私、は……。
拾ったお嬢様。
目覚め。知らない部屋。知らない天井。
ここは、どこ?
起き上がり、ボロボロの服に気付く。
そうだ、私は……沢山の……。
「よう、起きたぁ?」
声。忘れる事の無い、出来ない声。絶望の……!
「まーまー、怖がんなって。ぶち犯されてたの助けてやったんだからさぁー。ひゃはははっ。」
振り返り、精一杯の気力で相手を……。
「な、な、な、なんで一緒のベッドに!?というか、何故裸なのです!?」
「昨夜は お楽しみ でしたね。」
「え、な、なぁっ!?」
「あんなに激しく求めてきちゃって……きゃっ♡」
あわわわわわわ。
…………きゅぅ。
はーぁーい、アンナちゃんだよー。朝から面白いものが見れましたねぇ!しかし気絶するとは。やっぱりこう、精神すり減ってるんだろーね!主に私が原因で!
さてと、ごはんの用意でもして、起きるの待とう。
で、ごはん!コイツも一緒に!まだふらふらしてるからベッドでね。親鳥のように食べさせますよぉ。ふふふ。
あ、このお嬢様、名前がリヴィナ・ティスカって言うんだって。伯爵家の娘だよ。
真っ白の髪に……黒く耀く眼!すげー、珍しい色してらー。
こういう珍しい色って、危険なんだよねえ。ヤバイ神とかが目を付けてたりするし。特にヤバイのは赤。赤い眼は近付いちゃいけねーよ。なにせあの……。
「はっ!?」
あ、起きた。
「な、何か酷い夢を見ていた様な……。」
「どんなぁー?」
後ろから抱きつく。
「絶望が裸で頬を染めて這い寄ってく…………え?」
「ん?」
「ぜ、」
「おーっと、これは現実だぜー。気絶すんなよー。つーか人の顔見て気絶するとか私キズついちゃうわぁー。」
現実、見よう?
「な、何故貴女が……。」
「おーけー、状況を整理しよう。」
お前はリヴィナ・ティスカ。私はアンナ・グリムディア。リヴィナはエイロジャルにぶっ飛ばされて、ここ。私はグラスゴルぶっ壊してここ。私ここ来てお祭り中。お前はここ来てブチ犯されてた。で、私が見付けてなんとなく助けた。おーけー?
「全部貴女の手のひらの上、って事ね……。」
いやそうでもない。けど言いませんー。
「さて、どーする?君には三つの選択肢がある。」
一つ、生を選び地を這う。そのために私と行動を共にする。
一つ、ここで死ぬ。私の手で。
一つ、さっきまで居たところに戻って、弱者として奪われ犯され有象無象の手で死ぬ。
さあ、どうするぅ?
「……もう、あの頃には戻れないのですね。」
あっは、なんか諦めと達観と何か悟った目をしてらー。
「ま、そーだね。そーいう運命だったんだよ。」
私、運命って嫌いだけど。
「運命……運命なんて、私は……!」
お?
「…………わかりました。貴女に付いていきましょう。」
「ふーん。理由聞いていい?」
ちょっと面白い目をしてる。
「私は、まだ死ねない。まだやりたい事が沢山ある……。私は、運命なんて認めない……!認めてたまるものですか……!」
……ほお。これはなかなか。
「ンヒヒヒヒヒヒッ!いい目をしているねぇ!気に入った!なら先ずはその運命を否定できる力ァ手に入れようかぁ!」
「力……。」
まずはあれだ、その身体を綺麗にしようねー。
魔術、リフレッシュと。
「……なんですか、この凄まじい回復量は!」
……あれ、全快?マジ?
「この力があれば人助けも簡単だった筈……。」
「え、やだ面倒くさい。」
面倒くさい。
「……そうですか。」
それはそーと。全快したんだからさっさとシャワーでも浴びてこいー!服は用意してやらぁ!
蹴り飛ばす勢いで。その間に私は近場の奴らを適当に殺る。
まだまだ沢山残ってるからねー。
リヴィナにも殺させるか。簡単なヤツからね。
お、戻ってきたね。
「な、なんですか、この服は。」
「似合ってんじゃん。」
烏の羽をモチーフにした、がっちりふわふわのゴシックパンクロリータ!ロングなふわふわ赤いスカートは前がぱっくり開いてそこだけミニ!ロングな所は黒いバンデージがまとわりつく!拘束衣の様な黒いトップスは胸元と背中がっつり開いてる!ダイヤでチェックな黒と赤のサイハイ!そして黒いヘソまでのコートっぽいやつ!
「っはー!マジ厨二病ー!!!ウケる!!!」
「貴女が着させたんでしょーが!!!」
「でも着ちゃうリヴィナ、マジ†堕天使†」
「やめなさい!!!!!」
ウケる!!!!!!これで眼帯つけたらもうヤバいね!!!!
っとと。
「そういや、武器とか使える?」
「え、ええ。倉庫に……。」
へえ、倉庫。出してみ……ぶっはぁ!
「大!鎌!キター!!!!!!」
「い、いいじゃないの!何故かこれが一番使いやすいのよ!」
服も相まって最高すぎるわ!!!
「アッハッハッハッハ!!!お前これからその格好な!!!似合いすぎててヤバイ!腹痛え!ヒーヒヒヒッ!!」
腹抱えて笑ってまーす!
「ぐ、ぐぬぬ……。」
一通り笑った所で、っとと。
「はー、ひー。あー面白。リヴィナ、お客さん来たよ。」
「……お客さん?」
そ、お客さん。
「奴さんとも言うね。お祭りの続きが始まるよ!」
「祭……ということは、」
「うかうかしてると殺されるよぉ?ほらほら、殺らなきゃ殺られる、だ。」
入ってきた。人数、10かな。
「ひっ……!」
お膳立てしてやるかー。
とりあえず9をさっくりと。残る一人は子供か。
「さ、リヴィナ。こいつと戦えー。子供だと思って舐めてると死ぬよ?」
「う……。」
リヴィナは固まっている!子供はきょとんとしてこっちを見てくる!
子供に、あいつ殺れ、とジェスチャー。
頷く子供。
「さ、リヴィナ。戦わないと。じゃないと運命は決まってしまうよ?」
私に付いてくるのであれば。
「く……ぅぅぅううううううう!!」
目を閉じて唸ったかと思ったら、ふむ。
覚悟を決めたかな?大鎌を構えて。
子供に合図。行け。
飛びかかる子供。振りかぶるリヴィナ。
子供の持つナイフが刺さる、その直前。
眼をかっ開いて。身体を引き、滑らせる様に刃を薙いで。
「……ッ死ネえエエえ!!!」
首狩り。……ほぉー。これはなかなか。良いもの拾ったかも。
鏡と棺、か。
っふふ、いいじゃあないかい。
「お疲れぇ、リヴィナ。どうだったかなァ?」
「……。」
子供の死体をじっと見つめるリヴィナ。
「私の……。」
あ、倒れた。よく倒れる奴だなぁ……。ま、いっか。
これからとっても面白い事になりそうだからね!
さ、起きるまで私は食料でも取りに行くか。その辺でね!
ごっはんー、ごっはんー!
それは新たなる……。




