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従者のお使い『とってこい』

 

 僕はご主人様に待望の命令をもらった。


 従者といえば、ご主人様から命を受けることも仕事である。なんとなくかっこいいなと思って楽しみにしていたが、まさかこんな大事を任されるとは思いもしなかった。


 まぁ、他でもないご主人様からのお使いである。

 喜んで向かおうと思う。


 さて、それはともかく、まず第一問題、この屋敷から一人でどうやって出るかというところから解決していこう。


 扉開けて普通に出ろよと思った、そこのあなた。


 この屋敷の出口は特殊であの実験室と同じく魔力を感知して開く鍵付き自動ドアのようなものである。


 反応する魔力がない僕はさしづめ自動ドアに反応されない身長の低すぎる子供のようなものである。


 つまりは、一人で出ることができない。


 しょっぱなからこれは詰んでいる。いや、まだだ。窓がある。そうだ窓開けて出て行こう。防犯? 閉められない? 空き巣被害? 二階から飛び降りればいい。いけるいける。二階ならまだ死なない。二階まで空き巣犯がやってこないことを祈ってダイブしよう。


 よしそうと決まればすぐに向かおう。森の外の街なら一度出たことがある。その時道は暗記した。お金の使い方も金額の大体の考え方も覚えている。予習をしながら荷物確認をしよう。

 ご主人様の部屋に遠慮なく入って、バックを探す。

 案外すぐに見つかった。黒い大きなバックだ。旅行用にも見える。


「金貨が一枚十万円。銀貨が十枚で金貨一枚。よって銀貨は一枚一万円」


 ゴソゴソ。お金と、地図と、魔道具のコンパス。ご主人様、僕は魔道具は扱えないんですけど。


「銅貨が十枚で銀貨一枚よって銅貨一枚で千円」


 服は寝巻きと予備の服。この服が制服扱いなので着替えはなくていいと、確かに汚れない魔法がかかってるようで便利な服ではあるが、少し不安だ。



「小銅貨が十枚で銅貨が一枚。小銅貨は百円」


 一円、十円はない。あくまで僕基準の計算だからアバウトだ。


 物価は変わるから、旅費の想定が分からないが、財布の中には金貨がジャラジャラだ。数えてみたところ二十枚。つまりは二十かける十で……二百万。


 ヤッベ、思ったよりご主人様金持ちだった。


 しかもこれ全財産(大金)じゃなくてほんのお小遣い(端金)気分で渡してくる旅費だから困る。


 大事にしよう。なくした時ように小袋に金貨わけておこう。


 もちろんくずしてあるから銀貨と銅貨も数枚入っている。でも金貨のインパクトがひどい。そして小銅貨が入っていない。



 他の持ち物……毒と薬は常備。種類もできるだけたくさん持って行こう。


 そういえば、僕のリュックはたくさん中身が入る上に軽くなる魔法が掛かっているとかいないとかご主人様が言っていた気がする。


 作戦変更。できるだけリュックに物を詰めて、すぐに出せるように銀貨と銅貨を小袋に入れバックに詰める。毒と薬はすぐ出せるようにバックだ。ナイフも護身用や身の周りのことに使うのでバックに入れて……。



 他に何を入れようか。


 メモを確認する。でんわで伝えられた内容とそう変わらない。一応聞きながらとったメモもあるが、念のため両方持って行こう。やることは暗記してあるが、万が一ということもある。


 必要かどうかはさておきいざという時ように『マイさすまた』も入れておこうか。折りたたみ式なのでリュックに入れておこう。


 それと木箱。


 鏡をお届けに行くのだから、割らないように丁重に扱う準備が必要だ。


 割れ物用に、新聞紙やワタを入れておこうか。


 一応持ち主の許可はあるらしいが、夜に行け、黙って持っていけなんて言われるくらいだ。

 冤罪で捕まりたくないので、カムフラージュとして二重構造にして、上にはジャムを載せていこう。


 もちろんジャム瓶も割りたくないので、新聞紙に包む。


 そういえば、新聞紙はどうしてあるのか。答えは単純、この世界でも新聞があるのだ。むしろラジオはあってもテレビがないから大切な情報媒体である。この新聞紙はご主人様が森の近くの町で買ってくる。配達員さんはこの屋敷に来ないらしい。


 ご主人様はなんでも溜め込むので腐りかけの紙やぱっと見ゴミな収集品(コレクション)は、ご主人様に確認後、捨てている。


 あの人好きで溜め込んでいる癖してお気に入り以外は平気で手放せる。僕にはよくわからない性質をしている男である。


 若干ゴミ屋敷だったこの屋敷は、酷い臭いがしないだけマシだ。


 ご主人様は食べ物は食糧庫に溜め込むので、腐るなら食糧庫だけだ。そしてその食糧庫と、台所。ついでに冷蔵庫の中身も、今管理しているのは僕だ。初めて冷蔵庫を開けた時の異様な臭いは僕が駆除した。

 ということで、ネズミは捕獲、黒い虫もアリも全部、侵入者が目の前にいたら即殺処分しているので、衛生面はだいぶマシになった。



 ……実はここは、酷い屋敷だったのだ。




 そういえば、飼育しているネズミたちはどうしよう。


 餌を置いておくと勝手に全て食べて餓死するし、長期間一定量の薬品を与える実験中の子もいる。



 まぁ、一番はご主人様のお使いだ。




 ペットとか飼っている人はどういう風に長期旅行に行くのだろうか。やはり多めのエサと水が大切なんだろうか、しかし、徹底管理がしたい。飼うならしっかりとしたい。



 ……逃すかな。



 いや、しかしながら変な薬品耐性を獲得した謎のネズミが繁殖するのはまずい気もする。



 そういえば、最近、暇を持て余して、たまたまよくやってくるようになった、鷹だか鷲だかに余り物の焼いた肉とか魚を与えて餌付けしていた。



 鷹も鷲も肉食だから、この子たちも食べるかな。



 毒で死んだらごめん、鳥さん。



「ご飯いるー?」





 鳥は即死はしていなかった。


 後々死んだらごめん、心の中で謝っておいた。







 屋敷の二階から飛び降りて、やっと僕のお使いがスタートした。



 近くの木に引っかかり、怪我もなく無事に出かけることができたのは幸運だった。



 ご主人様は無事だろうか。



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