楽しみにしていた放課後のはずだったんだが
久しぶりの投稿です。
髪の色を変更しました
「起立!気をつけ!礼!」
『ありがとうございました!』
学級委員の号令で、教室内の生徒が一斉に礼をする。
時刻は午後四時三十分、最後の授業が終わる時間だ。
いつものことながら終わりのあいさつは声が大きい。
これから生徒は毎日の憂鬱な授業から解放されて、部活をしたり遊んだりとそれぞれ自由なことができるからだろう。
櫂人もこの時を待ち望んでいた一人だ。
実は放課後に優奈とパフェを食べに行く約束をしているのだ。
言い換えれば放課後デートというやつだ。
そう、ギャルゲーやラブコメが好きな人ならだれもが憧れるであろうシチュエーション、それを今まさに自分が体験しようとしているのだ。
嬉しすぎてニヤけが止まらない。
「なにニヤけてんの、キモいんだけど」
そう言いながらごみを見るような目で俺を見るツインテール少女。
おっと嬉しすぎて気持ちの悪い笑みを浮かべていたらしい。
リア充女子にキモいと言われてしまった。
「傷つくなぁ・・・・・・真実だとしても、もう少しオブラートに包んだ言い方はできないのかよ水無月」
「なに?あたしに口答えするなんて、上原のくせに生意気ね、罵られてうれしいでしょう」
いかにも私が女王様!というような態度でツインテールをの毛先をもてあそびながら、ドS発言をする生意気な少女。
このツインテールの名前は水無月蝶羽、クラスメイトだ。
なにかとちょっかいをかけてくる。
そんなにオタクが嫌いか!!
先ほど言ったようにこいつは我らオタクが最も嫌う種族、リア充だ。
見た目も美しくまるで人形のように整っている。それに加え、ちろちろ動くツインテールとのギャップでかなり人気がある。
その容姿とドSな性格が相まって主にMっ気のある男子からの人気が凄まじい。
今もこちらを見ながら羨ましそうに見つめる男子がいる。
まあ、ぶっちゃけ俺も水無月のことは可愛いと思う。
だが、水無月と優奈には決定的な差がある。
俺がチラッと胸元見て鼻で笑うと目ざとく反応し睨んでくる。
「なによッ!」
「いや、別に」
目をそらしながら誤魔化す。
まあ、何が言いたいのかというと胸がね・・・・・・胸筋のある男子の方が胸大きいんじゃない?と思えるような貧乳だ。
ほかの女子から壁と言われているのを聞いたことがある。可哀そうに・・・・・・
水無月はその見た目と態度から女子の敵を増やしやすい。
嫉妬なのか態度が気に入らないのかは知らないが。
そんなことはさておき、性格面でも大きな差がある。
皆も分かっているだろうがドSな水無月と違って優奈は優しい。包容力?があるというのかな。
最近はオタクにも優しい社会になってきたとはいえ、陰キャな俺と仲良くしてくれる女子は優奈だけだ。
こんな無駄話をしている暇はない。
早く優奈のもとへ行かねば。そう思った俺は話を切り上げる。
「じゃあ、俺用事あるから」
「あ!ちょっと待ちなさいよ!」
何か言っていたが気にしない。
楽しみな放課後デートが待っているのだ、水無月にかまっている暇などない。
急いで優奈の席に向かう。
「ごめん、待たせた」
「あら櫂人。さっき水無月さんと話してたみたいだけど、何話してたの?私を放っておいて楽しそうにしてたわね」
優奈が圧力をかけてくる。
「ごめんって、いつものように絡まれてただけだよ、それより早くパフェ食べに行こうぜ!」
一気にまくし立てて誤魔化し優奈の手を引いて教室を出る。
出てくるのを待っていたかのように入り口に立っていた一人の男子生徒が俺たちの元に近づいてきた。
たしかE組の田中という生徒だ。
俺と優奈はA組だから教室が離れているE組の田中と俺は話したことはないが優奈は去年同じクラスだったらしくその時によく話をしていたらしい。
そんな田中君がチラッと俺を一瞥して少し睨んできた。
俺、何かしただろうか?
すぐに表情を戻した田中くんは優奈ににこやかな笑みを浮かべながら言った。
「星崎さん、ちょっと話があるんだけどいいかな?」
「話、ですか?いいですよ」
優奈がそう答えると田中くんは嬉しかったようで小さくガッツポーズをしていた。
「ちょっと待っててね、櫂人」
「おう」
俺と優奈の親しげな会話で田中くんは表情を曇らせる。
だがそれも一瞬。
彼は気合を入れるようにぎゅっと手を握りしめていた。
そして二人はここから少し離れた空き教室の方に向かっていった。
あそこの空き教室はあまり人気が無く、告白スポットとして密かに人気があるらしい。
まあ、俺は焦らないよ?どうなるか分かっているようなもんだし。
今までもこういうことは何度もあったがそれらの告白はことごとく失敗に終わっている。
今回も心に傷を負う男子が増えるだけだろう。
最初の数回こそヒヤヒヤしていた俺だが優奈のあまりの鈍感さにヒヤヒヤしているのが馬鹿らしくなってきたのだ。
そんなことを考えていると二人が出てくる。
優奈は怒ったような表情をしていて、田中くんは落ち込んでいるようだった。
やっぱり振られたな。
田中くんは暗い表情で階段を下りて行った。
振られたのは分かっているがやはり気になってしまう。
「どんな話だったんだ?」
失礼なことだとは思ったがつい聞いてしまった。
「どうもこうもないわ!好きですって言われたわよ。どうして男子ってこんなに私をからかうのかしら!」
優奈は怒りながら話を続ける。
「嘘の告白を女の子にするなんて最低よ!もう今年に入ってから6人目なのよ!?私何か悪いことしたかしら・・・・・・」
怒っていたと思ったら落ち込んでいた。
感情が豊かな奴だ。
こいつに告白した男子が振られる理由、それは優奈が鈍感すぎて告白を全て冗談だと受け取ってしまうからだ。
そのせいで枕を濡らすことになる男子が増えていることを俺は知っている。
勇気を出して告白したのに告白とすら思われないなんて悲しすぎる。
生徒の間でフラグブレイカーなんて言われていてもおかしくない。今のところそんな噂はないが。
そんな優奈に俺はアプローチしていたのだが、優奈の鈍感さに負け、告白して怒られるのならこのままの関係を保っていようという考えになりつつある。
はぁ~優奈が俺に告白してくれたらいいのになぁ。
ヘタレとでも何でも言ってくれ、俺は振られたくないんだ。
「まあまあ優奈落ち着けって、お前の気持ちはわからなくもないけど、怒っているとこれから食べるパフェが不味くなるぞ」
なだめるように言う。
田中君には悪いが、俺は基本的に自分優先の人間だ。
他のやつにかまっている暇はない。
今は俺と優奈でパフェを食べることができればそれでいいのだ。
最後まで読んでいただいた方ありがとうございました