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従者のお使い『もってこい』3

 

 ドライフラワーを買って、呆れられた僕は、残りの残高を確認してみた。


 金貨がジャラジャラしている。


 銀貨や銅貨もあるが、圧倒的に小銅貨が少ない。



 金持ちだよな、と呑気に考えつつ、最終日の今日はお菓子で過ごす。


 途中で菓子しか食べていないことが冒険者二人にバレ、まずい携帯食料を渡されたのは辛かった。


 なんせ、しょっぱいだけなのだ。あの肉と同じで。


 そうそう、お菓子はどうやって保存しているのかというと、基本パンに砂糖をまぶしていたり、飴だったりするので日向に置かなければ問題無い。


 一つ間違えて日持ちしなさそうなタルトを買ってしまったのだが、リュックに入れておけば腐らないことが判明した。


 買ったことを忘れていて、リュックを覗いたら腐りもせずに美味しそうだった。


 このリュックは不思議だ。


 変に思われたくないのでこれはお屋敷に帰ってからご主人様と食べる。彼の趣味ではなかった場合は一人で食べる。




「はい、着いたよ〜。さぁ、降りた降りた」



 ボーッと時間を過ごしていれば、とうとうご主人様のいるであろう場所に到着した。


 降りる際に、お金を渡すのを忘れずに。


 前金は払っているが、途中で不測の事態に陥った時のことを考え、お代の半分を後で払う仕組みだそうで、バスとは違うんだなと実感した。


 バスほど徹底的に管理されていない。そういえば、この世界に車はあるのだろうか。


「さて、私たちは冒険者組合によるけど、ガトーくんはどうするの?」


 車について考えていると、ペンネが声をかけてくる。


 僕自身に予定はない。


 ただご主人様を待つのみである。



 待つ場所も何も考えていないが、ご主人様のことだ、問題はないだろう。



「テキトーに歩いてみます。もし一週間ほど会えなかったら先に帰ることにします」



 流石に連絡もなしにずっと待たせることはないだろう。いや、本当は一ヶ月経っても待つつもりではあるが、この場でそれを伝えるとさらに面倒なことになる。

 お節介や余計なお世話は必要ないのである。


「そっか、気をつけろよ。困ったことがあるなら冒険者組合に来い。俺らの名前を出せばすぐに行く」



「ありがとうございます」


 有難い案内人たちと別れて、僕は首都を探索する。



 もうこの時点で『もってこい』の記憶は彼方に飛んでいた。


 今頭にあるのは、『ご主人、会いたい』これに尽きる。


 生まれてからずっと、ほぼと言っていいほどご主人様のそばにいたので、いい加減一人は寂しい。


 まずはこの大通りから探索する。


 マフラーを巻き直して、僕は歩き出した。




 首都は楽し気なお祭りモードだった。


 人でごった返し、建物のあちこちには装飾品が、出店が並んで子供が笑う。ついこの間まで閉鎖されていたとは思えない。いや、むしろ閉鎖されていたのが解放されたからこのありさまなのだろうか。


 すぐに人肌に触れてしまいそうなこの距離感は、ご主人様が嫌いそうだと思いながら人混みに流されていく。


 行くあてもないので、宿でも取ろうかと考えてはいるのだが、いかんせん、広い。



 看板も建物も背の高い種族たちのせいで見えない。


 さては巨人か、貴様ら。


 三メートルクラスの巨人は流石に目立っていたが、二メートルくらいの大柄な人なら一定数いた。

 もちろん小さな種族もいたが、彼らは彼らで小さな隙間をひょいひょい歩いて、飛んで、とうまい具合に移動している。


 そんな様子を茫然とみつつ、しばらくもみくちゃにされて気がついたら、道の端にいた。


 疲れた。


 人馴れしていない僕にはだいぶキツかった。


 座り込んで、水分補給。


 何か買おうにも、どこに何が売っているのかすらよくわからない。


 これは詰んだかもしれない。


「宿探し、骨が折れそう」


 ため息まじりにそう呟く。


「宿探し? うぅん…近くなら『逆さの海辺』とかどう?」


 独り言に返答が返ってきた。


 声の方を振り向けば、何もいない。


 幽霊だろうかと考え込んでいると、ここだよ、と可愛らしい声が頭上から。


「私、妖精族なんだ。お困りかな? 坊ちゃん」


 目の前に、小さな小人。うっすらと透けた水色の羽が生えていて、よくよくみると耳が尖っている。

 僕の掌サイズのその生き物は羽をばたつかせて愛らしく笑って見せた。


「えっと、妖精さん?」


 精霊様とは違うんだなと思いつつ、声をかける。


「エイリィよ。よろしく」


 ガトーです、と返事をする。もうショコラな部分は消えかけている。おそらく名字は無い方が多いのだろう。


 ご主人様に変な誤解を与えていなければ良いが……。


「逆さの海辺、は夫婦と看板娘の三人でやってる宿で。ちょっとお値段は張るけどその分、お客の身分や立場に無干渉で平等に対応してくれて、柔軟な対応がうりの場所だよ」



「はぁ……?」


 値段の方は気にしていないが、突然現れたこの人に対する衝撃が未だ収まらない。



「…あれ? 訳ありかと思ったんだけど、違った?」



 目を丸くする小人、じゃなくて妖精。

 青くてワンピースのような服だが、オスメスの判別ができない。靴はとんがり、ヒール付き。髪はミディアムでどちらにも見える。


 性別不明だな、なんて思う。他人のこと言えないけど。



「まぁ、多少特殊な客だろうとは思いますが、訳ありというほどでは無いかと」


「そっかぁ。まぁいいや。行く? 行かない?」



「行きます」



 この人混みの中探し回るのも嫌だから、案内を受けることにした。


 それじゃあ行こうかなんて笑う妖精が飛び回るのをみてファンタジーを感じた。



 これが、知識・常識の誤差か。



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