夢を見る月の見た夢
夢を見る。
この場合の「夢」とういうのは、未来に対する希望とか、そういう意味じゃなくて、寝ている時に見る夢のことだ。
それは当たり前のことで、自分だけが特別なのだとは思わない。
ただ、夢の中の世界は自分だけの特別な世界なのだと思う。
どこかへ旅をする夢。いつも通り学校へ行く夢。可愛い女の子とデートする夢。
空を飛ぶことだってできるし、猫と話すこともできる。
ただ、夢を選ぶことはできない。どんな世界で、どんな人がいるのか。そこで何が起こり、自分はどうするのか。そして、いつ夢から覚めるのかすら、自分には分からない。
そもそも、夢の中では、そこが夢の中なのだと認識すらできない。
目が覚めた時、自分ができるのはただ結果を知ることだけ。
まるで、自分が出ている映画のダイジェスト版を見ているような気分だった。
そして、それは時として、数秒間で忘れてしまうほど脆く儚い記憶なのだった。
僕は、見た夢をできる限り文字として保存する。
あとで見返すことはほとんどないけれど、なんとなく、やめることができなかった。
そこは雪原の世界だったり、夜の明けない世界だったり、とても幸せな世界とは呼べないものも多かったが、僕はそれに小説という形を与える。
人気が出なくてもいい。誰にも読んでもらえなくてもいい。ただ、僕の中に創造された世界を、この世に残したい。ただそれだけ、自己満足のためだけに書き続けていた。
「にゃはは~♪」
と笑う女の子がいた。
その娘は僕の書いた物語を読むたび、感想を聞かせてくれた。
それはとてもうれしいことだった。
ただ、僕は彼女の名前を知らないし、顔を見たこともない。年上なのか、年下なのか、どこに住んでいるのか。電話番号もメールアドレスも知らないし、会ったことも話したこともなかった。
ただ、ちょっと不思議で、猫っぽい人なのだと思う。彼女の書く文字は、いつも楽しそうで、明るかった。
小説としては、すこし物足りなさを感じることもあった。
ただ、そこには僕を惹きつけるだけの魅力があった。
***
気がつくとそこはベッドの上だった。
起き上がり、外に出る。身体は軽かった。
誰ともすれ違うことなく、図書館へ行った。
世界は光彩を放ち、淡い色に包まれ、どこか懐かしい感じがした。
図書館にはいると、たくさんの物語に囲まれて、一匹の黒猫がいた。
「にゃぁ~♪」
猫が鳴いた。
僕は迷うことなく答えた。
「はじめまして、謎猫さん。夢見月です」
僕の夢は、まだ続く。
これ、わざわざ投稿しなくてもメッセージとして送ればよかったんじゃ…………(汗)