あーあ、時間切れ。
ようやくヨムニールを滅ぼしにかかりますよ。
やっほう、アンナちゃんだ。
あれから何度か王宮から手紙が来たけど、まあ突っぱね続けて。
私達は宿でのんびりしながら、街をぶらぶらと。
……いくつか良さげなのを、ちょいと弄りながら。
本人すら気付かないうちにね。
そして、ネクロマンシーを発動した瞬間にアンデッド変わるっていう感じにしたよ!
これを、毎日50人くらいにやるわけだ。
ふふ、お忍びで遊んでた貴族の坊ちゃんとか、兵士にも仕込んだからね。っふふ。
さあ、そろそろかな。
「ナタエラ、そろそろ来るんじゃない?」
「そうですね、あと一日ほどで……。」
「そうか、そうか。っふふ。」
これでよし。
「今日はどうする?」
「また長い旅路になるのですから、最後にゆっくりしましょう?」
「賛成ー。」
宿で、のんびりーだらりーと。
本読んだり、お茶したり、適当に喋ったり。
ご飯を食べて、ゆっくりして、お昼寝して。
お風呂で洗いっこして、騒いで。
ご飯食べて、軽くワインでも飲んで。
最後の休日を堪能して。
さあ、平和な日常にさようなら。
朝。
「おはよう、ナタエラ。」
「おはようございます、アンナ。」
「よく眠れた?」
「バッチリです。身体の方は?」
「ああ、もう万全だよ。」
「ふふ、よかったですわ。」
「ふふふ。さ、アレはどこにいる?」
「もう少ししたら、見付かるかと。」
「そうかい。……まずは朝ご飯だ。」
「ええ。食べましょう。」
動ける程度に沢山食べて。エネルギー充填。
そして食事後のお茶を飲んでいる時。
警報の鐘が鳴り響いた。
「……ふふ、タイムアーップ。」
「うふふふ。」
さて、荷物を纏めて、と。
「準備はいいかな?」
「勿論ですとも。」
宿の外に出る。
おー、兵士が沢山走ってる。そして内側に避難する沢山の人。
誘導してる兵士発見。
「何があったのさ。」
「アンデッドの大群だ!いやに統率が取れてやがるんだよ!」
「ふぅん。ありがと。」
……そうだねぇ、ここは一つ。
「避難所はどちらかな?」
「こっちだ!流れに乗れば着く!」
「んふ、ありがと。」
人の流れに乗って、適当なところで路地に。
先に避難所まで行ってるよぅ?くひひひっ。
屋根を伝って、避難所に入る。おーおー、すでに一杯じゃん。
「もう入れないぞ!」
「ふざけんな!まだ沢山居るんだぞ!」
「押すな!」
あーあーあー、大変だねぇ。
「道にバリケードを作るんだ!」
「壁をつくれ!」
あっちはあっちで大変そうだねー。
避難所を囲むようにあぶれた群集、その周りにバリケード。
まだアレは入ってきてないのにね。
「けれど、敵はすでに入っている。」
「そうそう。っふふ。」
人の流れが落ち着いてきたところで、さあ、始めよう。
魔術、拡声。
「さあ、さあ、皆様ごきげんよう!お加減はどうかなぁ???」
「な、なんだ!?」
「誰だ!」
「私はしがない亡霊にございます。ハーヴェスタを消し去り、グラスゴルを滅ぼし、エイロジャルで暴れ、そして今。大軍を率いこのヨムニールへと参りましたぁ!」
「大軍を率いてるのは死霊皇姫だけどね。」
「おっと、そうだったね!悪い悪い!ああ、こっちは狂気のネクロマンサーだよ!大体こいつのせい!」
「私をネクロマンサーにしたのは貴女ですが。」
「そうだったっけぇ?まあいいさ!」
ざわつく群集、怒号も聞こえる。ま、無視で!
「さーて、聞こえてるかなーヨナちゃーん!準備はいいかなー!」
「ウム、何時でも逝けるの。我が祖国がすぐ目の前に。」
「お、おい今の声……。」
「ヨナちゃん、自己紹介よろ!」
「良きかな。妾はヨナ。ヨナ・ヨムニール。この国の王にして、アンデッドを率いし死霊皇姫である。さあ、我が故郷へ。道程は残りわずかよ。」
「ヨナ様……!?」
ま、驚愕するよねぇ。
「それじゃ、かなーり待ったことだし。始めようじゃあないか!」
「ええ、始めましょう。」
「良いぞ。」
「それじゃあ、いくよー!……私の名前はアンナ・グリムディア!絶望の亡霊、輪廻神の巫女だよ!」
「私はナタエラ・クルヌア。守墓神の巫女にして、エリュシューの使者。」
さあさあさあ。
魔術、ロア・スクリーム。恐怖と絶望を乗せた声で!
「シャムシャラの亡霊が、貴様等を壊しに来たぞぅ!」
さあ、いっくぞーっ!
変則的な名乗りですなぁ。




