神殿、夜ぅ……。
夜は暗躍のお時間。
はっ、気絶してた!暗い!
こんばんは、アンナちゃんですわ。うーん。
私もまだまだだなぁ。人に負けるなんて。魔王すら、一人じゃ倒せないし。うーん、頑張ろ!
で、ここどこ。誰の部屋。臭い的に、女の人の部屋?
「おう、起きたかー?」
……たいちょーだわ。
「起きてるな、大丈夫か?頭すげー勢いで打ったもんな、痛い所はあるか?」
お前のせいだろーがっと。頭打った所は痛いね、たんこぶになってるわ。
「そこだけか、ならいいわ。気絶する前の話、覚えてるか?」
「貴女の部隊に所属?になるのですか。」
「そんなところよ。ウチは五人の部隊なんだが、一人死んじまってな。その補充。」
なんでも、裏方三人、前線二人らしい。で、その前線が一人居なくなった代わりと。
「てことは、前で隊長と組むのですか?」
「基本的に私は裏方だ。」
HAHAHA、御冗談を。
「前の方が得意だが、隊長だしな……。指示出しにくいんだよ、前だと。」
なるほー。
「そういえば、夜飯食ってねーよな。頼んであるからもう直ぐ来るだろ。」
と、ノック。タイミングバッチリか。……いや違うな、足音で判断したのか。
まあいいや。ご飯!
「……美味そうに食うな、お前……。」
「美味しいですもの。」
「確かにそうだが……。」
うめぇ。あ、そういや。
「とても今更ですけど、私、アンナと申しますわ。」
「そういや名乗ってないな。悪い。私はスティティーラ。面倒くさい名前だからスティとでも呼んでくれ。」
「……スティ、隊長ですね。お願いします。」
「おう、よろしく。」
ご飯おわり。
「さて、起きたばかりで悪いが……任務だ。」
「今、夜ですよね?」
「ああ、夜だ。……異端審問と言ってもな、公に動くことはあまりないんだ……。」
そうなんだ。
「主に暗殺的な任務が多いね、うん。ま、そういうものだと思って。」
「わかりましたー。」
私的には暴れられればいいんだけど。
「それじゃ、行くぞ。」
れっつごー。
「と、いうわけで着きました、夜の街。」
「商人の多い区画だな、うん。夜の。」
隊長、ところでもう一人の前線は。
「もう直ぐ着くよ。……ほら来た。」
闇に溶ける服をしたのが二人と、異端審問のローブに、シスター?ドレス?……その間?な服を着た女の人。
「ごきげんよう、ティティ。そちらは……ああ、新しい巫女じゃないの。」
「こんばんは、アンナと申します。」
「私はレティシア。よろしくおねがいしますわ、アンナさん。……早速ここに飛ばされるなんて、ご愁傷様。」
見た目凄い高飛車。……っつーか、こいつ確かアレ、侯爵家三女。あまりにじゃじゃ馬すぎて神殿行って性根正してこい!的な。
「……貴女、そういえば、何処かで……。」
「気のせいですよ。」
気のせいじゃない!!!たしか7歳くらいで会った!!ウチとコイツの家は仲がいい!!!7歳で親の友人を招いたパーティーあった!!!いた!!!
「…………アンナ、ふむ。ああ。思い出しましたわ。」
「思い出しやがったコイツ!!!」
……この身体の記憶だとなんだかんだ懐いてたオネーサマ……うひぃ。
「うふふ、まあ、こんな所でお会いするなんてね。」
「……久々の再開を喜ぶのはいいが、先ずは任務だ。」
ういっす。
目標は商人。人身売買に手を出してるけど、足が付くような事はしてなかった。けど、熱心な教徒が一人コイツに売られて、神殿が気付いたっつー訳。で、今。
「そうだな、レティは正面に。アンナ、裏から屋根を伝って窓から。」
「りょーかい。」
「わかりましたわ。……アンナも、前線なので?」
「ああ。こいつはなかなか強いぞ。」
「まあ、いいですけど。早々に死なない様気をつけなさい。」
「はーい。」
んじゃ、屋根行きますか。
「おっと、待て。お前武器も持たずに行くつもりか?」
あー。魔術の倉庫に入ってるから手ぶらなんだっけ。
「これを使え、大司教からだ。」
……大剣っすか。振ってみる。……ほう、まあまあ。
「私達は専用の武器を贈られる。お前のは今つくっている最中だからな、しばらくはそれでやれ。」
まあ、有り難く使わせてもらおう。大剣も使いこなせる様にしようね。
「アンナは大剣を使うのね。魔術が得意だって聞いたけど。その影響で持てるのかしら。」
「重量はそのままに、軽くするんですよー。魔術便利。」
「魔術様様ね。」
「そうだな。……さあ、行こう。我らが正義の名の元に。」
それじゃ、今度こそ行こう。大剣背負って、壁にぴょん。壁を蹴って、屋根にぴょん。
目標の建物の屋根で待機。……夜風が気持ちいい。王都をぼんやりと照らす光が綺麗。
「おーっほっほっほっほ!!!こんばんは、商会長は居るかしら!!!」
オー、すげえ肺活量。人が表に集まる。そして気付く、異端審問の服。
「さあ、大人しく出てきなさい?今なら処刑で済みますわ!!!」
なんて言われてでてくる奴はいない。建物が慌ただしくなってきたね。
……合図、見えた。よっしゃ、行くぞー!
窓を蹴破り商会長の部屋に。驚く顔を尻目に、瞬間、接近。
「サヨーナラァ!」
右の首元からお腹までバッサリ!もういっちょ、左の首元から!アッハハハハ、ウケる格好になったね!
そのまま周りの人を斬り殺す。一振りで何人も死ぬ!タノシー!!!
表の方からも悲鳴と断末魔と高笑いが聞こえる。楽しんでるね!
「おーっほっほっほっほ!!!次は誰かしら!!!」
「アッハッハッハッハ!!!!次は誰かなぁ???」
一人も逃がしませんことよ???
暴れてる間に後方の奴らが商会長の死体を回収。串に刺して、屋根の上で晒すんだってさ。あっはは。
「アンナ、他はいる?」
「いない。そっちも、いる?」
「いないわね。」
聞いてた人数と違うな。私105くらいやった。レティは?
「114。」
230居るって聞いてたから、残りはどこかにいる。ふむ。
探知、発動。……地下に大量の人の反応。
「なるほど、地下牢。行きますわよ!」
おーけぇ。入り口どこかな。
「こういうのは大抵倉庫にあるって決まってますわ!」
本当かよ……。
倉庫。ほんとにあんの?
「ここですわ!」
床をぶっ壊すレティ。豪快だなおい!?
「入り口、ありましたわ。さあ行くわよアンナ!」
……本当にあったよ。すげーなその勘。
暗い階段を降りて、降りて、降りて。……長いな。
「……なにか、おかしくない?」
「ですわね。……アンナ、何か魔術がかかってないかわかりませんの?」
これまた面倒くさい事を言う。まあ、でもそうだね。みてみるか。
魔術発動、適当に……幻影破壊。
パリン、と何かが割れる音がして、明るい階段が出てきた。
「流石ですわ。」
「ありがと。」
今度こそ地下に到着。……うん、檻だね。檻が並んでる。中には色んな人が、ぼろ布一枚で。
「人身売買の証拠、沢山ありますわね。」
そーだね。奥行こう?
奥は、なんか広く……え、なにここ。
「小さな闘技場?」
「……かなり大掛かりですわね。となると……。」
他にも色んな所が関わってるか。
「とりあえず、逃した奴ら探して殺しましょう。」
「賛成。」
二手に分かれて探す。いないね。
「……見つかりました?」
「いいえ。奥が怪しいんだけど。」
「ではそれで。」
探知発動。うん、奥に数人いるね。目標とちょっと多いけど。
管理、ルーム。ここかな。
「たのもー!ですわ!」
蹴破って突入。おー、いたいた。証拠になりそうな書類を集めて、何をしようというのかな?んん?
「っく、ここまでかっ!」
魔術の詠唱をしてるね、これは……火か。ふむ。
「燃やそうとしてる。」
「させませんわ!」
こっちも魔術いくよー。発動、氷の礫をくらえー。
レティが斬り殺し、私が撃ち抜く。変なことさせる前に殺したよー!
「これで以上かしら。」
かな。探知にも、周りには人無し。逃げ出そうとする奴もなし。人数的にもおーけー。むしろ数人多いかな?
「任務完了、ですわね。」
だねー。
「さっさと帰りますわよ。夜更かしは美容の天敵ですわ。」
さんせーい。
隊長に報告。事が事だけに、騎士団にも要請して後始末を頼む。
それじゃ、帰りましょ。
レティシアは、アンナちゃんより8ほど上のお姉さん。




