02
僕の家から弘前美香の家までは歩いて15分ほどかかる。このまま歩けば遅刻はほぼ間違いないが、いつも何かしらの理由で怒られるので歩くことにする。美香の家へ向かう道中、けばけばした女の人ととげとげしい金具を服につけた男のカップルが口喧嘩しながら歩いていた。
「なんであんたはいつも私を置いてどこかへ行こうとするのよ。」
「仕方ないだろ俺はこう見えて繊細なんだよ」
「頼りない男ね、まったく」
「うるせぇ…」
僕はこういう痴話喧嘩はそんなに嫌とは思わない。人に興味を持ちやすい性格だ。僕は弟のように多くの人から慕われるということはほぼないが、僕は多くの人に興味を持っている。しかし、特別に誰かと付き合っていきたいとは思わない。我ながら面倒くさい性格だ。
「遅い。何回言ったらわかるの?」
「ごめん。寝過ごした。」
「知ってる。というかいつもそうだし。じゃあ行こっか。」
「うん」
「あーくんってさ、ちょっと抜けすぎじゃない?」
「え…そうかな…」
「そういうところがだよ。遅刻はもうこの際仕方がないこととして、注意不足というかなんというか…そんなんだと光君だって心配するんじゃない?」
「光は逆に僕に干渉しすぎだと…思う…」
「それだけあーくんが好かれてるってことだよ。」
「そうかな。」
「そうなの。まあいいや今日は楽しもうよ。」
「うん」