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従者のお使い『とってこい』2

 

 屋敷を出発して、早ニ時間。



 歩き続けて、しばらく経つ。


 道を間違えていないか心配であったが、ようやくふもとの町が見えてきた。



 小さな町にしては人が多く、活気溢れる町だが、僕にはあまりいい思い出がない。


 今日は、ご主人様の指示どうり、いつもの服を隠すかのように引きずるギリギリの長さのマントを着ている。これならばガーターソックスのガーターの部分も見えまい。


 髪を見せるなとの命令があったので、マントのフードをかぶり、首にマフラーをして、フードが取れても見えないようにバンダナを巻いている。


 そういえば、前に町に行った時も髪を見せるなと言われた気がする…。


 リュックとカバンで大荷物だが、リュックのかさはそこまで大きくないのであまり問題ではないだろう。


 不審者チックだと自分でも感じたが、確か町にもおかしな格好した人はいっぱいいたから、目立たない筈だ。


 ちなみに僕が見て一番変だと思った格好の方は、着ぐるみ姿だった。なんの生物の着ぐるみかは知らないがツノが生えている耳の立ったウサギもどきの格好だった。

 可愛くはなかった。世の中には色々な趣味の人がいるものだと実感した。



 町に行ったのは1回きりだったから、僕は人間以外の種族は見たことがないままである。あの町は人間の町だから、基本的に人間ばかりだ。たまに他種族もいるらしいが。


 そういえば、この世界での別種族の立ち位置はどのようなものだろうか。よくある話では、差別されているが、実際どちらが社会的に優位なのか。



 まぁ、気にしても意味がないことは気にしなくていいか。別種族も人間も僕にとっては、同じくらいの価値だから。



「ヤァ、ぼっちゃん。町に買い物かい。親御さんはどうした。一人か」


「あら、爺さん。お嬢さんじゃないかい。ほら、可愛いんだから一人で歩いてちゃ悪いのに捕まるよ」



 町に入って、馬車の乗合所を探してうろついていると、背が小さいせいかガキ扱いされる。僕はそんなに小さく見えるのか。ご主人様はそこまで子供扱いしない。多分年老いて夫婦揃って目を悪くしているのだ。


「お使いに行く途中です。別に一人でも無問題です」


 性別については触れない。僕は中性的なキャラでいたい。そういえばご主人様は僕のことをどっちだと思っているのだろうか。



「あら、お買い物ね。えらいのね」



 愛想笑いで会話を終了させ、馬を見つけて最終的にはその日のうちに町を出ることができた。

 二日かかるというのはご主人様に聞いた通りのようで、食料の確認をされた。


 ピクニック気分で入れた水筒とパンケーキしか入っていない弁当に感謝する。危うく買いに行かなければいけなくなるところだった。その時間ロスで乗り遅れると明日出発になってしまうのだ。



「あなたはどこで降りるの?」


 馬車の中で綺麗な女の人に聞かれた。

 赤毛のステキな女性。人間だ。

 世間話のつもりだろうか。


「シルフィゼリアまで」


「……一人で?」


 詳しく聞こうとするのはその女性の横にいた男性。

 茶髪でなんだか軟派者の気配を察知したが、なんだか大人しそうだ。見た目で判断するのはいけない。


「観光です。首都に行くついでに寄ろうと思って」


 さらりと嘘をつく。

 さっきの老夫婦にお使いって言ったのに、でも、実際どちらも事実だ。僕は外を出歩くことがないから観光も兼ねている。


「え、首都まで行くの?」



 驚いたような顔をする女性に僕は不思議に思う。

 そこまで驚くことだろうか。


「ええ、まぁ」


「危ないぞ。あんた今いくつだ」


 男性は至極真面目な顔をしている。


 やっぱり僕のことを子供扱いしている。

 実際は見た目年齢より生きた年齢は短い。五年も生きていないのは確かだが、さてなんと答えるべきか。


 僕の意見として、見た目年齢は十六と感じてもらえれば嬉しい感じだ。少な目に見積もり十五にしよう。


「十五」



「嘘だろ。どう見ても十二より小さいくらいだ」


「そうですか」


 そりゃ嘘だから仕方ない。だとしても十二の子供が馬車乗って別の町に一人旅行はまずいのだろうか。


 治安が良くないのかもしれない。



「何しに行くのかな?」


 女性は親切そうな顔をしている。


 よく見ればこの二人は、経験豊富な雰囲気だ。旅慣れているというか、戦えそうというか。


 ……よく見れば、女性の腰元に柄のようなものが見える。男性の方はわかりやすい。弓を背負っている。弓矢も見える。


 傭兵か、冒険者か、そんな感じだろう。


 観察しながら言葉を返す。

 嘘と本当を交えたほうが、誤魔化せる。


 矛盾のないように。



「人に会いに。観光はお土産探しも兼ねています。まぁ、首都で探しても良いのですが」



 ほこらの話はしない。なにか隙を見せたくはないからね。



「……よっぽど会いたい人なのね」


 真剣な顔の僕を見てどう思ったのか。女性が笑う。


「予定はしっかり立てているか。予算は?相手方はそのことを知っているのか」


 いらん気遣いをしてくれる男性に僕は少し不満を覚える。余計なお世話である。


 いいだろう。予定は組んである。というか、ご主人様が大体の道筋を決めてくれている。

 予算、なんて誤魔化そうか。金貨二十枚はやっぱり多いよね。


「シルフィゼリアに行って。観光は長くて四日。首都に向かって、着いたらごしゅじ……あぁー、彼が来るのを待ちます」


 ご主人とか言ったらまずいよね。奴隷か何かと勘違いされる。


「会いに行くことは相手方もご存知です。首都にいればそのうち拾うと言われていますので。予算は、まぁそれなりに」


 というかこの旅行自体ご主人様からの指示です。

 そこまでは伝えないが。



「……そいつに止められなかったのか。」



「むしろ来てくれと頼まれましたが、何か。」



 それ以上彼は追求してこなかった。



「そっかぁ。ねぇ。私たちもシルフィゼリアから馬車経由で首都に行く用があるの。よかったら、一緒にどう?」


 やばいぞ、面倒なお誘いがきた。


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