。
その話をしたら妖精、エイリィに残念そうな顔をされた。
「坊ちゃん、面白いからもう少し遊びたかったな」
「いやですよ。僕疲れました。しばらくはご主人とだらだらして過ごしたいです」
僕はインドア派だ。もともと外に出て活発に動くことを好むタイプではない。しかも体力も魔力もない。
ご主人様がいなければ、そこらでのたれ死んでいそうなタイプだ。
つくづくご主人様に感謝する。
「そういえば、シィーフィーが心配してたよ。言いすぎたかなって」
「誰ですか、それ」
なんの話だ。シィーフィーとやらが誰だか、何をしたから心配しているのかがわからない。
「自己紹介したじゃないか…。君を気絶させた男だよ。…ねえ君出会った人ちゃんと覚えてるの?」
呆れたような顔をされ、ああ、あの口の悪い男かと思い出す。
「ええと、妖精さん、双子さん、口の悪い男と王女さん、司会のお姉さんと静かな男の人。…談話室にいたのはこれくらいでしたか」
「えー、名前も覚えていないの」
社会で生きていけるのだろうかと心配そうな顔をされる。
心配は無用である。
「ご主人のことを覚えていれば、後の人全員忘れても問題ないですし、区別がつけばいいだけの話。名前なんてただの識別番号のようなモノでしょう」
あ、ご主人様の名前は覚えた。ノルドっていうんでしょう。
「そういう淡白なところ。トイに似てるんじゃないかと思うよ」
僕は会ったことないのだけれど、あまりいい思い出のない人物だから、似ているとか言わないでほしい。
「ちなみに、私はエイリィ。双子は兄がサガ。妹はウガ。口の悪いのはシィーフィー、王女様はウェンディ。司会のお姉さんはメイ。静かなのはトーマ。名前くらい覚えておいてよ」
そんな一気に言われても、一時間後には忘れていると思う、とは言わなかった。
実際三歩歩く前にもう忘れた。早すぎるのかもしれないが、興味のないことに対してなんて大抵こんなモノだろう。




