待つ時間。
アンナちゃんの暇つぶし。
やあやあ、アンナちゃんだよ。
センティリアに対して一週間の猶予を与えたから、暇になったよ!
というわけで、そうだ、王都に行こう!ってことで。
やってきましたセンティリア王都!
ここは街がほんと綺麗。全体的に統一した感じになっててね。整然と並ぶ街並みは凄い。
しかも、要所要所に独特なデザインの家があったりしてね。それがアクセントになっていい感じに整ってるわけよ。
いやー、住むとしたらここだね!
ま、これから壊すんだけど。
その前に軽く観光しよう!
ぶらぶらっとね!
慌ただしく動く兵士、それを不安そうに見詰める住人達。
そんな中を、私はゆっくり歩く。
適当に雑貨屋を見て、金物屋に入って。
鍛冶屋で武器を軽く手入れしてもらって。
やっぱり双剣はだめかぁ。まあいいけど。
いい感じの酒場入って、ご飯たべて。
ここはお肉美味しいねぇ。東が魚なら西は肉か。
ゆっくり食べて。適当に宿でもとって。
ゆっくり休む。
すやぁ。
そしてまた朝!まだ猶予まで4日あるね!
今日はどーしようかな、街全部回ってみようかな。
城から扇のように放射状に広がる道、城の裏には森。
森の中にも街があって、そこも王都。
そしてその森の中に、城より高い大きな樹。
あれが、この国の守護神がいる所だね。
とはいえ、基本的に色々な所をぶらぶらしてるらしいけどね。街中を。
「……それにしても、でっかいなぁ。」
「そうだろう、少女よ。」
……!
「突然ですまんの、だがあの樹をみていた様だったからのう。」
緑髪緑眼、耳の尖った青年。
「あれを見ているとな、世界とは大きく、我等はちっぽけなものだと感じるのじゃよ。」
「……そうかな。世界なんてただ広いだけ、小さなものだよ。」
「そうか。……ならば、何故世界を壊す?」
「何故、ね。理由なんかいる?」
「きっかけはあるじゃろ。」
……そうだね。
「最初はなんだったかな……。もう覚えてないよ。」
「理由すら忘れたのかね。」
「でも、一つだけ。覚えてる。私を壊した世界に復讐、最初はそうだった事は覚えてる。」
「今は違うと?」
「私はね、この世界が好きだ。同時に、大嫌いだ。……お前もそうだろう、エルド・サーヴァント・アルラエルフィ。」
つまり、この国の守護神。噂をすればなんとやら、ってやつかな。
「そうじゃの。故に儂は護るのじゃ。この大嫌いで大好きな世界をの。」
「私は壊すよ、大好きで大嫌いな世界をね。」
「……そうか。まるで、獣のようじゃの。」
「ははっ、生憎と亡霊でね。獣と言われてもねぇ。」
「そうか。……まあ、よい。お主とは相容れないのであろうな。」
「そうでもないさ。ただ、この世界では敵だっただけ。」
「……そう、か。輪廻神の巫女であったな。どれだけの数、旅して来たのやら。」
「なぁに、たった37427周よ。気にするほどのものでも無いね。」
「……下手な神よりよっぽど生きておるのだな。」
「大体平均60まで生きてるからねぇ。もっとも、最近はかなり短めだから40くらいになってるかもね。」
「それでも、だ。全く、シャラも酷な事をさせる。」
「……お?知り合い?」
「昔、少しな。」
「へぇ……時間があれば聞かせてほしいものだね。」
「なに、後の世界で聞けるじゃろ。」
「今は教えてくれないんだね。ちぇー。」
「生憎、敵に話すことはないのでの。ほっほ。」
「えー。そこはなんか話そうよ。」
「なんか。」
「うわ、ジジイそれウザい。」
「……何故だろうか、心に傷を負ったのじゃ……。」
「神ェ……。」
「いいもん、ワシ神様権限で回復するもん。」
「もん、とかねえわー。どんだけ生きてると思ってんだ、年寄り。」
「お主に言われたくないわ。」
「生憎と私二十ですー、若いですー。」
「全ループ含めると?」
「わたしあんなちゃんだいたいひゃくはちじゅうまんさい!」
「ババァじゃねーか。」
「真顔やめなさい……。」
「というか何故お主とここまで喋っておるのじゃ?」
「暇だからじゃね?」
「そうじゃな、暇じゃの。」
「適当にぶらぶらしねぇ?」
「いいのう、暇潰しにはなるじゃろ。」
「……私、敵よ?」
「時が来るまでは何もしないのじゃろ、ならいいではないか。」
「あー、うん、そーだね……。」
……コイツと適当にぶらつく事決定ー。
並んで街を歩く。
「なんか面白い所ないの?」
「適当にウチにでも来るかね?飴ちゃんあげるからの。」
「……警邏、ここに誘拐犯がいまーす。」
「滅相な事を言うでない……。」
「で、どこいくの。」
「昼前だしの、飯としようか。お主、肉は好きかの?」
「いいねぇ。いこうじゃないか。」
案内されたのは、裏路地にある小さな店。
「へぇ、こんな所あるんだ。」
「ここ、美味くての。」
「んじゃ、オススメをよろしく。」
「うむ。今日のステーキを二つ頼む。」
「……。」
店員、無口!頷きで返したよ!
「なんか、凄い隠れ家みたいな……。」
「いいじゃろ、儂ここ好き。」
「何もなければ入り浸りたい雰囲気よねぇ……。」
「……。」
「……。」
まったり、待つ。
「お、来たのう。」
「うわ、美味そう。」
でっかい、ステーキ!
「頂きます。」
「頂こう。」
お、最高の焼き加減!
柔らかい、けどしっかり歯ごたえ!
肉食ってるって感じする!
「やっべ、これ最高だわ。」
「やはり美味いのう……。」
冷めないうちに、しっかり味わって。
「ご馳走様!いやあ、今まで食った中で最高だったわ!」
「うむ、うむ、ここは最高じゃろう。」
余韻に浸って、さー、出るかー。
「あ、食事代。」
「よい、既に払った。」
「……ゴチになりまっす!」
「ほっほ。さ、適当に歩こうかのー。」
で、またぶらつく。
「知っておるか?この国、実は儂が産まれる前からあるのじゃよ。」
「え、そんなに続いてんの。」
「うむ。とはいえ、何回か国名が変わっておるがの。」
「そうなんだ。吸収したりとか?」
「そこら辺は儂が産まれる前じゃし、知らん。」
「なんだそりゃ。」
「……ここだけの話。祖先に精霊王の血が混じっていたらしい。」
「え、マジ?」
「うむ。神話にもあるじゃろ、精霊王が精霊神に出会う前は地上で過ごしていた話。」
「ああ、精霊神が精霊王を助ける前の話ね。」
「うむ。その舞台が、ここらしい。」
「わぁお……。ロマンだねぇ。」
「ロマンじゃろう。本当の所は、知らんがの。」
「もう遠い遠い昔の話だしねぇ……。」
「本人に聞いてみるという手もあるがの。」
「……本人、ね。」
「なんとなくしかわからんが、近くにおるかもしれん。」
マジか。
魔術、探査。
「探査の範囲内にいる、かも?なんか歪んでる……。」
「あやつら、世界からズレておるからの。」
「しかも強大な力で、周りを捻じ曲げてるのか……。」
ソレルと会ったときは使わなかったからなぁ……。
「ん?まって、私ソレルとは会った。」
「森の中、じゃろう。ここにはあまり来んよ。」
「じゃあ、どれが来てるんだろ。」
「お主が来る少し前に、来たからのう……。目、付けられておるのでは?」
「え、なにそれ知らない……。」
え、こわ。
「黒は大抵来ないじゃろうし……赤か、青か。」
「……キヒヒッ。」
「どっちだろう……。」
「どっちかの……。」
「って、まって、さっき笑った?」
「いや?お主ではない、よな……。」
「……。」
「……。」
「わ、儂用事思い出したの。」
「ちょ、待って、それはナシだろっ!!!」
「その時にまた会おう!」
「うっわ、逃げたっ!あんのクソジジイ!」
……。
…………。
探査、私の近くが歪んで見えない……。
「あ、あのー……。私、なにかしました……?」
気付いたら、周りに人が居ない。
ここ、大通りなのに。
「なにか喋って、くださいよ……?」
……。
…………。
あ、探査の歪みが消えた。
気付いたら、人が沢山いるいつもの大通りに。
「な、なんだったの……。」
ああ、こわ。
「酒でも飲みに行こ……。」
飲んで忘れるに限る……。
見詰める瞳。
その眼は狂気に歪んで。
「素晴らしいネ……クヒヒヒヒッ。」
「や、やべえのに目ェ付けられてんだけど……私の巫女よ?持ってかれないよね?」
「大丈夫、持って行きはしないだろう、多分。」
「お前の分体だろーが!!!」
「私も分体だ、間違えるな。……まあ、大丈夫だろうよ。」
アンナちゃん、ご愁傷様……。




