禁書庫最深部。
禁書庫の、胎内で。
はろー、いやこんにちは?アンナちゃんだよー。
本日二度目の禁書庫です。……一番奥に行こうか。うん。
浮いて、速い速度ですぱーんと。さっきの棚は……うん、今度にしよう。
つーわけで一番奥。……檻?のような柵に、膝から胸下までの高さに穴が開いてる。横幅は……人一人分か。ここを通れと?トラップは……ある。出る時に発動するタイプか。
とりあえず潜ろう。……狭くて通りにくいなぁ。つーか胸つっかえそう……うぐぐ。ツインテの慎ましい胸が羨ましい……。
よし、通れた。さてと。
……柵越えたら禍々しさが凄まじい事に。空気がねっとりしてる。呼吸しにくいなぁ。ここはツインテ連れてこれないね。
本棚は……もはや森に生える木に本棚が彫られてる感じ。下もなんだか土みたいで。つーか、森だわここ。森に本棚がある。じめっとして、暗くて、ねっとりした空気で、でもここの花は赤いのね。全部の花が赤い。葉っぱも赤い。真っ赤っか。
……とりあえず、探そう。これ明かりがいるね。ライトの魔術発動。
……発動、したけど弱い。マジかよ。魔力全部周りに吸われてんのか。マジかよ……。
ここは危険な場所だなぁ。
淡い光を頼りに、本棚をまわる。……ライト維持するのにかなり魔力持ってかれるんだけど。やべーな。浮くのもできないし、ここは魔術師殺しだわぁ。
「……神話、もここにあるのか。」
ここにあるってことはかなりヤバい内容のか。これ借りよう。……あ、持ち出し厳禁って書いてある……。ここで読めと。はぁ……。柵の近くに机あったな、後でそこで読むか。
「禁書・シャムシャラ……あった。」
ついでに、関連する本も。さて、読むか。
柵の近くにある机、そこで本を広げる。……ライトスタンドがある。……ついた!これで読める!
「お茶は如何でしょう。」
「うひゃぁ!?」
な、なんだ侍女か……って侍女!?
「お茶は如何でしょう。」
よく見ると、精巧にできた木製自動人形。
「お茶は如何でしょう。」
「……頂こうか。」
飲まなきゃいけない雰囲気を出しおる。まあ、いいや。
「お持ち致しました。」
「ありがとう。」
「何か御用がありましたら、お呼びください。」
そう言って、消えた。……消えた!?
「な、何なんだここは……。」
とりあえずお茶。あ、これ美味しい。赤い色した、ちょっと甘めのお茶。果実でも入ってるのかな、いいねこれ。
さあ、読もう。
「……神話といっても、よくわからんな。精霊だとか、神だとか。」
巷で溢れる神話とは、大筋しか合わない内容。精霊のラブロマンスではなく、もっと残虐な、戦乱の内容。
「そしてシャムシャラは、世界を引っ掻き回す邪神。輪廻を操り、盤上を回す。」
そして最高神によって、世界の最奥に封印される。
「だがシャムシャラはそれもみえていた。未来を観る眼で。」
過去と未来を観る両眼。
「故に封印されて何千年も経ってから、封印が自動で壊れる細工をしたと。」
そうして最高神に気付かれる事なく抜け出す。
「だが、シャムシャラも遊び飽きていた。」
だから、自分の力を分けてみる事にした。
「巫女を選び、その結末を見届ける。」
それが、遊び?
「遊びとしては不完全ね……。なにか、間違っている?」
シャムシャラの真意とは違うだろうね。なにを考え、巫女を選び出した?
「……情報が足りなさ過ぎる。」
他の本からも集めないと。
「……お茶、如何でしょう。」
「ありがとう。」
煮詰まってたら、自動人形が。
「シャムシャラ、についてのみ書かれた本、は、それのみ、です。他の神、の本には、ほぼ出てくる、のですが。」
「その本は、どこに?」
「右の棚、壁。全てです。」
oh......
神は死んだ(泣)
「軽食を、お持ち致しましょう。御手洗は、左の手前に。ベッドは、右の手前、の小屋に。」
篭もれるのかここ。ふむ。
「ありがとう。宜しく頼むよ。」
ならば篭らせてもらおうか!片っ端から読んでやる。
「メモ用紙を、共にお持ち、致しました。どうぞ、お使い下さい。」
自動人形とは思えないこの気の利いた侍女。すげぇ。
「私も、禁書、の一部です、ので。」
……なるほどね。
「外と連絡、を取る場合、は、私に手紙、を渡して頂け、れば。」
おーけー。……言葉の区切り、が多いけどまあ気にすることでもない。
さあ、やるか。どれだけかかることやら。
くはー、多すぎ。片っ端からパラパラと読んでシャムシャラについて書いてある所探してるけど、いろんな神にちょっかいかけてる。一般的に邪神と呼ばれる様な神からは愛されてるけど、光神や秤神を代表とする正義を謳う神からは敵対されてる。シャムシャラはチョイ役で出てきたり、敵役で出てきたり、味方として出てきたり。つーか秤神と共闘したこともあるのな。
あぁ、今読んだやつ全部に出てきてるから本当に全てに出てくるかもしれん……。
なんつー面倒くささだ。
「お茶のお代わりは、如何でしょう。」
「頂くわ……。」
この空間にも慣れてきた。あれだけねっとりと感じた空気が、今は清々しい空気に感じられ……ちょっと待て。
「ヤバくね?」
「なにが、でしょうか。」
鏡とかない?
「お持ち致します。」
やな予感するんだけど!なんか自己診断してみたらなんか!なんか!
「お持ち、致しました。」
鏡見る。…………う、わぁ。マジか。
「眼から出る光が赤く……いや、身体に走る線も赤く……いやいや、それどころじゃない事に……。」
角、生えてね?仮面にあるあの捻じ曲がった角、あれ。生えてね???
え、どうしよ。いやほんとどうしよ。これ引っ込むかな、引っ込むかな??????
「シャムシャラの姿、に近くなりました、ね。流石巫女。」
「流石じゃねーよ!!どーすんのこれ!!!」
「……?ここは、魔族の国です、角程度問題ない、でしょう。」
そうだった……ここは魔族の国だ……角付きばっかの国だ……
……レイスの上位魔族だと思われてるのに、角生えてたらおかしくね?
「そう、でしょうか。レイスとて、元の種族が、角付きなら、生えております。」
oh......
「後から、上位魔族となって、生える事もあります。」
この国的に何も問題ないのね……。
もういいや……。引っ込める事は出来るのかな。
「出来るはず、です。特に、後から生えた者、だと。」
マジか!よっしゃ!
「その眼、も線も、変えられます、よ?」
とか言って、一冊の本を渡してきた。
……身体変幻の術……。ああ、うん、これやれと。
「一番、便利です、よ?」
……読もう。
「おー、変わった。本当に便利だわこれ。」
「ええ、余りに便利過ぎて、犯罪が増え、そのせいで禁書、に。また、失敗すると異形となり、ますので。」
あー、なるほど。
「貴女であれば、使いこなせる、ので。」
ありがとう?
さて、続き読むか。次の本とってー。
「はい、一段下の本を、ここに。」
もはや棚の段ごとに持ってきてもらって、読んでます。この自動人形、マジ便利。優秀。
読んで、お茶飲んで、読んで、御手洗行って、軽く動いて、読んで、お茶飲んで、の繰り返し。たまに、軽食を。そして、たまに手合わせ。
この自動人形、手合わせもしてくれるから優秀。強い。
「私は、ここの番人、ですので。」
番人、か。
「たとえこの城の主だろうと、ここを侵す者は死ぬ、定めです。」
……私は?入ってるけど。
「本当に必要、とする者で、あれば。ここに立ち入る事を許可、致します。」
そうなの。てことは私がここに来る事は。
「はい。もう少し早く、来ると思って、おりました。」
そうかい。
「ええ。故に、貴女を、歓迎致します。我が主の巫女よ。」
……マジか。てことは。
「ここは、輪廻の、世界の最奥の森。本の中に、記された。シャムシャラが眠った、胎内です。」
あら、あらららららら。
「この会話を、出来る時を、待ち望んでおりました。我が主の、話であれば。答えられるだけ、お話致します。」
重要参考人、ゲット!
「とはいえ、我が主の、真意は、判りかねますが。」
がっくし。
「我が主が扱いし術、それを教える事は、できます。」
なら、それを、お願いする。
「かしこまり、ました。」
よし、これで、私の力が、あがる!
「……私の、口調が、うつっております。」
あ。
「…………ひとまず、始めましょうか。」
やるぞー。
檻の、柵の中は、本の中。赤い色は、血の色。




