第4話出会い
目を開けたら湖の真ん中に居た。
見ただけでもわかる半径200m位の湖だ。深さは有るが透明度が高く水底まで見える。
俺はその湖の真ん中岩の上で惚けていた。
何故こんな場所に出した!?とも思ったが以前よりもマシなので文句は言わないことにした。
「とりあえず岸に行くか」
そして、俺は能力を使った。発動はイメージだ。形と性質がきちんとイメージ出来れば、どんなものでも創り出せる。なお形と本来の性質が違っても創りたい物はできる。
実験では、ジョーロをイメージしながら掃除機の性質をイメージしたところ、ゴミを吸い込むジョーロが出来た。このように形は余り意味がない。
俺は、氷の道を岸まで創りだし、そこを渡って岸に降りた。原子の密度をあげたのだ。
外側から見てわかったが、俺の乗っていた岩を伝って、水が流れている。どうやらあそこが源泉らしい。湖の周りは森になっており、一ヶ所だけ川があった。そこから、下流に流れているようだ。
そして、川に沿って道もあった。近づいていくと5〜6歳の女の子がうずくまって泣いていた。ピンクのワンピースを着ていて、髪の毛は金髪、ただ日本のコスプレや外国人のものとは違い、いかにも金といった感じの光沢があった。
自由にして良いということなので、話しかけてみた。
「どうかしたのか?」
「¥&@:;,,,)¥」
…言葉が通じない。確かに翻訳してくれるとは言わなかったが…
(ケチだなぁ)と思いつつも俺は能力を発動する。
創るのは物ではない。これが、俺がこの能力にした理由の一つだ。翻訳の能力を創る。
《創造·特殊能力·翻訳》
厨二病になった人は一度は考えるであろう。最強の能力は何か?と。
俺はこの問いに答えを出した。『創造の能力ならば全ての能力を創れるだろう』と。何故か漫画や小説に出てくる創造の能力者は、能力を創らない。それが、わざとなのか、創れ無いのか、思いついたことすらないのか、知らないが、俺は、この能力が最強だと思う。
(頭の中にモノを思い浮かべ頭の中で詠唱する、魔法に近いモノがあるなぁ…)
そして、俺は翻訳の能力を常時発動にしてからもう一度女の子に話しかけた。
「どうかしたのか?」
「『せんとうたいかい』にいきたくないって、…いったらパパとママが、…いかなきゃだめって…」
泣きながら舌足らずな事情説明を解読すると、どうやら年に一度、武器や異能、魔法等何でもありの戦闘大会が有るらしい。…ていうか、戦闘大会って名前だせぇ。
そして、この子は『怖いので行きたくない』と両親に言ったらしい。
だが、両親は高貴な身で有るらしく必ず行かなければならないと諭された為に、家を飛び出して現在に至る。
ようは家出だ。街から20分で、この場所に来れるので、家出先にはうってつけらしい。
貴族は、招かれた催しは行かなければ、家名に傷がつく。
だから両親は頑張って諭そうとしたのだろう、俺の推測だが…。
俺は可哀想なので、アイテムを創った。もちろん、ただのアイテムじゃない。
《創造·眼鏡·付与·透明化·判別能力·予測能力》
着用すると眼鏡が透明になり、他人から眼鏡が見えなくなる。さらに着用者は植物以外の生物が、白く見え、体液等は見えなくなる。おまけで、着用者に敵意を抱く者は赤く見え、敵意は無いが害を与える者は、緑に見えるようにした。この効果は動物にも適用される。
俺は女の子にこの眼鏡の説明をしてから、メガネを渡して言った。
「二つだけ約束して欲しい」
「なーに?」
「このメガネのことは誰にも話さないこと。そして、俺の外見や特徴を誰にも話さないこと」
一つ目は、この子のためだ。メガネの存在を知れば、欲しがる奴は多いだろう。そして、奪おうとする者もいるだろう。そういう奴からの対策が一つ目だ。そして、二つ目は、俺のためだ。すぐに11年後に行くため、俺の存在はなかった事にしたい。年齢と外見がつり合わなくなるからだ。
幸いなことに、ここにはこの子しかいない。11年後には忘れているだろう。
「うん。わかった!」
女の子の声や表情からは泣き跡すらなかった。俺はこの子の笑顔を見て、11年後には美人になるだろうな、と想像した。
『微調整が終了しました』
頭の中に直接声が聞こえた。驚きはない。あらかじめ念話で伝えると言われていたからだ。
(能力の練習中に念話も練習したしな…)
「もうそんな時間か」
『30秒後に転送します』
「早えな!?」
(思わず叫んでしまった…)
「?」
いきなり叫んだせいで女の子が驚いて…はいないが不審に思っているのか首を傾げている。
「………俺はもう行かなきゃならないから、機会が有ればまた会おう…」
「もういっちゃうの?」
「ああ、11年後にここの戦闘大会にでも参加するよ。覚えていたらその時また会おう」
「おなまえは?わたしはエリス!」
「俺は最人だ」
言った瞬間、また視界から世界が消えた。