王領ついた!
アンナちゃんが街をぶらぶらして買い物するお話。
おはおは、アンナちゃんだよー。朝!血の固まった臭いが漂ってるけど爽やかな朝だね!風にのって血の臭いが乗ってくるけど気持ちのいい風だね!
つーか魔族も血は赤いのね。青いのは貴族だけか。チッ。
朝ごはんは顔を見せたうさぎ?(角生えてる。デカイ。1mくらいある。)をしとめて血抜きしたものを焼いてます!朝からがっつり!村で買ったトマト?(黄色い。)と一緒にパンに挟んでいただきます!
あ、これうめーわ。このトマトモドキ、甘酸っぱい。ジューシーな肉と相まって濃厚さっぱり系。うめー。
ご馳走様。さあ、王領はすぐそこだー!
王領前です。門に並んでます。周りがトカゲとか猫とか虫(バッタ?)とかの顔が沢山。後ろにいるトカゲは商人かしら。話しかけてみよ。
「商人さん。列、長いですねぇ。」
「おお、私を商人と見抜くとは……初めてですぞ。」
マジか。
「何分顔が恐いと言われておりまして……。扱っている品物はまともなのですがな。」
「強面、ねぇ。」
ごめん、普通にトカゲ。ああでも、言われてみれば他のトカゲより彫りが深い……かな?あと傷跡もあるね。
「ねえ、何売ってるの?」
「甘味の材料や、飴、小麦粉やフルーツなどを。」
「パン屋とかケーキ屋が相手かしら。」
「ええ、そうですとも。なにせ、私が甘い物が大好きでしてな!顔に似合わないとはよく言われますな!ハッハッハ!」
「ふふ、甘い物に似合わないなんてないわ。美味しくて楽しいものだもの。」
「まさにそうですな!いやあ、分かっていらっしゃる!どれ、お近づきに飴をいかがですかな?」
「ふふ、いただくわ。」
飴もらった。あ、これ美味しい。
「……美味しいわ。ねえ、30個くらい売ってくださらない?」
「ええ、よろしいですとも!」
しめて銀貨一枚。安いな?
「かなり良心的な値段ね。……王領には、どれくらいいるの?」
「ハハ、有難うございます。そうですな、拠点がここですので……一ヶ月後にまた仕入れにいく感じですな。」
「そうなんだ。……どこにあるの?」
「王領南の、商店街にあるバルザ商会と申します。どうぞ、よしなに。」
「ええ、是非。」
甘味ゲーーット!
「私が卸している店も商店街にございますので、そちらも。ケーキ専門店!と大々的に書いておりますのでよかったら。」
「いいわね、行かせてもらうわ。」
たのしみ。
「おっと、そうこうしている間に順番が回ってきたようですな。そういえば、お名前を伺っておりませんでした。」
「おや、失礼。私はアンナ、って言うわ。よろしくね。」
「ええ、よろしくお願い致します。」
バルザさんとわかれて、王領の門へ。
「ふむ、旅人か?通行証は持っているか。」
「持っていないわ。発行できる?」
「ああ、銀貨一枚と各種検査を行うが……。」
「なら、よろしく。」
門の中へ、衛兵に着いていく。
検査は女の衛兵さんでした。気が効くぅ。
「上位魔族でしたか……。」
ローブ脱いで、身体検査して、これ。あと魔力も測られた。
「問題ありません。通行証を発行します。」
簡単でした。
「これは身分証明書にもなりますので、なくさないようにしてくださいね。」
「わかったわ、ありがと。ついでにだけど、お勧めの宿とかってある?」
これは重要。
「そうですね……。高い所と安い所と間位の所が。」
「間位で。」
「でしたら、この東門から入って三本ほど大きい通りを行った先に、骨太骸骨という宿があります。」
骨太骸骨……。骨……。
「スケルトン?」
「ええ、スケルトンです。あそこは種族問わず人気ですよ。」
そ、そうなんだ……。つーか私がアンデッド(に見える)だからお勧めされた訳じゃなかったのね。
「わかったわ、ありがと。」
銀貨一枚お礼に渡して、街へ。
おおう、賑やか!流石王領、色んな種族がごった煮!人外好きにはたまらないでしょうねぇ。
私?普通。
お勧めの宿を探して歩く。そーいやここ東門って言ってたな。
お、みっけ。……看板も骨だ……。
「いらっしゃい、宿泊かい?」
オバチャン声の、スケルトン……。
「ええ、一人。空いてる?」
「ああ、一人部屋が空いてるよ。」
「なら……一週間で。」
「あいよ、一週間だね。料金は銀貨14枚だ。」
まあまあの値段。いやまて、安くねえ?
「安いのね。」
「ここら辺は競争が激しいからね。ほら、向かいも斜め前も宿さ。」
なーるほど。宿屋街。
「ちなみに、途中で泊まるの延長したりできる?」
「ああ、できるよ。日数分の料金プラス銀貨一枚は頂くけどね。逆に短くする時は返金無しだ。」
おっけ、わかった。
「うん、なら部屋は三階奥の角だよ。一階で酒場をやっているから、ご飯はそこで注文しとくれ。」
「お湯とかはある?」
「ああ、王領では水が通っていてね。シャワーが各部屋にあるのさ。」
うん、おっけー。……いやすげえな!?
「他に質問は?」
「ないよー。ありがとねー。」
部屋にいく。
おお、これはなかなか。安宿にしてはかなりいいね。ベッドも綺麗。壁も薄くない。そしてなにより窓から王領が見える!眺めいいね!大アタリだわ。衛兵ちゃんにもうちょい渡しとけばよかったかな?
荷物なんてないけど、とりあえず落ち着く。そうだ、シャワー浴びよう。
全部脱いで、清掃をかけておく。これでよし。……とはいえ、そろそろ別の服も着たいな……。女としてダメな気がする。後で服屋行こう。優先順位一番で!
しゃわーーーーー。ああ、気持ちいい……。ここは石鹸とかないのね、買わなきゃ。今はあるやつで。うふふ、常に携帯するのは乙女の嗜みでしてよ。
さっぱり!へえ、タオルもあるのね。ここは都会か。都会だった。
さっぱりした所で、街にごー。
「出かけるのかい?なら、鍵はあずけておくれ。」
鍵を預けて、街にごー。
あ、服屋聞くの忘れた。戻る。
「服屋かい?……なら西の布街に行くといいよ。あそこなら布で出来たものは何でも揃うからね。」
「ありがとー。」
よっし行くか!
浮いて。ふわふわー。
……通行人が二度見してきたりするんですが。
「レイスの上位だぜ、あれ……。」
「すげえな、何万年生きてるんだろうな……。」
「いや死んでるんだろ……。」
ナイスツッコミ!いや私生きてるけどね。あー、ろくじゅうまんさい?かな?同じ時間廻ってるだけだけどね。
そんな事が聞こえつつ、布街にきました。ほーう、これはなかなか。見て回るだけでも楽しい!荷物持ちが居たら沢山買っちゃうわよぉー。
私荷物持ちいらねーわ。
表に並べてあるのを見て、よさげな所に入る。お、この服いいな。何着か買っちゃお。
……計、17点。しめて金貨二枚と銀貨四十五枚也。買ったわー。
次下着!あ、ここいいわ。
……計、28点。しめて金貨三枚と銀貨六十八枚也。
あら、あそこは手袋とソックスかしら。
……計、19点。しめて金貨一枚と銀貨八十八枚也。
お、帽子とローブか!
……計、4点。しめて金貨一枚と銀貨十九枚也。
合計、金貨九枚と銀貨二十枚。うは、衝動買いしちまった!あはははは!買い物楽しい!アクセサリーも欲しいかなー。聞いたら、この通りにあるってさ。よっしゃー。
もうちょい進んだ所に沢山あった。
あ、このネックレスいいわ。このブレスレットも。イヤリングもあるね!
……計、8点。しめて金貨五十五枚と銀貨七十八枚也。
「ありがとうございましたーっ!」
ほくほくですわぁ。うふふ。お金?まだ沢山あるよ!なにせ領地の利益でかなり溜め込みましたから。うふふふふふふふふ。小国二つ三つ分の国家予算はザラにある。うーっふっふっふー。
さ、雑貨屋探そ。どこにあるかな。
お、衛兵詰所だ。こーいう所に聞くと便利なのよねー。
「すみませーん。」
「なにか御用か。」
イカツイ兄ちゃん!ただし犬耳!
「雑貨屋とかってどこにあります?」
「雑貨屋か……南に行くといい。」
南だね。そーいや飴くれた商会もそこにあったな。
「南だね、ありがとあんちゃん!」
「気をつけていけよー。」
気のいいあんちゃんだったね!
南。ここは生活道具が多いね。食べ物も多い。メインストリートってやつかしらー。
お、雑貨屋発見。石鹸あるね。あ、そうだ鞄も買おう。ハンカチもいるなぁ。タオルも。あ、ポット新調しよかな。フライパンもあるね。インクも買って。あ、これもいるわ。
……計45点。しめて金貨一枚と銀貨十二枚也。
「……家でも買われたのですか?」
「いや、この機会に色々買い換えようかなって。」
「そうですか……使い古した物も買取りますよ?」
「んー、壊れたのでも?」
「ええ。」
なら色々売ろう。壊れたフライパンに鍋におたまにポットにえとせとら。
銀貨一枚と銅貨五枚になった。
「かなり溜め込んでいましたね……フライパンなんて三枚ありますよ……。」
「あはははは……。」
なにせ過去のループで使い潰したからね……。というか今更だけど、この魔術の収納。これ使い始めたループからずーーーーーーっと継続されてるのよね……。すげーなこれ。てことは魂に記憶されてる?それとも世界に?まあいいか。便利だし。
雑貨屋を後に。お昼だね!というかかなり過ぎてるね!おなかすいた!
あら、美味しそうな匂いが。あそこはいろ。
魚が美味しい店だったよ!内地なのに魚!すごいね!
「近くを大きな河が流れておりまして。川魚も取れますし、海の魚を運ぶ事もできるのですよ。」
納得!いいね、魚が美味しいって!
「ふっふ、生でもいけるのですよ?」
……生っすか。美味いの?
「ええ、美味いです。いかがですか?」
……ものはチャレンジだ。頂こう。
「お待たせしました、海の生魚の切り身です。」
ほほう、これが。
「このソースを少し付けてお召し上がりください。」
んー、なんだろこのソース。
「こちらの緑のはハーブとオイル、そして黒胡椒のソースですね。こちらの黒いのは、豆と魚醤、根菜から出来たものです。」
……まずハーブからいこう。白身の魚をフォークに刺して、ちょっとつける。たべる。……。
「コリコリ?蛋白?……白ワインに合う?」
「ええ、白ワインに合わせるとなかなか。」
なるほど。次魚醤のやつ。
「……さっぱり?ちょっと塩辛?……甘い穀物酒?」
「ええ、穀物酒に合わせるとなかなか。……舌が肥えてらっしゃるのですね。」
「美味しいものは世界の宝よ!……これ美味しいわ。」
「どちらがお好みでしたか?」
「そうねぇ……ハーブの方が好きかな。でも魚醤の方もなかなか。生魚もいけるものね。」
初体験だわ。
「生魚も新鮮な内に届く王領だからこそ食べられるというものです。」
「なるほど、名物?」
「ええ、お陰様で。」
いい所きちゃった。うふふ。
生魚を堪能して、ご馳走様!また来よう。
「またのお越しをお待ちしております。」
腹ごなしにふらふらと歩く。ええ、歩いてるよ!浮くのは楽だけど、健康の為にも歩かないとね。
おや、あそこは……バルザ商会。ちょっと寄るかな。
「いらっしゃい……おお、門でお会いしたアンナさん!早速来ていただいたのですな!」
「来ちゃいました。」
店内を見て回る。へー、飴に砂糖に……これはシナモンかな。サ……トウキビ……?でけえ。そして小麦粉。蜂蜜もあるね。あれは……なんだろ。
「あれは寒い所に生える木の樹液でしてな、熱にかけるととても甘くなるのですよ。一口舐めてみますか?」
「……いただくわ。」
小さなスプーンですくって、ペロリと。
「え、あっまっ!?これ本当に樹液!?」
「ええ、樹液ですとも。」
すげぇ……。パンケーキにかけたら美味いかも……。
「一瓶頂戴。」
「有り難うございます。」
ついでに砂糖と蜂蜜も買っておこう。
「有り難うございます。ふふ、門でもお話しましたが甘い物がお好きなのですな!」
「ええ、甘い物が嫌いな人は早々いないわ!」
「そうですとも!」
なんか仲良くなった。
「今後ともご贔屓に!」
商会から出る。また来よう!
ついでに教えて貰ったケーキ屋に直行。さりげなく情報ぶち込むあたり、あの人商売人だわー。商会もなかなか大きかったし。やりおる。
ケーキ屋!わぁ、美味しそう……いや、見た目からして美味しい(断定)。これと、これ、あとこれ頂戴!
んまー。至福……。紅茶も頼んだのさ。ああ、癒される……。うまー……。
尚、ここまで仮面着用。仮面つけたローブの女が幸せオーラ全開でケーキ食べてるinテラス席!
……視線感じる。なんか客増えてきた。きにしなーいきにしなーい!今はケーキに夢中なのです。ええ。
……斜め前の席からすごい視線感じるけど、無視。ケーキうめぇー。あ、紅茶おかわりで。
ここ、紅茶も美味しいなぁ。バルザ商会のお勧めなだけある。というか取引先か。うーん、いいね!
ところでなんで斜め前の人はめっちゃ見てくるんだろ。眼鏡の女の人。あれは多分、夢魔かな。上位魔族の。……待て、そんな奴どっかで……。
…………側近。魔王の!甘い物好き!知的クール眼鏡!部屋はぬいぐるみ尽くし!ファンシー!SかMかって言ったらドS!巨乳!スタイルいい!美人!太らない体質!料理上手い!趣味はお菓子作り!カワイイ!慌てるととんでもなくクールな顔になる!でも内心大慌て!よく人から相談されるけど実は色々と相談できる人が欲しいお年頃!
……いらん情報まで出てきたわ。
目を合わせる。……じっと見て来た。
「やあ、こんな所で会えるなんて久しぶりじゃない。そっちいくね。あ、店員さん、ちょっと席移動するね!」
とかなんとかいって、側近の席に。おおう、めっちゃクールな顔。内心慌ててますなぁ。
席移動完了。
「で、そんなに私の事みてどうしたのかしら、眼鏡美人さん♪」
「……貴女は、魔の将を。」
「ああ、あれ本当に魔の将だったの?一人だったし弱かったし虚言かと思ってたよ。」
「……本物です。やはり、貴女は強い。」
「いつから見てたのかな?」
「グラスゴルの王都防衛戦から。」
あの時からね。
「そんなに目立ってた?」
「目立つというレベルではないですね。ましてや、あの様な大規模魔術……。」
「まあ、そーなるよねー。」
流石に規模がでかかったかなー。
「それで、魔の将が殺られて慌てて、一休みしようと来たら私が居たと。」
「まさしく。」
だろーね。
「それで、すっごい見てたのか。」
「そ、そこまで見ては。」
すっごい視線感じてました、ガン見でしたよアナタ。
「で、どーすんの。勧誘?」
「まあ、そうなりますね。……とはいえ、今は……。」
「ここのケーキ美味しいもんね……。」
もーいっこ頼も。側近ちゃんのも。
「あの、これは。」
「美味しいものは美味しく食べる人と食べるべき。違う?」
違わないよね!
「……頂きます。」
二人して幸せオーラ出してます。あ、そっちの美味しそう。こっち食べる?
うまー×2。
……なんか仲良くなった気がする。
まったりゆるーく幸せ時間。ケーキ食べ終わって、後は紅茶。
紅茶も美味しいなぁ……。
「さて、続きですが……。」
「うん。」
「とりあえず魔の将やってみません?」
とりあえずって。
「軽い……。」
「そんなものですよ。ああ、確実に異議出す奴らが居ますのでぷちっと。」
「ぷちっと……。」
「衣食住は保証しますよ。ああ、部屋の清掃だとかその他諸々等の準備に一週間は頂きますが。」
ふーむ。
「お給金も保証しましょう。研究等は、なされますか?」
んー、まあぼちぼち。
「それも施設が整っておりますので。」
ふーむ、やっぱり至れり尽くせりの環境……。
「ああ、そういえば。一つお伝えしておく事が。」
何かな。
「グラスゴルで、貴女がお嫌いでした方達。貴女が話した魔族の所にいる、という言葉からかこちらに向かう準備をしているようです。」
……あいつら生きてたのか。
「ええ、トレイル・ドライアーディーに護られたようですね。貴女への対抗策として。」
ラディーちゃん……。
「魔に堕ちた者、として貴女は名を挙げられているようです。仕えていた方は、罪に問われていませんが。貴女、自分の領軍も殺したでしょう?」
そっか。
「王都復興の一つとして、元凶を滅ぼせ、そして魔に堕とした魔王を討て、と。……貴女のせいですよ。」
そうか。
「まあ、こちらとしても都合の良い展開ですが。光神の巫女を潰せる絶好の機会。」
光神は人間以外認めないとかほざいてたね。ふむ。
「いかがでしょう。貴女は色々保証されながら、撃ち漏らしを殺せる。私共は、忌々しい神の巫女を潰せる。」
なるほどね。
「どうでしょう、私共と来ませんか?」
…………。
私の選択は。
やっぱり根が貴族だよアンナちゃん、金銭感覚どっかいってるよアンナちゃん……。




