まおーぐん、よんしょー、まのしょー。
魔の将アンナちゃん!
ちわーっす!アンナちゃんだよ!ケーキ屋の会談から一週間経ったよ!
私は今!魔王城にいまーーーーーす!!!!
メリットしかなかったよ……。つーわけで、今謁見の間。魔王の、前。
「……なるほど貴様があの魔術を放ち、魔の将を討った者か。」
そーですよー。跪かないよ、私は。
「…貴様は、巫女か。」
「わかるぅ?」
なんかざわめく。あ、周りに魔族の貴族と、今いる将がいるよ。
「…………そう、か。なるほどな。」
お、くるか。
「貴様、何回やり直した?いや……何度、同じ時を廻った?」
「ッフ、アッハハハハ!」
っふ、ふふ、ふふふふふ。やっぱりわかるんだね、貴方には。うふふふふふふ。
「今回で、11111周目だよ。流石だねぇ、闇の御子。」
ざわざわ、ざわざわ。側近ちゃんもびっくりしてる。
「フン、シャムシャラに憑かれた亡霊がよく言う。」
はい。これが、私の名乗りの元。魔王が呼んだんですよー。
「まあいい。我が元で力を振るってくれるのならば、これほど心強い者はない。シャムシャラの亡霊アンナよ。魔の将グリディナとして任命しよう。宜しく頼むぞ。」
「アッハァ♪宜しくぅ〜。……グリディナかぁ……。」
魔の将、グリディナ。そーいや、コードネーム的なアレを付けられるんだったよ……。センス……。まあいいけど……。センス……。
まあいいや……。……私の名を呼ぶ者は居なくなるのかしら。まあ、いいけど……。
側近ちゃんに案内されて、お部屋に。
「グリディナ、ここが部屋ですよ。……名前に慣れて下さい。まあまあいい名前じゃないですか。私なんてメアですよ、メア。」
側近ちゃんそんな名前だったのね。
「魔の将としてのローブとかは、中に新調してありますので。他の小物等も全て。」
ふむ。お部屋拝見。……広い。応接スペース、執務スペース、研究スペース、台所。そして大量の本棚!あ、奥にプライベート用の部屋あるわ。寝室もそこに。おお、お風呂もある!
「それらは自由に使って頂いて構いませんので。それと、小間使いとして数名、侍女を数名入れますがよろしいですか。」
「いいよ。……小間使いってのは。」
「簡単に言うと、魔術の志高い者達ですね。出来れば将来の為にも弟子として鍛えて頂きたいのですが。」
「ふーむ。」
ま、いっか。
「プライベートの所に入ってこないなら。」
「わかりました、周知させておきますね。では、これから宜しくお願いします、グリディナ。」
「よろしく、メア。……その敬語なんとかなんないの?」
「癖で……。」
「ああ、職業病……。」
どんまい。
「では呼んでまい……くるわね。」
よろ。
「グリディナ、入りますよ。」
「はーい。」
メアだ。連れてきたかな。
「失礼します。」
侍女が四人、弟子希望が三人か。
「これからこの四名がここの世話を、この三名が弟子として使って頂く事になります。」
「宜しくお願いします。」
「お、おねがいします!」
弟子は男二人、女一人か。細マッチョ短髪と、インテリ系ポニテと、釣り目ツインテ。
「はい、よろしくぅー。」
ま、期待はしない。魔族は寿命が長いけど、私の時間に届くとは思えない。それこそアンデッドじゃないとね。
「それでは、私はこれで。……今度また一緒に行きましょうね。」
「うん、また行こう!」
メア、退室。さて、と。
「とりあえず好きにしてー。侍女ちゃん達はこの部屋の勝手を覚える所からね。といってもここやってた人ばっかか。なら仕事あるでしょ、よろしくー。何かあったら頼むから。弟子希望達は、本でも読むといいよー。ああ、全員、奥のプライベートスペースは入らないでね。いい?入ったらわかってるね?」
「は、はい!」
「かしこまりました。」
基本、放置。
「何か質問あったらしてねー。」
ソファーにだらーんと。侍女ちゃん達はバラけて動き出した。弟子希望達は、まだいる。
「あの、宜しいですか。」
目で合図して、決まったのか細マッチョ。
「なにかなー。」
「えっと……魔王様に認められた、という事はかなり強い方だと思うのですが……どれほど、なのでしょうか。」
やっぱり気になるか、そこ。
「前の、羽生えたヤツ。」
「……?」
「アレ、私が遊び殺した。」
「え……。」
「つまんなかったよ、攻撃あててくれないし薄いし。羽に穴あけて、首引っこ抜いたらすぐ死んじゃったわ。あれじゃ蝿だよ蝿。」
マジつまんね。
「は、蝿……。」
「質問は、これでいいかな?他には。」
顔引き攣ってるぞー。
「……私から。」
ツインテ。
「私達は魔術を学ぶ為にここに来ました。ですが、貴女からはその様な雰囲気は感じられない。」
そーだね。
「貴女は、魔の将として後進に道を歩ませる、先導者としての誇りはあるのですか?」
誇り、ね。
「誇り、誇り。誇りかぁ。……誇りなんて捨てちまえ。そんなものは魔術にはいらないね。」
「なっ……!」
「ノブレス・オブリージュなんて言うけどさ。あれは弱者が求めたものさ。強者は選ぶ余地があるんだよ。」
そういうものさ、世界なんて。
「貴女は……!」
「君は貴族の子女かな?その誇りは一体どこから来ている?親の力か?」
「それはっ、私の魔術がっ」
「その教育を施したのは誰だ?環境は?全て君が作り出したのか?そうじゃないだろう。君は親という強者から施されて来たんだ。」
「っ……!」
これ言われたらすっげー悔しいよなー。私も昔はそうだったよ。
「悔しいよね。見返したいよねぇー。」
「……っ」
「ここにはさ、それが出来る材料が沢山あるんだよ。私が教えるのは、その先。」
本棚。材料倉庫。研究設備。最高のものが此処にはある。
「好きに読んでくれていい。好きに使ってくれていい。足りなければ、何が欲しいか書け。私に出してくれ、揃えよう。」
これは君達三人に言っているんだよ。
「それでもわからなければ、聞いてくれ。教えようじゃあないか。」
ここはそういう所だ。
「わかったかね?これが、私のやり方だ。質問はこれでいいかな?」
目を見開いて、その奥には静かな炎。いいねぇ、君達。
「他に質問はあるかな?……ないようだね。さあ、取り掛かろうか。ああ、そうだ。今何を研究しようとしているか、ぼんやりとでいいから出してくれ。そうだね、一週間毎に進捗を書いてくれ。焦らなくていいわ、時間はたっぷりあるのだから。……さあ、始めよう。」
おお、紙に猛烈な勢いで書いて出してきた。そして本棚ダッシュ。すげー。…………。
なんかすっげぇガラじゃない事言ってしまった感ある……。うわぁ恥ずかしい、黒歴史確定だよこれうわぁ、うわぁ。
と、とりあえず何やるか見ていこう……。
んーと。細マッチョは、身体強化について。インテリは、解呪術。ツインテは、大規模魔術。ふーむ。微妙に背景が透けて見えるね。メアが持ってきた資料。調査書。
細マッチョは武術が得意。師匠が魔術師に殺されて、そこから仇討ちのために魔術を勉強。自分の武術に魔術を取り入れようとして、魔術にハマったと。それでさらに強く取り入れるために学びたいわけね。
インテリは、小さい頃親友が呪いで死んだ。そこから解呪について取り憑かれたように。自分では無理と悟り、学びに。
ツインテは、大型の化物に両親と妹を殺された。今は母親の姉夫婦の所で義理の娘として生活。結構よくしてもらってる。仇を討つため、これ以上被害を出さない為にも攻撃魔術を勉強、これでは殺せないとわかって、そこから大規模魔術を学びに。
なかなかハードな奴ら多いなオイ。暗い、暗いよ。ダークだよ。
苦労してるんだねぇ……。
ま、しーらね。私は適当に読書でもしてよー。適当に取った本。なになに、禁術指定・呪術集。……これやべーやつじゃん。見開きに……解呪する事は不可能なものを集めた、解呪方法を後の世に託す?えぇー……。
読んでみよ。とりあえずこれ。あと何冊か持ってこ。
弟子希望達が本を読んでるのを横目で見つつ、本を探す。あ、これとか。
えーと。大気魔力の使用における身体強化の使用禁止を求める調書。簿冊だこれ。研究論文と事故例が載ってるね。ふむ。これにしよ。
他にはなにかなーいかなー。
ぶらぶらと、本を片手に本棚の間を歩く。
お、いい感じのあった。
んー、危険 : 禁術指定となった大規模魔術集発材料と発動方法のメカニズムだとさ。んー、これ読んだら普通に発動できそう。
これにしよ。ソファーに座って、よんでよーっと。お、サイドテーブルに紅茶が来た。この侍女、使える。
さって、よむかー。
黒歴史をまた一つ追加したアンナちゃん……。




