愚鈍な王。
馬鹿王。
やあ、アンナちゃんだ。先日、第二王子が王となったよ。先代が崩御してから、一週間の早さだ。反発が凄かったねぇ。
で、今私は領地にいる。何故って、そりゃあ色々な準備のために。王都は第二王子が呼び寄せた隣国の兵が彷徨いてて治安最悪。学園も、皆治安の悪い王都から領地に帰って一時休止状態さ。っはは。
そして、今朝の事だ。隣国が宣戦布告をしてきた。第二王子は戸惑っているようだね。何故、ってさ。そのくらい考えつかなかったのかね?
「アンナ様。いかが致しましょうか。」
「第二王子がボロ負けするまで待機。いいな。」
「ですが、それでは……。」
っふ。領地にいる執事長は愛国心が高いね。
「いいんだよ。これで、な。」
「……何かお考えが。」
「ああ、その為にな。」
「……出過ぎた真似、失礼致しました。」
敵国は既に進軍、国に侵入している。接している領軍は、奮戦するも敗走。第二王子は、未だ戸惑う。動かない。
……馬鹿め。
既に第一王子には動いて貰っている。書面でだが、騎士団、第一王子派の貴族、そして武官。全て取り纏めつつある。
後は、第二王子が動けばいいだけ。第三王子に、尻を蹴り飛ばしてでも動かせと言っといた。こんな時ぐらい役に立ってもらわねーとな。
クソ王子だろうと、今の状況のヤバさは解っていると、思いたい。
「アンナ様、第三王子から手紙です。」
「ほう。」
なんだろうね。
「読め。」
「はい、では簡略に。……ふむ。」
「どうだ?」
「ええ、本気で尻を蹴飛ばしたが動かない、他の者を連れ立って物理的に蹴り飛ばしてやったらようやく動いたと。……まさか兄がここまで愚鈍だったとは、と。」
クソ王子にボロクソ言われてやんの(笑)
「そうか。感謝する、と伝えておけ。」
「わかりました。」
ようやくかよ。今もう夜だぞ。どれほど進軍してきたか。
「主。」
「どうした。」
影きた。
「第二王子が動きました。付き従う貴族を連れて、進軍を開始した様です。軍勢はおよそ8000。」
「以外と集めたな。」
以外と領軍って多かったのね。
「とはいえ、士気は低いようですな。なにせ第二王子ですから。」
「上の貴族に無理矢理集められた下位の貴族が多そうだ。」
「まさしく。それに、夜の出兵になりますので。」
あー、数だけかー。だめだなこりゃ。
「交戦予定は。」
「敵の進軍速度をふまえると、明日の夕方あたりかと。」
「……随分入り込まれたね。」
もう半分きってんじゃねーか。
「敵は馬車を多用している模様。馬も多く、歩兵の疲れも少ない様です。」
「なるほどねぇ、進軍速度に重点を置いたのかな。」
よくもまあ、かき集めたもので。馬車で兵を動かさずに、か。ふーむ。食料とかは少なそう、略奪前提かな。
「全くもって野蛮だね。だが、士気はかなり高そうだ。」
「ええ。……もし今第二王子が動かなければ、王都に到着していたでしょう。」
ギリギリかよ……。
「……第一王子に連絡。明後日に交戦できる様にしておけ、と。」
「御意。となると。」
「明日の昼に出るよ。」
「ではそのように。」
「さて、執事長。」
「はい。」
「皆に知らせろ、明日昼前に出立だ。」
「かしこまりました。」
「それと、途中で私は第一王子を呼びに行く。その間の指揮は団長に。」
「はい。」
「……さて、明日の為に寝ようか。皆も早めに寝るように言ってくれ。」
「ええ。ではゆっくりお休みくださいませ。」
さーねるかー。
動くの遅すぎィ!




