首都の中!
のんべんだらりと。
はろはろろーろろろ。アンナちゃんだー。
ヨムニールの門前にいる!
「すっごい人だねぇ……。」
「そうですね……皆、着の身のままという感じがしますし。」
「そりゃあ、そうでしょうねぇ。」
ナタエラにも幻影教えて、二人とも人の姿してます!
身なりのよさげな、動きやすい格好のお嬢様が二人。襲われそうな感じするけど、されないんだよねぇ。
だって、私は血の滴ってる大剣(鞘刃に入れてる、抜き身。血は幻影。)を担いでるし。
ナタエラは何かを殴り殺した跡のあるロッド(鉄製、血付き。これも幻影。)を手に持ってるし。
そんなの持って、従者も連れてないってなんか近付きたくないよね!
「とりあえず、その抜き身はやめません?」
「やだよ、もしかしたらアンデッドがいるかもしれないじゃん。」
「…………そうですね。中に入るまで安心は出来ませんし。」
おうそのジト目やめろや。
まあなんだ、そんな感じだから周りは空いてるよ!
「つーかまだかなー。かなりの速さで入れてるみたいだけどさー。」
「多分、入った先で詰まってるのでしょうね。」
「こんなんじゃ入るより先に来るんじゃね?」
目配せ。
「そうですねぇ。早くしないと来そうですねぇ。」
了承だね。
小さな声で。
「来い、テメェら。一当てしろ。」
んふふ。
しばらくして、ぞんびーの群れが来た!村人あたりで作ったやつだね。ま、雑兵かな。
「あ、アンデッドが来たぞぉーーっ!!」
「早く入れろぉっ!」
「助けてぇっ!」
「あーあー、言った側から。」
「です、ね。」
さ、演劇といこう。
「テメエらは行けぇ!私が殺るッ!」
「門に逃げるのですよ!」
はい、自作自演ってやつですねぇっ!
避難民を煽って、門に詰めかけさせて。どんどん入れる。
私等は最後尾近くに行って、ぞんびーと戯れる。
ついでに斬った分だけぞんびーを増やす!
「まだかなっ!」
「もう少し、ですね!」
「大丈夫かっ!救援に来たぞ!」
お、兵士来た。
「避難民はっ!」
「もう少しだっ!」
「わかりましたよっ!」
もう少し遊びましょ。
しばらくして、太鼓が聞こえた。
「避難完了の合図だ!」
「よっしゃ全速離脱といこうかー!」
「逃げましょー。」
はい、門に入った!
「門を閉めろッ!」
おっきな門が閉まって。
ちっさな声で。
「テメェら、もういいぞ。」
自作自演終了ー!
「諦めたみたいだ!」
「っふー。」
「なんとかなりましたね。」
「おふた方、感謝する。」
この門の兵士長かな?
「いーってことよー。」
「ですが、お腹が空きましたね。」
「……礼に飯ぐらいなら出せるぞ。」
「ご馳走になるよ。」
飯だー!
「ここの飯、なかなかうめえな!」
「ええ。かなり。」
「ハッハ、この国の飯はうめえからな!」
門の食堂でご飯してまーす。
「ところで、君達はどこから来たんだ?見た感じはいいところのお嬢様、という感じだが。」
ま、聞くよね。
「私は……グラスゴルから。ナタエラと申します。クルヌア子爵家、って言っても分からないでしょうけど……。」
「グラスゴル……そいつは、また良く生きてたな……。」
死んでるけどね!
「この人に助けられましたから。」
「ほう?」
「あー、私はあれだ、エイロジャルから。私はグリディナだ。エイロジャルではグリディナ=アンナ・ディアグリムと呼ばれていたよ。」
「ディアグリム!?最近になって出てきた、エイロジャルの魔術を大幅に発展させた伯爵家か!?」
「そーそー。」
ここまで話伝わってるのな。……まあ、五年も前だし伝わるか。
「当主の名前はグリディナだったよな?」
「てことはあれが……!」
周りにいた兵士もざわめいてるわ。
「ま、エイロジャルも無くなっちまったし。今はただのグリディナさー。」
「そうなのか……あのエイロジャルが、か……。」
「残るはここと、センティリアだけだろうねぇ。」
「……。」
渋い顔して黙っちゃったよ。
「さて、ご馳走様です。」
「うん、ご馳走様だよ。ありがとねー。」
用は済んだしいくかー。
「ま、待て!」
何か。
「我々と共に戦ってくれないか!」
えー。
「それは貴方の一存では決められない事項ではありませんか。というより、私達は疲れておりますので一刻も早く休みたいのです。ご要件がありましたら、後日とさせて頂けますか。」
「……わかった。宿は。」
「いえ、これから決める所で。」
「なら、貴族御用達のいい宿がある。案内させよう。」
「よろしいですか?」
「いーんじゃねー?つーか、ねみぃ。」
交渉はナタエラに任せたー。
「では、案内を宜しくお願いします。」
「わかりました。……馬車を用意しろ!」
「ハッ!」
楽ができそーだねー。
そんなこんなで、馬車で宿に!兵士が先触れに行って、私達はゆっくりと。
下手すりゃ私等、……というか私が、国賓レベルだし。
ま、戦力を必要としてる状況だしね。
兵士も、城に向かった奴がいるし。
ひとまず明日までゆっくり出来そうだねぇ。
「着きました。」
「ん、ありがとー。」
さて、だらけたのから、お嬢様モード。
「ご苦労。宿の紹介、感謝するよ。」
「……!ハッ、光栄にございます!」
ん、対応してくれたね。
「ではこれにて私共は失礼致します。」
「ええ。……ああ、そうだ。一つ言っておくことがあった。」
「なんでございましょうか。」
「……敵には、強力なネクロマンサーがいる。気をつけろ。」
私、ナタエラ、死霊皇姫がね!
「……ハッ、上に伝えておきましょう!」
んふふ。
さて、宿ー!
「ようこそいらっしゃいました。」
「宜しく頼むよ。」
「お願いしますね。」
部屋はまあ、貴族御用達なだけあるね。
「どうぞ、ごゆっくり。」
……。
「だはー、久し振りのベッド!」
「ええ……。疲れました……。」
ベッドを見たら、なんかどっと疲れが……。
ひとまず、シャワー。いや、お風呂にしよう。
……寝る時間が惜しくて、二人一緒に入ってまーす。
「……やっぱり、綺麗ですよね……。」
「んぁー?」
「胸も腰も……臀部も……。」
「ナタエラもスレンダーでいーじゃん、いいラインしてるわー。」
慎ましやかな胸なのよね、この子。
「とはいえ、弄るほどの気力はないー……。」
「ここで寝てしまう前に上がりましょうか。」
「そだねー……。」
おふとん!ふかふかのベッドが私を待っている!
「んはー……。おやすみぃ……。」
「おやすみなさ……ぐぅ……。」
おやすみぃ。
旅って疲れるよねぇ。




