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従者のお使い『もってこい』2

 

 首都までの間、休憩所というか、乗り継ぎ地点というか、ともかく一度降りる場所に着いた。



 準備の間、長居はできないからあまり外には出られないが、暇なので観察をする。



 肌の浅黒い人々がニコニコしながら町を歩いている。


 シルフィゼリアよりは小さいが、活気あふれていて、人種の人数からみるに、褐色の肌の人々がこの町の住人のようだ。

 虐げられていることもなく、平和だ。この世界は人種差別が少ないのかもしれない。


 差別していたら手酷い目に合うくらい様々な人種がいて、偏りもなく、知識的、身体的な面での差は別の部分でカバーできるからだろうか。


 例えば、頭の良いエルフが他の種族を馬鹿にしたとして、他の獣人や鬼人に力で負けて、人間に数と知恵で負けてひどい目に遭う、といった風に。



 よくよく見れば、頬や足、腕や胸、様々なところに謎の紋様がある。エスニック風だ。なんだあれはと思いながら、馬車の中で町を見渡す。


 町の雰囲気は、シルフィゼリア同じくレンガの家、活気あふれる町という面でも共通点が多いが、若干人が少なく、観光地というよりも栄えた地元の有名商店街のような温かみがある。


 ご主人様は温かいものが嫌いだそうで、こういう雰囲気も苦手なのだろうか。



「……旅人さん、お花はいかが?」


 馬車から身を乗り出す僕に声がかかった。


 小さなか弱い声。


 下を見れば、声と同じく小さな、それこそまだ幼児にも見える子供が必死に手を伸ばしていた。


 スラム街の花売りというよりは、店の手伝いをしている子供といった感じで、艶々した健康的な肌やふっくらとした子供特有の顔つきに、元気だという印象を受ける。



 地元の子供なのか褐色の肌で、頬に何やら紋様がある。

 こう見てみると、化粧というより刺青なのかもしれない。


 ワンピースと長い髪、丸くて大きな緑の瞳をみるに、この子供は女の子だろうか。ワンピースもエスニック風で、どこかの民族衣装のようだ。

 差し出す花は赤色で、薔薇のような形をしている。


 籠には別の種類も入っているのが見える。



「他には何のお花があるの?」


 そう聞けば、脈ありだと思ったのか嬉しそうに説明を始める。


「今手に持っているのがローズ。籠の中には、ウイリー、ラプソス、チェリー、ボタンもあるよ」


 ローズとチェリーはわかった。ボタンも見てて想像通りだ。

 薔薇、桜、牡丹だろう。


 ウイリーとラプソスはなんだ。

 見た目はおそらく、ウイリーが菊科、ラプソスはサルビアか何かだろう。


 それにしても、この花たちはどれも綺麗に咲いているが、開花時期は同じなのだろうか。

 僕はボタンは冬のイメージだった。


 色とりどりの花でいっぱいの籠には、一部渋い色合いのものがあった。


「それは何?」


「えっ、これは…干して乾燥させたもの…。ヒビの花です」


 僕には千日紅に見える。

 ようするに、ドライフラワーか。


 水もいらないし、長持ちする。


「ヒビの花……んん……赤いの頂戴。入ってるの全部でいいや」


 ヒビの花のドライフラワーは、そんなに数もなくせいぜい一束か二束くらいだった。


 花束にもならないか、いや、なんとなく買うのだし、問題はない。


「……ぜんぶ?」


 舌足らずな口調で幼女はおうむ返しに呟いた。


「ん? ヒビの花の、赤いの、全部。……いくら? ……あ、まとめ買いダメだった?」



 横で何してんのガトーくんとか、いろいろ言われているが、気にしない方針で。



「い、いえ、大丈夫です」


 首をぶんぶん横に振りながら幼女は笑う。


「えっと、銀貨、六枚になります」



 案外高い。日本円で約六万。なんて高いんだ…買うけど。



 財布を出して、もう面倒なので金貨で払う。


「え、わわっ。お釣りお釣り……」


 慌てる幼女に出来るだけ急かさないように微笑みながら眺める。


 お釣りを準備する幼女を見ていると、横からペンネが微妙な顔をして袖を引っ張ってくる。



「ちょっと、ガトーくん、そんな高い上に使い道がなくて売れ残りみたいなの買って、どうするの?」


 売れ残り、みたいなの。


 もしかしなくてもドライフラワーのことだろうか。


 確かに派手ではないが、日持ちするし、僕主観だと綺麗に見えるのだが。


「綺麗ですし、壁にリースにして飾ったり、ハーバリウムにしてもいいですし、何より日持ちします。長くて半年は持ちます。値段の分長くみることができてお得でしょう」



 ハーバリウムにするためのオイルだのなんだのは保存液か何かで応用が効きそうだ、それならおそらくご主人様が持っている。ドライフルーツを一緒に入れてもいい。……でもフルーツは食べたい派だ。



「はい、銀貨四枚です」



「どーもー。」



 思いがけない収入だったのか嬉しそうに幼女は駆けていった。


 そろそろ出発だよ、と呼びかける馬番たちに、皆てきとうに返事をしている。



「…枯れているのを飾っても、綺麗に見えないけどなぁ」



 ぼやくティータスに、僕は思う。



 枯山水なんてものがあるんだから、生きているものだけ見ていても綺麗な世界には見えない気がするんだけどなぁ。



 …枯山水って、どこで見たんだっけ。



 相変わらずのおかしな知識に内心首を傾げながらも、いつものことかと自分を納得させる。



「趣味や感性は、人それぞれと言いますし」



 僕にとっては美しかった。ただそれだけのことだ。



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