天秤に乗るのは、羽か、心臓か。
三話連続投稿、後。この前に二話あります。
これが、11111周目。
やあ、アンナちゃんだよー。仮面女と、相対中。こいつ、何者。
「私に恨みがあるって話だけど、誰なのかねぇ。その仮面、外してみてよ。」
「……。」
「返答はなし、か。」
誰か知らないけど、殺すか。
無言のまま、突進してくる仮面女。打ち合う。
……ん?この剣筋、どこかで。
右、上、右、下、左、下、上、左。
「どこかで戦ったことあるかい?」
「……。」
返答なし。
速い。まるでこちらの戦いを見た事がある様な。
上手い。まるで私と戦った事がある様な。
誰だ。
不意を突く。斜め後ろから斬りかかり。
「なっ!?」
く、首!首変な方向ねじまがっ!?いや腕も!?
服が少し斬られた。え、なに、人じゃないこいつ。
「ククク……。」
喋ったァ!?!?!?!?
仮面女が、仮面を外す。え、外すの。
「ワタシノ顔ニ見覚エガアロウ……!」
右目に抉られた様な跡。左目は鈍く光り、見えているのか見えていないのか。整った顔に、歪んだ笑み。
「我ガ正義ニ誇リヲ!」
「マジかよ……。」
デス・秤神の巫女。
「貴様ヲ、正義ノ元ニ、殺ス!」
「オイオイ、秤神ってのは何でもありかよ……。」
アンデッドすら巫女にしちまうとは。いや、巫女のアンデッド?
「イザ行カン!我ガ神ヨ!」
「アンデッドはお帰り頂こうか!」
火葬にしてやる!くらえ炎弾――
「我ガ神ハ魔術ヲ否定スル!」
……出ない!?
「我ガ神ハ魔術ヲ封ジル!」
「式の阻害、魔力放出の阻害かよっ……!」
「シカシテ我ガ神ガ御業ヲ否定セズ!」
あ、これはやべえ。
「裁キノ秤ヲ!」
「させるとでもっ!」
その左目がコアかっ!穿つ!
「アタラヌ!」
首それ取れてんじゃん!?よけられた!
「決!罪ニハ、死ヲ!」
ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ。
「刑、執行!」
「オオオオオオオラアアアアアアアアアア!!!!!」
コアを貫いたッ!死ねッ!
「羽ヨリ軽キ心臓ッ!」
ふ、と。
景色が歪んで。
「あ……。」
目に広がる、青。
下には、遥か広がる世界。
魔術、発動不能。
私より先に落ちる羽を幻視して。
落ちる――
「罪ニハ、死ヲ!」
声が聞こえて、しかして通り過ぎる。
ああ。
詰んだ。
落ちる、落ちる、落ちる。
世界はこんなにも広かったんだねぇ。あの穴は、グラスゴルかな。山脈を挟んで広がる草原、あそこにあるのは王領か。この大陸、魚みたいな形してんな。山脈が背骨かな?あはは。
魔術は、発動できない。
地表が近づく。このまま行くと山脈の最高峰に当たるかな?あそこには、たしか遺跡があったね。また行ってみたいな。ははは。
「アッハッハッハッハッハッハ!!!!素晴らしいスカイダイブだ!!こんな体験は滅多に出来ないさ!羨ましかろう!!!ヒャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!!!!!」
次なる、世界でも、お待ちしております。
なんて声が聞こえて。
私の意識は暗転した。
いざ、次なる世界へ。




