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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ショートストーリー ぐちゃまぜの愛

作者: イャハシ

夏目友人帳みてめちゃくちゃ泣きました

書いてみたくなりました

 

 「隆ぃ!、彩花!ねぇェ!聞いてお願いィ!」 


 私の声って何で大事な時に届かないのかな?

 どうでもいい嫌な事はすぐ伝わって小さな喧嘩もするのに

ホントに伝えたいときに限って何で伝わらないの?

 もう二時間は叫んだかな?

 みんながセミの声で煩わしそうに眉をひそめているセミの声ですら皆に届くのに私はセミ以下だよ……



 都会とまでは言わないが人も多く

学校が近くにあるよ賑やかな住宅街

 その家々から幸せの木漏れ日が溢れ出している。

 声が届かないはずがないのに彼女の声は夏にはそぐわない子供の投げた雪玉のように、思った人の所に届くことなく落ちて崩れる。




 「あの……どうかしました?……」


 あれ?私に声をかけてるのかな?

 思わず周りを見ても幸せそうな家族が学校の送り迎えしているだけでどうかしました?なんて声をかけられるのは私だけか


 「えっ……私?」








 「はい……あの……死んでますよね?」


 あっ良かった私で合ってたみたいだ


 「うんそうだよ。見えるんだ。」


 「まあ……わりと……昔から」


 歯切れ悪く話す少年は私と変わらない身長だし、子供っぽさもあるから10年位後輩かな。

 中学生位の男の子。

 中学生の頃なんて着崩しがおしゃれ!なんて思ってたけど、 この子はキレイに学生ワイシャツやネクタイも閉め、髪なんて真っ直ぐに目の上で揃えられた黒髪だ。


  きっとすごく真面目で優しいだろうね、頑張って話しかけてくれたんだね。

 死んでからも人の優しさに触れられて心が暖まる


 「そう。私は死んだのよ、最近事故でね。」


 「そうですか、なんて言えばいいんだろう?……お疲れ様です。」


 私も死人にかける言葉は思いつかないけとお疲れ様ですか……

 彼は中々人の事を考えないタイプっぽい


 「ごめんね、あんなに叫んじゃってうるさかったでしょ?」


 「あっはい……だから大丈夫かなって?」


 「そっか、ありがとう。旦那や娘に死んだ事とか今後の事とか、伝えたくてむきになっちゃって」


 「だったら……誰かを経由して伝えたらいいんじゃないですか?」


 「そんな方法があるのね!でもそんな人中々いないとおもうし」


 「結構いると……思います。僕だってできるけど口下手だから」


 「私は伝えられるだけでいいのきれいな言葉を並べたい訳じゃないし」


 「じゃあ僕でいいならやりましょうか?下手ですけど」


 「えっいいのっ!?」


 嬉しさで頭がパンクしそう伝えたいことが溢れて来すぎて考えのまとまりがつかない


 「だったら、ご飯自炊してねとか、娘優しくするのよとか、飲み過ぎはだめとか、えぇっと、カップ麺は一週間に二個までよとか、貴方は厳しい人だから娘に無理させちゃだっ」


 「あの……さすがに覚えきれないので話しているときに耳打ちして貰えれば」


 興奮の余り少年を困らせてみたいかな


 「って!早!」


 少年は迷いなくインターホンを押した


 「待って!私まだ死んでから直接、隆と彩花の顔見てないの!心の準備が!」


 「すみません……もう押しちゃいました」


 ピンポン~ンと間抜けな音と共に頬はこけて、目の下が凄く黒くなった旦那が出てきた。


 「すみません、家今ばたついててすみません。」


 一言添えてすぐさまドアは閉められた


 「ごめんなさい……僕には無理でした……」


 隆あんなにやつれてるなんて、知り合って10年以上たつのにあんな顔を見たことがなかった。

 そしてあの顔にさせたのが私なんだもんな……私が伝えないと


 「ごめんね!もう一回だけでいいのお願い!」


 少年は嫌がる素振りも見せずまたインターホンを押してくれる


 「あのっ!今家忙しくて!また今度にしてもらえます!?」


 「あっあの奥さんの知り合いなのですが、伝言があって」


 隆の反応が止まり焦りと不安、期待に満ちた表情に変わる


 「ぇっ、妻のこと何か知ってるのですか!?何でも良いので教えてください!!」


 隆の反応を見る限り私はまだ見つかってないみたいね


 「あの奥さん死んでて……幽霊で伝言……たのまれっ」


 話の途中で隆が少年の胸ぐらをつかみ握った右手を振り下ろした


 「彩が死んでるわけないだろう!?やっていい事と悪い事もわからないのか!?二度と来るな来たら警察呼ぶからな!」


 激しくドアを閉めるおとで驚いていた少年は再び動き出した。


 「ごめんなさい、僕が伝え方下手で……」


 「いいわよこっちこそごめんね……まきこんじゃって痛くない?

普段はあんな人じゃないの本当にごめんね」


 「これくらい大丈夫です……すみません」


 少年が擦る頬は少し青くなっている


 私はひどい女だわ。

 家族の事が心配で少年の親切心と罪悪感につけこんで頼みごとをしてしまう。


 「あの、図々しいんだけどもうひとつお願いしてもいい?」


 「僕なんかでできることなら」


 「私の死体見つけてほしいの。あのままだとあの人壊れちゃうから、近所なの、だから……」


 「そう……ですか、僕なんかで良ければ」


 それを聞くと安心して住宅街から三キロほど離れた山道に向かい歩き始める。


 「私山道で猫ひきそうになっちゃって、猫好きだしたまに見る潰れた猫とか見るのがすごく辛くて」


 「そうですか」


 「ハンドル切ったら落ちちゃって私が潰れちゃった!」


 極力暗くならないように話すのが癖になっているかもしれない

理由が自分でも笑える位アホなのが救いかな?


 「あの、何でそんなに自分の死んだ事を明るく言えるのですか?」


 少年は私の目を真剣に見つめて答えを待ってる


 「だって私幸せだったし、もしかしたら二人に伝言も残せるかもしれない、娘のお世話ができないのは寂しいけど旦那はどうにかできる人だしね、私は世話ができなくても意地でも娘の成長見るから」


 「やっぱり、残される方の事は考えてないんだ。」


 「えっ?」


 「僕の母さんも病気で子供の頃死にました。

 病気で辛いはずなのに笑って幸せだったって」


 「お母さんはホントに幸せのだったんだよ今の私は痛いほどわかるよお母さんは少年と過ごせて絶対に幸せだった」


 「僕は今幸せじゃないのに!ずっと僕は過去にすがって!

 幽霊が見えるようになったのも母さんと会いたくて!

 死んだ母さんに会いたいから神様にお願いして勉強もして!

なのに見えるのは人を恨んでさまよってるやつらばかり

こんな所もういたくなんだ!いっそ僕もつれてってくれれば……」


 少年から聞く話はどうしても娘と重なるところがある

 娘も将来同じように思うのかな?

 私にできる事はないのか考えないと私は貰ってばっかりなんだから

 家族にたくさん幸せをもらって少年には助けてもらってばっかりだ


 「よし大丈夫!私の事を家族に伝えてもらうお礼!私が伝える!少年のお母さんに、たぶん同じところいくし……ついでだよ!」


 「えっあのっその……」


 「お姉さんに任せなさい!少年は幽霊の私を助けてくれたしね!私が幽霊見えても話しかけられないもん!すごいよ少年!」


 「いえ……すみません僕も幽霊に話しかけたのは初めてで」


 「私が初めてっ!そっかぁ~なんでなんで?」


 「あの何故かお母さんと姿が重なって」


 「そっかそっか!私が少年の第二のお母さんなっちゃうか!」


 「嫌、さすがにお母さん二人失うのは僕には耐えられないので」


 「そっか……ごめんね考えなしで」


 「いや、気にしないんで……」


 「ごめん……っあっ、ついた」


 小さな山道にはガードレールも無いかなり下まで落ちたみたいだ。

 山道では猫が横切りあのときの猫かはわからないけど生きていることに少し頬が緩む。


 「ここなんだけど警察に電話お願いしていい?タイヤの後も残ってるし間違いないと思うから」


 「すみません僕携帯持ってなくて」


 「あちゃー確認し忘れたね。なら私の車の中なら携帯あると思うし、落ちた所も回り道したら行けそうだからお願いしてもいい?」


 了承してくれた少年と共に回り道をし車まで戻ると車は地面に90度で立っていたあれは即死だよね苦しんだ記憶ないし


 「あっ!あれ車のドアに挟まってるキーホルダー私の携帯ドア開けたら取れそうね」


 少年がドアに手を掛け少し開けるとスルリと携帯が地面に落ちた


 「携帯電話お借りしますね」


 「死人のだから許可取らないても大丈夫よ」


 少年が携帯を地面から拾い警察に発信したところで顔をあげた

ゆっくりとドアが開いてきていたのか、眼下には真っ赤な海が広がり、夏のせいか腐食の進みが早く私は臭いを感じられないものの、たかる虫達で少しの想像はつく



 「んっヴォェえァァうぉぇ」 









    少年はそのまま意識を失った















 どうやら3日もたっていたらしい僕は彼女の死体の横で意識を失って倒れていた事を後から父に聞いた。

 なんとか警察に電話がかかっていたことで音声が通話にのり大捜索になったようだ

そして病院のベッドで目が覚めた。

 何日もたっているのにまぶたの裏には潰れたトマトのような映像がこびりつき、生ゴミのようで種類の違う独特の臭いが鼻についている気がする。

 病院での長くて退屈な検査を終えると警察から呼ばれた。

 携帯の指紋などから犯人なんて話も出たみたいだけど動機やわざわざ携帯に連絡する意味がなく、そんな話もすぐなくなったそうだが、第一発見者の話を聞かなくては行けないようだ。

 重い足取りで病院の扉を開けた。


 「ごめんなさい」 


 「いえ気にしてないんで」


 彼女は病院の前でずっと待っていたのだろうか

心配そうな顔で見つめてくる。


 「いやっでも!」


 「当分トマトが食べられなくなるだけですから」


 「トマトって?あぁ……私の体はトマトかぁ」


 なごませようとして失敗したようだ

 その後と他愛のない話をしながら警察に向かった

 彼女はしきりに旦那さんは新しい奥さんが必要だと  

 娘の習い事は私が決めたかったなどいろいろ聞いた


 「やっちゃたよどうしよう。」


 「また……殴られて来ます。」


 鉢合わせたくない人間ナンバー1

僕のことを初めて殴った男と対面してしまった。

 彼は僕を見つけた瞬間真っ赤な顔で走り出した。


 「あっおい!お前が殺したんじゃないのか!あんなどこで第一発見者なんておかしいだろ!指紋もでたんだ!なんとかいってみろ!」


 隣で彼女が何度もやめて隆と叫んでいるが届くことはない


 「いえ、ボクは……奥さんにあそこに……連れていかれただけで」


 「嘘ぉつくなぁぁ!彩は行方不明だ!死んでなんかない!嘘だ!彩がいるならなんて伝えたいか言ってみろよこの嘘つきがぁ!!さぞお涙頂戴な事を言うんだろうなぁ!

お前みたいなやつが彩の言うことなんて想像できる訳がないんだ」


 僕の耳元で彼女が言った言葉に耳を疑った、そんなにことでいいのか?伝えるのはそんな、口下手な僕でもそう思った。

 だけど伝えるだけが僕の仕事なんだ

 

 「あの……二人ともお腹冷やして寝ないでねって」


 「ふざっけんなよぉ!あの死体は彩じゃないんだ!違うんだ!

お前ももっとお涙頂戴な事いえよぉ!何で!何で!彩がいっつも言うことを!何度もしつこいってまた彩に言わせろよ!それじゃホントに……お前の…お前の隣にいるみたいじゃないか……」


 泣き崩れている旦那さんを儚く寂しげに見つめる彼女の顔は僕が人生で一番好きだった優しくて暖かい母さんの顔と何故か重なって涙腺が緩む。


 「ありがとうね伝えられて良かった」


 「何でですか!もっといろいろあったのに僕はまだいっぱい伝えますよ!」


 「他のことは隆が頑張ってくれるからもう心配してないの信じる。不安なのはお腹だけよっ」


 「でも!僕はもっと伝えますから!まだ目の前にいるのに!」

 

 「私が満足したから消えるっぽいよ消えるときはわかるもんだね最後に少年名前を教えてくれる?」


 「え?何でですか!?消えるなら他のことを旦那さんに」


 「だって私には天国にいってからやらなきゃない約束があるし

お姉さんに任せなさいって言ったでしょ!私に天国中駆け回るから!だから教えてっ ね?」


 「さかき……りょう」


 「ホントにありがとうね榊亮くんお母さんになんて伝えよっか?」


 「僕もお腹もちゃんと暖めて健康でいるから元気でいるから!

だから安心してって、僕もきっと旦那さんも娘さんも元気で過ごしますから。」


 「ありがとねホントに優しいな榊くん。

きっとお母さんも榊君と似てる優しい顔だよ絶対見つけるから、じゃあ榊君も娘も旦那もずっと見てるからね、じゃあね」


 





  


 最後は本当にあっさりいってしまった。

 すっと消える彼女は小さい頃の思い出のように美しいままホロホロと少しずつ崩れていった。

 彼女の最後の光景は僕が何歳になろうと一生忘れることはないのだろう。

 初めて話しかけたときすでに僕は一目惚れしていた。

 話しかけた理由を照れて母さんに似てるって言ったんだ。

 確かに似てる所もたくさんある。

 でも僕の初めて知った感情だった

 自分の家族のために懸命に叫ぶ人の愛を僕もほしがったんだ

 旦那さんもいるのに、死んじゃってるのにな

 僕の初恋は例えようがないくらいに

 とても苦かった

 ショートストーリーってかくと5000文字もあるんですね 

 書く方はショートじゃねーよ


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