ほの暗い穴の底から。
迷宮攻略の巻。
やほー、アンナちゃんだよ。大穴の底に、着地!美しい姿勢です、10点!
さて。ここは何かな。
石畳。神殿のような造りの通路。巨大な扉。
深淵を覗く時、ほにゃららら。掠れて読めねー。なにがあんだよ。
トラップはないね。なら、入ってみようか。
案外軽かった扉を開けると、巨大な広場。中心の天井あたりに小さな穴が空いていて、そこに青い水晶。ふむ。
その下には、謎の四角い塊。表面が波打っている。てことは、ボスか。
後ろで、扉が閉まった。塊が、動き出す。
人の形。長い髪。整った顔立ち。巨乳、されどバランスがよくスタイルのいい身体。すらりとした肢体。白魚のような指。流行りをつくる、ドレス。鋭利な、二振りの剣。勝ち気な笑み。
なるほど、ね。
「私を模倣したのかな、どの記憶の私かしら。」
記憶を読み取り、模倣するドッペルゲンガー。
ふーん、面白いもの出てくるじゃん。
「イザ、我ガ誇リニカケテ!」
ん……。
ゆったりとした動き。
「舞踏会ノ主役ハ、私ダ!」
鋭い剣戟。
「仇ナス者ヨ、消エ去リナサイ!」
これ、は。
「これまた、なんというか。懐かしいものを出してきたね……。」
壊れる前の、自分。
ああ、ああ。私の姿を模倣するなんて。
「……本当に。」
虫酸が走る……ッ!!!
「サア、イキマスワ!」
ブチ殺ス。……それにしても懐かしい姿だ。
「小さな世界で満足していたあの頃、か。」
行く先に希望があると本気で信じていた。模倣した私に、過去を重ね合わせる。
「あの時の選択に後悔はない。」
だけど、さ。
「愚かな道を進む過去の私。」
その希望を捨てろ。
「行く先は、暗く深い。」
絶望を享受せよ。
「明日を期待するな。」
一瞬こそが生 。
「そして壊れろ。」
全てを諦めて、こちら側に。
「亡霊ガイクゾ……!」
姿を変える。
禍々しく捻じ曲がる角。右眼から噴き出す青い光。身体を這う光の線。
「貴様モ共ニ来イ…!底ノ無イ、絶望ノ闇ニッ!!」
世界を塗り潰せ。
「私ヲ模倣スルンダ、楽シマセロヨォ!!」
ぎゃははは。
「バッ、バケモノ……!?」
「生憎、私ハ未ダ人間ダ!」
どんな姿になろうとね!
「ギャハハハハハハハ!!!」
「ヒッ!」
アァ?
「模倣するならもっとしっかりやれよー……。ヒッはないわヒッは……。」
やべ、一瞬で萎えた。いい感じにノリノリでやれたのに。
「……とりあえず、死ね。」
縦に半分。はぁ……。
「ドッペルゲンガーって強えっつー話じゃなかったかなぁ……。」
つまんね。
「とりあえず、出るか……。」
天井の青い水晶を撃ち抜く。視界が歪む。ぬるりとした感触を感じて、目を開けると。
「…………ここ、どこ?」
禁術発動。……あー、これあれだー。変な所に転移させられたか。うん。マジないわ。
絶島……。北にある魔族領の、北の海の先。ここ、とある神殿があるだけ……。なのに出てくる獣は異常な強さっつーやつ。つーか変なの。全部黒い靄を纏ってる感じ。
ま、いっか。とりあえず海越えて南いこう。
浮けるっていいね!
ふわふわりー!
一路、グラスゴルを目指そう!
自分を模倣されるのが大ッ嫌いな様です。中途半端にやるんじゃねえ!的な。




